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第89話 積み上げ

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「え? あれ、ソウルスキルを覚えたの?」

 無意識に使ったんだろうな。

「覚えてるぞ」
「嘘、何もしてないのに、ソウルアップも出来るようになったわ」
「報告しに行こう!」

「待って、その前に、魔法弾を貰うわ」
「よかった」

 マナが魔法弾の入った箱を開けようとしたので俺が先手を打って開けていく。
 マナが持つブルームーンを魔法弾に近づけると魔法弾がブルームーンに吸い込まれていく。

「す、凄い量の魔法弾ね」
「そうだな、すぐに開けるから」

 俺は皆から貰った魔法弾の封をどんどん開けていく。
 魔法弾がブルームーンに吸い込まれて行った。

「え? 36120発も!」
「魔法弾の数が分かるのか」
「ええ、こんなに」

「実は貰った分もあるから」
「それでも凄いわ。1000万ポイントくらいかかるわよ」
「錬金術師の生徒と取引したから安く魔石と交換してもらった」
「それでもよ」

 メイとリツカがやってきて驚く。

「ブルームーンです☆」
「うん、覚えたわ」
「ソウルスキルを覚えたんだね。私だけまだ、私も頑張らないとね」
「俺もまだ覚えてないからな」

『メインキャラ3人の中でリツカだけが覚えていない、そういう意味だろうな』
『マナ、おめでとう! 似合ってるぞ』
『ゲームのまんまじゃないか』
『太ももからツインハンドを出すマナの動きが好きだった。もう見ることは無くなるのか』

『お前はパンツを見たいだけ』
『お巡りさん、こいつです。死刑にしてください』
『武器系のソウルスキルかっこいいわ。俺も欲しい』
『アキラのソウルスキルはまだ修復中なのか?』

「俺? 俺はまだ、と言うか今の主役はマナだろう」

『マナ、使用感を教えて』
『ゲームみたいに一瞬で出したり消したりできる? それとも収納みたいにラグあり?』

 マナが質問責めにあう。
 良かった、これでマナも自信を持てるだろう。

 俺は律儀に質問に答えるマナを見守った。
 マナはキャンプをしながらソウルアップをし、ソウルランクCになった。

 その間3人で配信をしつつモンスターを狩りに狩った。


 ◇


「やっと私もソウルアップ出来るよ!」
「おめでとう」
「おめでとうございます☆」

『おめでとう!』
『リツカちゃん、久しぶりのソウルアップおめでとう!』

「リツカ、マナと一緒に休んで欲しい」
「うん、すぐにソウルアップするね」

 リツカは走って行った。
 久しぶりのソウルアップで嬉しいんだろうな。

「次は私です☆」
「そうだな、順番的にはメイか」
「その通りです☆」

 メイが回し蹴りをした。

「2人だけになったけど、モンスターを狩ろう」
「頑張りますよ!」

 リツカが戻ってきた。

「アキラ、配信をバトンタッチしよう」
「あ、リツカが休むからな」

 俺は配信をスタートさせて魔物狩りを再開した。


 ◇


「ソウルアップ出来ます!」
「おめでとう」

『マナちゃん、おめでとう!』
『おめー!』

「おし、メイ、ソウルアップだ」
「はい☆」

 メイが休憩に向かった。

『アキラだけ置いてかれてるな』
『言うてもアキラはソウルランクBだ。先行している』
『きゅう効果か、皆の伸びが凄い』
『きゅうは祝福の妖精だからな。きゅうの力が大きいだろう』

『ここに来るリスクを取っているのもあるな』
『その通り、ここは皆が来ない魔境のような場所だ』
『アキラはぼっちか』

「そうなる、1人で集中してモンスターを倒す」

 グレイブレイブを振って回復のカードを落とすモンスターを狩り続けた。


 ◇


 パリン!

「グレイブレイブが割れた」

『1万年前の武器が壊れたぞ!』
『やばいんじゃないか!』
『アキラの専用装備が!』

 俺は慌てずにスティールソードでモンスターを倒していく。
 モンスターを全滅させてからスティールソードを消して言った。

「グレイブレイブには自己修復能力があるから時間が経てば直るから」

『そういう事か、でも、1万年前の武器にしては脆すぎる』
『それは俺も思った』
『アキラの武器は弱いの?』

「グレイブレイブは耐久力が低い武器なんだ。剣の攻撃力上昇・闇魔法の威力アップの他に2つの固有能力を無理に入れている。その代償で耐久力が低い」

『4つの固有能力か』
『ん? 自動修復と一瞬で出し入れできる能力があるでしょ?』
『それはデフォなんだろ』

「うん、それ以外の能力を4つ入れてて、まだ2つしか解放出来ていないんだ。今は前世の記憶を頼りに、剣技を重点的に磨いているよ」

 収納から剣を取り出しスティールソードを使った。
 白いオーブに触れてウサギが100体出現すると縫うように走って剣を振った。

 すべてを倒し終わるとオーブの前で止まる。

『気合侍の域に達している』
『もう充分だろ』
『もうすでに動きが良く見えないんだけど』

「兄さんに比べれば技量はまだまだだ」

『俺らにはその違いが分からないからな』
『もう充分だ、それにアキラは戦士特化じゃないだろ?』
『アキラ、魔法の練習はしないのか?』

「今は剣技だ、今までは1つを磨いて体が動かなくなってきたらそうしてたけど、スティールソードで回復するから疲れない。いつまでも動ける気がする」

『アキラが回復のカードを貯めに溜めている』
『カードを詰めば月に届くまでやりそう』
『んな馬鹿な!』

『でも、オーブをタッチして走って斬って全滅させてオーブに戻ってくるタイムアタックムーブはやってるよね? アキラが可愛い』
『真剣なまなざしがいい』
『アキラ好きだわー』

 みんな強くなっている。
 今は皆を気にかける時ではないか。

 自分で出来る事がまだたくさんある。

 剣を鍛えたい。

 前世で使っていた闇魔法を覚えたい。

 光魔法の訓練をしたい。

 やるだけで前に進めるのはいい。
 今は剣技を磨こう。

 俺と、クラックと、前世の俺、そして兄さんの脚さばき。
 すべての記憶を動員して動きを完成させる。

 練習により回復のカードがどんどんたまっていった。
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