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第85話 欠けた魂
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目を開くと兄さんとライカさんが武器を持って抱き合っていた。
この3つの装備は同じ魂を持つ人間しか使えない。
兄さんとライカさんは1万年前の同じパーティーだった。
前世の記憶を思い出した。
だからきゅうは、ここに来たかったのか。
だから俺達を連れて来たかったのか。
だから兄さんやライカさんに懐いていたのか。
だからサモンモンスターで呼び出した時に泣いていたのか。
きゅうが俺の指に前足をタッチした。
「きゅう、また契約しよう」
「きゅう」
俺ときゅうの体が光り輝いた。
きゅうの記憶が流れ込んでくる。
きゅうは俺が死んだ後、2人になった勇者パーティーに必死でついて行く。
取得経験値を上昇させる祝福しか使えず、必死で2人について行く。
何度も2人に守られ、何度も戦いについて行き、そしてリリスを失い、ワイドを失った。
予言通りに3人の専用武器を封印するために魔法使いが武器を持って歩く。
それにきゅうがついて行く。
「エクス様を殺したことを恨んでいますか?」
「……」
「恨んでもいい、私はそういう事をしたのですから」
「……」
きゅうは黙ってついて行く。
そして封印の場所にたどり着いた。
「帰りますよ」
きゅうが首を横に振った。
「ここにいれば1万年間さみしい思いをします、行きましょう」
「きゅう!」
魔法使いの手を払った。
「私をいくら恨んでもいい。しかし、さみしい思いをします。それでもいいのですか? きゅうはさみしがり屋でしょう?」
「きゅう」
きゅうがこくりと頷いた。
魔法使いの男が差し伸べた手をガクンと下に下ろした。
「……そう、ですか。分かりました。この地を封印します」
3つの武器ときゅうは封印されたまま過ごした。
きゅうが1人ぼっちで訓練をする。
「きゅう!」
前後にジャンプして左右にジャンプする。
何度も何度も訓練を続けた。
きゅうが一人ぼっちで訓練をする。
頑張って走るが脚が短くてすぐに転ぶ。
ゴロゴロゴロゴロ!
「きゅう!」
頑張って起き上がりまた走り込みを続けた。
きゅうが一人ぼっちで訓練をする。
もう、何年経ったのかすら分からない。
空に浮き上がり、不安定に飛ぶ。
何度も何度も飛ぶ練習をした。
きゅうが一人ぼっちで訓練をする。
飛びながら前後左右上下、あらゆる動きを繰り返す。
きゅうが一人ぼっちで訓練をする。
壁に向かって経験値をアップさせる祝福を送り続けた。
「きゅう! きゅう! きゅう! きゅう!」
そして、1万年の時が流れた。
ワープすると、目の前に俺がいた。
きゅうが、泣きながら、俺に抱き着いた。
現実に引き戻されると、俺はきゅうを見つめた。
「そうか、きゅう、頑張ったんだな」
「きゅう」
きゅうを撫でる。
俺がきゅうを守っていたんじゃない。
きゅうが俺を守っていてくれたんだ。
俺に経験値アップの加護をずっと与え続けてくれたんだよな?
兄さんも、ライカさんも前世の頃から俺を守ってくれていた。
泣きそうになってぐっとこらえた。
俺は灰色の剣、グレイブレイブを見つめた。
4つある宝石の内2つしか光らない。
俺はあの時と同じでまだ足りない、この剣は俺が限界まで力を引き出した状態をを想定して作られている。
魂が融合しても、まだ力はかけたままなのか?
いや、まだ完全に融合していない。
俺は、まだ光魔法を使えなくて、ソウルスキルを使えない。
欠けているのは変わらないのか?
