強制的にダンジョンに閉じ込められ配信を始めた俺、吸血鬼に進化するがエロい衝動を抑えきれない

ぐうのすけ

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第59話

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　俺の名は山田太郎。
　みんなに遅れて戦闘訓練を終え、海外に行かずに日本で冒険者として生活している。

　冒険者課税制度が可決されてから税金がきつい。

　魔物と戦えば死ぬ可能性があるのに良い装備を揃える事が出来ない。

　完全に波に乗り遅れた。

　でも、海外に行くのも不安だし、移住する金もない。

　魔物と戦い疲れて1Kのアパートに帰り、カゲオチャンネルを開く。
　イギリスは楽しそうだな。

　日本と違って笑顔の人が多い。
　日本では魔物を狩っても狩るのが当然という顔をされる。
　この前はレッドハットがビルに炎魔法を撃ち込んだことで大家さんに激怒された。
　理不尽だ。

　この前は俺の陰口を耳にした。

「冒険者は本当にだらしないわよねえ」
「良い報酬を貰っているんだからもっとレッドハットを倒して欲しいわね」
「本当にそう、冒険者なんだから魔物位ちゃんと倒して欲しいわ」

　やる気が無くなる。
　やって貰うのは当然。
　少しでも被害が出れば冒険者がだらしないのが悪い。

　税金は多く取られる。
　生活は思ったほど楽じゃない。

「カゲオが配信している？」

　画面には【日本に住む冒険者は今すぐ逃げろ】と赤字で書かれていた。

　俺は反射的に配信を開いた。
　俺は10分間画面の前で待った

『よお、カゲオだ。今イギリスにいる』

『短く話す。日本にいる冒険者は今すぐに海外に逃げてくれ。予言者が出したVTRを見て欲しい』

　画面が切り替わった。

　日本の街に1000を超えるレッドハットが集団で街を襲う。

　俺が映っている！

　俺がレッドハットと闘っている！

　そして画面が切り替わる。

　俺は髪の毛が焦げて、血を流しながら肩を押さえて後退した。
　俺は、ボロボロじゃないか。
　後ろに下がると俺は皆に怒鳴られた。

『おい！休むなよ！冒険者だろうが！戦えよ！』
『消耗してしまったので、休ませてください』
『言い訳するな！お前のせいで子供が死んだらどうするんだ！』
『前に戻れ！冒険者だろうが！冒険者は魔物と戦え！』

　俺が何を言っても怒鳴られ、そして背中を蹴飛ばされて前線に追い出された。

『お、俺は、魔物を倒したのに！魔物を倒してみんなを助けているのに！！なんでだ！なんで休んでいる奴らだけ！！何もしないで！！俺だけ盾に！！盾にされるんだ！ぐ、ぐウウウウウ！』

　俺が号泣してそこでVTRが終わった。

『いつになるかは分からないが、日本でレッドハットが集団で襲い掛かって来る。そしてパニックを起こした人々は冒険者を盾にする。日本にいる冒険者は今すぐに海外に逃げてくれ。政治家も、マスコミも、国民も冒険者を盾にして使いつぶす！』

　俺はだらだらと汗が出る。
　カゲオの言葉に釘付けになった。

『もう一度言う！日本にいる冒険者は今すぐに海外に逃げてくれ！冒険者資格とパスポートを用意してこれから概要欄にある場所に集まってくれ。船を用意しているし冒険者なら無料で乗れる。動画は以上です。頑張っているみんなは、逃げて欲しい』

　そこで動画が終わった。
　
　俺は即決した。

　そして、レッドハットが攻めてきたら、周りの日本人はああなる。
　それがイメージできる。　
　今でさえ大家に怒鳴られ、陰口を言われている。
　俺は、パスポートを用意し、アパートを解約して船に乗った。

　山田太郎は自分が思っている以上に動きが早い人間だった。

【マスコミのニュース】

「今回はカゲオショックについてお伝えしていきます。今カゲオチャンネルの影響で推定1000万人が国外に逃げ出す事が予想されています。この件について解説をお願いします」

