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第70話

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 俺はカゲオダンジョンに引き籠ってコーヒーを啜る。
  早速政府から行き過ぎたヘイト発言を控えるよう注意を受けた。

 総理がテレビやネットでヘイト発言を行った場合住所を特定して注意喚起し、場合によっては逮捕する報道がなされた。
 今は言論の自由より命の危険がある。
 うまくやればヘイト発言を利用して間接的に人殺しも出来る状況だ。
 当然の対応だろう。

 ま、予想通り。

 その後も更にスマホが鳴り続けたので電源を切った。

 マイペースにダンジョンで魔物を倒し、みんなを抱いて過ごした。



【ゴブリン大量発生から3日後】

「カゲオ、そろそろみんなは懲りたはずよ。みんなを助けに行きましょう」

 俺はもっと引き籠る気だったが、皆は助けに行きたがった。
 みんな優しいからな。

「一旦配信をして様子を見てみる」

「配信開始。よ!カゲオだ」

ユウヤ『応援に来て欲しい!魔物を倒しても倒してもキリがない』

 タイミングよくユウヤから配信が来たか。
 いや、周りがユウヤに連絡したか。

「行ったらマスコミと民衆に叩かれるからなあ」
ユウヤ「ここならみんな歓迎してくれるよ」

『ユウヤ!もっと言ってくれ!カゲオさん!来てください!』
『カゲオさんが来てくれれば心強いです!』
『カゲオさん、助けて』
『華麗に魔物を倒して欲しいです。めっちゃ歓迎しますし、文句を言う奴は退場させます』

 気分がいい。
 みんなが俺を歓迎している。

『お前らが赤く塗った場所にゴブリンが本気で攻めてきている!お前がマップを出したせいだ!どう責任を取るんだよ!』

「うわー怖い、赤いマップにはこういう奴がいるのか。怖い。赤い所には絶対に行かないわ。怖い」

『お前、そう言うたまじゃねえだろ!』
『全然効いてないよな!?怖くないだろ!?』
『批判者から距離を取るカゲオ』
『もうそういう芸風になってきているな』

ユウヤ『怒る人間は無視でいいから、こっちに来て欲しい。ここのマスコミはバッシングをしないと言ってくれているよ。むしろ歓迎してくれる!もし批判をしたら全力で退場させるから』

「そっか、ソフィア、ホノカ、カナタ、みんなにも聞きたいんだけど、ユウヤがいる所に援軍に行きたいと思うんだけど」
「「行きましょう!」」

「カゲオダンジョンの外には妊婦さんもいるし、防衛が心配だ」

「おいおい!俺達がいるぜ!」
「防衛は任せな!」
「僕達がカゲオさんの街を守ります!」

 冒険者がここの護衛を受けてくれた。

「分かった!頼む!」

 俺は配信を続けながら1000人の眷属とソフィア・ホノカ・カナタを連れてユウヤの援軍に向かった。



 ◇


 俺はゴブリンを斬り倒す。

カナタ『順調です。次は北に行ってみましょう』
「分かった」

 カナタはサポーターとして配信アドバイスを送る為戦場には出ない。


 ソフィアはゴブリンをシールドで倒しつつ、けが人を治療した。

 ホノカはミミックハウスに子供を避難させつつ守りを固めた。

 1000人の眷属は散開してパトロールを続ける。

「コウモリ!」

 大量のコウモリを空に放ってからユウヤと合流した。

「この近くにいるゴブリンは全部片付いたか」
「ゲリラ戦を仕掛けてくるから油断はできないよ」
「ゴブリンが捨て駒のように倒されに来る」
「足止めが目的だろうね」

 ゴブリンがいなくなると隠れていた住人が出てきた。

「ユウヤさん!ありがとう!!」
「ありがとう!」
「カゲオ君!ここに来てくれてありがとう!」
「がんばれー!」
「来てくれてありがとう!」

「いえ!皆さんが冒険者に優しくしてくれたおかげでここに来る事が出来ました!皆さんの善意に支えられています!」

『カゲオが政治家みたいなことを言ってるwwwwww』
『これからは、批判者が淘汰される時代になってくるんかな』
『もうそうなってきてる』
『批判者はスルーされる空気が出来つつある』

『日本昔話の優しいおじいちゃんおばあちゃんと、意地悪おじいちゃんおばあちゃんみたいな流れになっとるな』
『冒険者を歓迎する市町村に冒険者が集まった。冒険者を批判し、支援をしない市町村から冒険者が逃げ出した』
『警察と自衛官は退職者が多くなり、カバーできていない模様』
『赤マップを守ると地元民だけじゃなくネットでも批判される。そりゃ辞めたくもなるよな。でも、国民を守る建前がある以上出動しないわけにはいかない』


