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第52話

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 ダンジョンとして作ったビルが並び、大型施設で給食のように食事が作られている。

「全部、ここがダンジョン」
「うん、気温は年中一定で快適だし、ダンジョンの壁として作った部屋に魔石をハメると水や照明も使える。大規模な食事施設で給食のように食事が食べられるぞ」

 街を歩く人とすれ違うとカナタが不思議な顔をした。

「悪い人は少なそうですね」
「だな。これから食事にするか?それとも部屋で休むか?」
「少し歩いてもいいですか?」
「そうだな、歩こう」


「大規模食堂の他に和食や洋食屋さんもあるんですね」
「うん、ここはグルメストリートだな。大きい食堂はメニューが1つしかないけど安い。小さい店は普通のレストランと同じ位の値段だ」
「ダンジョンの壁でお店を作っているんですね」

「そう、11階から20階まで全部こんな感じだな」
「ふふふ、日本ではカゲオ君がダンジョンに引きこもって出てこれないみたいに言われてましたけど、快適そうですね」

「快適だ。人の地雷率が低くて楽だぞ。上位1%の行動が早い人間がここに集まっているからな」
「キャッチフレーズですか?」
「そう、分かりやすいだろ?」

「ええ、ここなら10年は住めそうですね」
「しかも最近ネットを繋げるように出来たんだ!凄いだろ!」
「え、ええ、凄いですね。でも、カゲオ君の情報が洩れるかもしれません」
「その時はその時だ」

 2人で街を一周して公園のベンチに腰掛けた。

「スモールタウンのようにギュっとしていて、それでいて公園なんかの余裕スペースはあるんですね」
「俺が好きなように作ったからな」
「街づくりゲームとか好きですか?」
「ははは、バレたか。好きだぞ」

「腹が減ったな。何でもいいから食べたい。何か食べられるか?」
「ええ、私もお腹が空きました」
「和食と洋食どっちがいい?」
「和食の方が好きですけど、大きな食堂に行ってみたいです」

「行ってみるか。学校の給食みたいな感じだ」

 中に入ると2人で並ぶ。

「お盆にお皿、コッペパンも本当に給食みたいですね」
「懐かしいだろ?」
「ええ」
「牛乳は無いけど、それ以外はまんま給食だな」

 空いたスペースに座って食事を摂る。
 だが、座り待ちの人が多くて話が出来ないまますぐに外に出た。

 部屋に案内してその日はゆっくり休んでもらった。



【次の日】

 ダンジョンでカナタが剣を振る。
 動きが綺麗で様になっている。

「剣を使えるのか。魔物と闘ってみよう」
「あ、型しかやった事が無いです」

「まずはやってみよう。アサルトボアが来た。やってみて欲しい」
「ブヒー!」

 アサルトボアは突撃してくる豚だ。

 ザン!ザンザン!

 カナタはアサルトボアを3回の攻撃で倒した。

「勘がいいのはかなりプラスだな。斬るタイミングがいい」
「思ったより、うまく倒せました」
「予言者は弱いって言われてるけど本当にそうなのか?勘がいいのはかなりプラスだぞ?」
「勘がいい以外戦闘で役に立つスキルが無いので、決め手には欠けるのかもしれません」

 カナタは問題無く魔物を倒し続けた。



 カナタと話をして次の日に配信を行う事にした。



「配信開始。お前ら、今からカナタが魔物を倒す」

 キューブがカナタを映し出す。

『おお!カナタタンの占い師服もいい』
『ミステリアスカナタいい感じだな』
『ん?占い師を魔物と戦わせるのか?相変わらずクレイジーだな』

 カナタはアサルトボア4体を華麗に倒した。

『舞のようできれいな動きだ』
『この配信の意図は何だ?』
『急に配信が始まったな』

「カナタファンが多いだろ?再生数が伸びるし投げ銭も期待できる」

『カナタちゃんで稼ぐクレイジーカゲオ』
『こいつ、使えるモノは何でも使うよな』
『でも、良い物見させてもらったぜ。躍動感のあるカナタの舞は綺麗だった。投げ銭してやるよ』
『戦闘に向かない占い師に何かあったら責任を取れないだろうに。流石クレイジーカゲオだな』

「サンキュー!戦闘に向かないカナタでも頑張ってダンジョンで戦っている。所で皆は戦闘訓練を受けないのか?」

『カゲオの顔がむかつく!』
『カナタちゃんを金稼ぎの道具に使って更にマウントまで取って来るか!Gめ!』
『まあまて、カゲオは全財産を食料の買い付けで使ってしまったんだ。余裕が無いんだろ』

『Gのやつめ!散財ざまあ!』
『カゲオが必死で受ける』
『クズとクズのやり取りがおもしれえ』
『カゲオ、もっとアップで尻を撮ってくれスリット部分を拡大してくれ』

「いや、そう言うのはさすがにまずいだろ」

『てめえ!クレイジーカゲオの癖に何紳士ぶってんだよ!』
『怒るな、でもカナタの腰は気になる』
『カナタちゃんの回し蹴りを見たい』

「ダメだな。配信終了」

 俺は配信を終えた。
 批判はされたが、本当に伝えたかったことは『占い師のカナタでも自分で戦って魔物を倒している事』である。

 これをやっておかないとカナタがおかしな批判を受ける可能性があった。

 ネットでセーフゾーンの快適さが広まりつつあった。

 そうなれば、

『占い師は戦わずに安全なセーフゾーンに暮らしている!』

『カナタは楽をして安全な所に隠れている!』

『占い師だけセレブ生活をしててずるい!』

 とか、自分で動かない人間からよく分からない批判が飛んでくるだろう。
 カナタに戦ってもらう事でそれらの批判へのカウンターになった。

「カゲオ君、私の為に気を使ってくれてありがとうございます」

 カナタは俺に丁寧なお辞儀をした。
 カナタは本当に勘がいい。
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