上 下
17 / 136

第17話 挟み撃ちされるロックショット

しおりを挟む
 ロックショットが追われる数日前に時間はさかのぼる。

【狡猾なロックショット視点】

 俺は30体ほどのゴブリンをかき集め、食料都市マリンから王都に至る街道近くの森に潜んだ。
 俺は知識に溢れている、人間どもは転生者が現れると王都にいる王の元に向かい挨拶をする、そこを叩く!

 バカな奴らだ。
 そのような通例は俺に利用されるだけだというのに。
 食料都市マリンで光の柱が出た情報は掴んでいる、あの生意気な遊び人が転生してきたのだろう。
 そして奴とその護衛は王都を目指してこの街道を通るはずだ。

 
 そこで転生者を殺し、兵士を殺せば食料都市マリンの戦力はガタ落ちだ。
 その隙を叩けば都市を容易く占領できるだろう。
 王都には他のゴブリンエースがいる
 王都の戦力をそう簡単に食料都市マリンには割けない。

 しかし、あの時、奇襲に失敗したあの時、遊び人には本当に腹が立った。
 俺は魔法を使い切った状態にあった。
 強くも無い魔法のナイフをチクチクチクチクと何度も何度も飛ばしてきて今思い出しても頭にくる。
 たいした攻撃力も無い癖にハエのようにずる賢く立ち回り必死で攻撃を躱してくる。
 まあ、それしか出来る事が無いんだろう。
 無能の遊び人だからな。

 魔法さえ使えればあいつなど赤子の手を捻るようにすり潰せたというのに!
 忌々しい!
 だが今は違う!
 まず最初にあのむかつく遊び人を真っ先に殺す!
 ロックガトリングを使い即仕留めてやる!
 その後は周りの兵士を殺す。

 奇襲が楽しみだ。


 ◇


「なぜ来ない!!!」

 俺は取り巻きのゴブリンを殴り飛ばすと木の枝が折れてベキベキと音を鳴らす。

「た、大変です!人間どもが街道を通ってきます!」
「がははははは!やっと来たか!」
「そ、それが王都の方向から迫ってきています!ロックショット様のいる場所に押し寄せてきます!」

「なぜ王都から来た?王都にそこまでの余裕は無いはずだ!」
「わ、分かりません!」
「なぜこちらに向かってくる!?」
「ロックショット様が大声を出したからです」

「俺のせいだと言いたいのか!」
「し、静かに!あああああ!勇敢なレオナルドと賢者のサーラです!エースが2人も!」

 背が高く、筋肉が発達した男が身の丈ほどもある大剣を肩に担いで走って来た。

「ロックショット、こそこそと何をしていたかは知らんが思い通りにはさせない!」
「ぐう!レオナルドめ」

 レオナルドに遅れて賢者のセリアが追い付いて来た。

「最初は私の魔法から仕掛けますね」
「舐めるなよ、舐めるなあああ!ロックガトリング!」

 こぶし大の岩が高速で無数に発射された。

「サイクロン!」

 セリアが巨大な竜巻を発生させた。

 土の大魔法と風の大魔法がぶつかり爆発を起こした。

「きょ、今日はこのくらいで勘弁してやる!」

 俺は走って逃げ出した。
 森の中に逃げ込む。
 レオナルドが周りのゴブリンを倒していく。
 セリアも魔法でゴブリンを倒している。
 時間がない!

 あいつらがおとりになっている内に逃げきる!
 なぜこうなった!?
 奇襲を仕掛けるつもりが奇襲を受けている!
 意味が分からない!

 転生者はなぜ王都に向かわない!
 動きが遅すぎるのだ!
 戦った時はハエのようにちょこまかと逃げ回る癖にこういう時だけ動きが遅い!

 後ろから気配がした。

「待て!」

 レオナルドが俺を追って来た。

「い、いつの間に!」

 俺は横に飛んで間合いを取る。
 奴に近づけば危険だ!

「待て!」

 レオナルドが大剣を振りかぶった。

「やめ!もう勘弁してやると言っている!ロックガトリング!来るなあああああ!」

 俺はロックガトリングを放ちつつ全力で逃げた。

 そして追い立てられるように街道に出るとセリアがいた。

「セリアの杖が光った」

 すかさず土の壁を展開した。

「ファイアボム!」

 まずい!
 土の壁が壊れる!

 後ろに飛んで地面を転がりながら回避すると、土壁があった場所で爆発が起きた。

 チュドーン!

 俺は走って街道を逃げた。
 森を抜け崖に掛けられた橋に出ると奴がいた。

「遊び人!なぜここに!」

 前には6人のパーティーが武器を構えている。
 後ろからはレオナルドが走って来て、その後ろから賢者のセリアが追いかけてくる。

 飛び降りてゴブリンの野営地におびき寄せてやる!
 たくさんの罠と潜んでいるゴブリンで奴らを倒す!
 追ってこい!そして死ね!

 俺は橋から飛び降りた。

「捕まえられると思うな!間抜けが!」

 俺は渓流を泳いで逃げる。

 追ってこい、そこが貴様らの最後だ!
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。 その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。 更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。 果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!? この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...