「ええ、今750万人の冒険者が日本を脱出しています。アメリカ・イギリス・そしてオーストラリアの支援により、旅費が全額負担されています。彼らにとって冒険者を運ぶだけで訓練済みの冒険者を国内に招き入れる事が出来ます。船を出す程度の費用は安いんですね」

「はい、では続いてカゲオチャンネルの映像をご覧ください」

　カゲオが冒険者に逃げるように訴えかける映像が流れる。
　更に他のインフルエンサーも海外への移住を呼びかける。

「はい、次にカゲオショックに対して政府はどのような対策を取っているのか？という視点でお話しします」

　画面に文字が映し出される。

①戦闘訓練を終えた冒険者に3年間の見習い期間を設ける
　
②役所による冒険者の積極的な勧誘

③パスポートの発行拒否

　司会者が文字を読み上げた。

「①番から順に解説をお願いします」
「ええ、①の『戦闘訓練を終えた冒険者に3年間の見習い期間を設ける』ですが、実質3年以上日本で魔物を倒し続けないと、正式な冒険者として認めないと、こうなっています。ですが、この方法は国際社会から批判を受けています。後の③で詳しくお話しますが、先ほどの3国は冒険者希望の日本人を本国に呼び寄せて現地で訓練を行って冒険者になって貰う制度を作り運用を開始しています」

「②の役所による冒険者の積極的な勧誘については、具体的にどのような事を行われているのでしょうか？」

「これはですね、市役所の職員が家に行くわけですね。そして冒険者になるように勧誘するわけです。さらに言うと、会社の人材不足で冒険者になりたい社員をやめないように引き留めているケースがあるわけです。ええ、そう言った会社に注意を促す事はすでにされていますね」

「効果は出ているのでしょうか」
「そうですねえ、やらないよりはマシ、といった程度で大きな効果は、ええ、出ていませんね」

「はい、③のパスポートの発行拒否については？」

「ええ、冒険者がパスポートを発行しようとすると、それを差し止めているんですね。これは民主主義の基本を揺るがす大きな事件なのですが、何故か大きく取り上げられていません。イギリス・オーストラリア・アメリカはこの事に対して日本を批判しています。そして、アメリカは米軍基地を経由してパスポート無しで冒険者を受け入れ始めています」

「更に3国は、ええ、特にイギリスが早かったですが、冒険者志望の日本人を招き入れて国で訓練をしてしまうと、そう言った事がなされていますね。今そのやり方がネットを中心に広まってですね。冒険者訓練を日本で受けずに、他の国に旅行の名目で脱出し、それから3国で冒険者訓練を受ける流れが加速しています」

「もし、もしも訓練についてこれなかった場合はどうなるんでしょうか？」
「その場合は日本に返されるんですね。そういった部分はドライです。今政府は冒険者訓練を受けていない日本人にパスポートを出すのを緊急的に差し止める方向で調整を進めていますが、その事によって、出られなくなる前に日本から出てしまおうと、ええ、そういった方が増えています」

「政府が、この流れを止めることは出来るでしょうか？」
「無理でしょうね。私の予想では、1000万人ではなく、1200万人ほどが国内から脱出するでしょう。イギリスも、アメリカも、オーストラリアも、優秀な国民は欲しいわけです。判断が早い上位10％の日本人は欲しいわけです。でも、判断が遅い、いわゆる指示待ち人間のような、変化に適応できないような人間はいらないわけですね。ですから、上位の上澄みを吸い取った後は、3国共に受け入れを減らして、最終的に受け入れをしなくなっていくでしょうね」

「なるほど、そうなって初めて流出が止まると」
「ええ、そうですね」

「今日は解説、ありがとうございました」

　マスコミの報道で更に脱出方法の手順が広まり、国外に脱出する人間は多くなった。

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