『巡り巡って善行は返って来るか』
『そりゃおまえ、文句ばかりの地域からは俺だって距離を取るわ』
『今まで日本人は基地外に優しすぎた。3歳児みたいに怒って自分では何もせず相手をコントロールしようとする人間が調子に乗りすぎたんだよ』

『カゲオマップの赤い地域ではビルが燃えとったで』
『ここはほとんど無傷か』
『ここはユウヤとカゲオ軍団の援軍があった。窓ガラスが破壊される程度で、死亡者は奇跡のゼロ人やで。逃げようとして転んで骨折とかはあるけどな』
『カゲオハーレムはうやむやになったな』

『今ヘイトっぽい書き込みしたら住所が特定されて国から電話がかかってくるで』
『批判者はブラックリストに乗せられるって噂も出ている』
『おい、市長が走ってきた!』

 市長が俺とユウヤに両手で握手をして、皆とも握手をしていく。
 感動して泣きそうになっている。

「ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!」

 そして泣きながら言った。

「ああ、ありがとうございまずうう!私の、こ、故郷をおおおおお、守ってくださって、本当にいい、ありがとうございますうう、ぐううう」

『市長、鼻水が凄い』
『ガチ泣きじゃねえか』
『切り抜き確定』

「いえ、僕達冒険者を大事にしてくださった市長と、真面目に頑張るみんなのおかげです!本当に感謝しています!」

『カゲオが感謝している!』
『カゲオが丁寧なお礼、だと!』
『カゲオは基本ミラーで返す』

「うおおおおおおおおおんん!うげえあああああああああ」

 市長が号泣しながら何度も何度も、ロックンローラーのように激しく礼をした。

『市長、泣きすぎだろ』
『でも、市長の好感度が上がった』

 後ろに控える市役所の職員が前に出た。

「市長は援護に来てくださった皆様にホテルを用意しました。もちろん費用はこちらで負担します」

『市長に変わって通訳が現れたで』
『カゲオ軍団だけで1000人を超える。全員分負担したら、結構な額になる。1人1万でも毎日1000万以上のコストか』
『予算がおかしなことになるな。どこかで予算を削る必要が出てくる』
『それを覚悟の上でもてなしたいんだろ』

 俺はここでゴブリンを狩り尽くし、その後、冒険者に優しい地域を選んでゴブリンを倒し続けた。



 ◇



『カゲオは青いマップの所にしか行かないな』
『そりゃそうよ、赤いマップは最悪助けても怒鳴られて終わるし、冒険者に優しくない』
『赤いマップはガチでトラブルが多いで。俺も赤いマップにいるけど、建物に被害が出ると大家が出て来て怒鳴られた。ヤクザと変わらんな。今は冒険者である事を隠してる。今賃貸を解約手続き中で引っ越し準備を進めてるけど、アパート管理会社が忙しすぎて解約の時にやる部屋チェック待ちだ」

「青いマップの所だけ援軍に行っている内にゴブリンは全部倒されるだろうな。俺達だけで出来る事は限られている。日本は結構広いからな!」

 そう言って俺は空を見上げた。

『これってカゲオの赤いマップには行かない宣言だよな』
『カゲオ、マップの赤い所でビルが燃えてるで?』
『タワーマンションの入り口からゴブリン軍団が攻めこんで住民が逃げ場を失って皆死んだ』

「そっかー。予言では、ダンジョンをもっと作れば被害は収まるらしい。何度も予言者がPRしてるんだけど、動かない人が多いからしょうがないよな」

『カゲオ、青いマップだけでもいいからダンジョンを作るように各市長に頼んでみないか?カゲオが言えばOKを出す市長が出てくると思うし、今は民意が変わって来た』
『カゲオダンジョンの被害はほとんどないから、ダンジョンの有用性が認められつつある』

 俺は思わず笑ってしまった。


 今日本にあるダンジョンはカゲオダンジョンだけだ。
 ベーシックインカムが通って、ハーレム問題もうやむやになって、新しいダンジョンを作る流れが広まった。

 今新しくダンジョンを作ればワープ対策の結界を張ったダンジョンが出来る。
 これでレッドハット対策はある程度できる。
 

「俺もそう思っていたんだ。ゴブリンを倒したらみんなに聞いてみよう。希望する市長は連絡をください」

 この後、すぐに連絡が来た。
 ユウヤが手を貸している市か。
 都合がいい。









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