「アキラ、自信を持て、お前は素晴らしいんだから」
急に投げかけられた兄さんの言葉で、俺の感情は決壊した。
「う、ああ、うあああああああああああああああああああああ!」
兄さんが俺を抱きしめる。
俺は兄さんの胸で泣き続けた。
この3つの装備は同じ魂を持つ人間しか使えない。
兄さんとライカさんは1万年前の同じパーティーだった。
前世の記憶を思い出した。
だからきゅうは、ここに来たかったのか。
だから俺達を連れて来たかったのか。
だから兄さんやライカさんに懐いていたのか。
だからサモンモンスターで呼び出した時に泣いていたのか。
きゅうが俺の指に前足をタッチした。
「きゅう、また契約しよう」
「きゅう」
俺ときゅうの体が光り輝いた。
きゅうの記憶が流れ込んでくる。
きゅうは俺が死んだ後、2人になった勇者パーティーに必死でついて行く。
取得経験値を上昇させる祝福しか使えず、必死で2人について行く。
何度も2人に守られ、何度も戦いについて行き、そしてリリスを失い、ワイドを失った。
予言通りに3人の専用武器を封印するために魔法使いが武器を持って歩く。
それにきゅうがついて行く。
「エクス様を殺したことを恨んでいますか?」
「……」
「恨んでもいい、私はそういう事をしたのですから」
「……」
きゅうは黙ってついて行く。
そして封印の場所にたどり着いた。
「帰りますよ」
きゅうが首を横に振った。
「ここにいれば1万年間さみしい思いをします、行きましょう」
「きゅう!」
魔法使いの手を払った。
「私をいくら恨んでもいい。しかし、さみしい思いをします。それでもいいのですか? きゅうはさみしがり屋でしょう?」
「きゅう」
きゅうがこくりと頷いた。
魔法使いの男が差し伸べた手をガクンと下に下ろした。
「……そう、ですか。分かりました。この地を封印します」
3つの武器ときゅうは封印されたまま過ごした。
きゅうが1人ぼっちで訓練をする。
「きゅう!」
前後にジャンプして左右にジャンプする。
何度も何度も訓練を続けた。
きゅうが一人ぼっちで訓練をする。
頑張って走るが脚が短くてすぐに転ぶ。
ゴロゴロゴロゴロ!
「きゅう!」
頑張って起き上がりまた走り込みを続けた。
きゅうが一人ぼっちで訓練をする。
もう、何年経ったのかすら分からない。
空に浮き上がり、不安定に飛ぶ。
何度も何度も飛ぶ練習をした。
きゅうが一人ぼっちで訓練をする。
飛びながら前後左右上下、あらゆる動きを繰り返す。
きゅうが一人ぼっちで訓練をする。
壁に向かって経験値をアップさせる祝福を送り続けた。
「きゅう! きゅう! きゅう! きゅう!」
そして、1万年の時が流れた。
ワープすると、目の前に俺がいた。
きゅうが、泣きながら、俺に抱き着いた。
現実に引き戻されると、俺はきゅうを見つめた。
「そうか、きゅう、頑張ったんだな」
「きゅう」
きゅうを撫でる。
俺がきゅうを守っていたんじゃない。
きゅうが俺を守っていてくれたんだ。
俺に経験値アップの加護をずっと与え続けてくれたんだよな?
兄さんも、ライカさんも前世の頃から俺を守ってくれていた。
泣きそうになってぐっとこらえた。
俺は灰色の剣、グレイブレイブを見つめた。
4つある宝石の内2つしか光らない。
俺はあの時と同じでまだ足りない、この剣は俺が限界まで力を引き出した状態をを想定して作られている。
魂が融合しても、まだ力はかけたままなのか?
いや、まだ完全に融合していない。
俺は、まだ光魔法を使えなくて、ソウルスキルを使えない。
欠けているのは変わらないのか?
「アキラ、自信を持て、お前は素晴らしいんだから」
急に投げかけられた兄さんの言葉で、俺の感情は決壊した。
「う、ああ、うあああああああああああああああああああああ!」
兄さんが俺を抱きしめる。
俺は兄さんの胸で泣き続けた。
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