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第50話 道場

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「何ですか?」
「まずは落ち着いて話をしたんだ。向こうで話をしよう」

 校長先生が満面の笑顔だ。

「……はい」

 職員室に座ると、校長先生が笑顔のまま話を始めた。

「コーヒーと、お茶、どっちがいいかな?」
「コーヒーでお願いします」
「硬くならず、座ってくつろごう」
「はあ」

 俺はソファに座って待つ。

 コーヒーが置かれると校長先生が対面に座った。

「大活躍だったね。10メートル級をソロで討伐した。中々出来る事じゃない」
「ありがとうございます」
「所で、ステータス測定を受けて見ないか?」

 ステータス測定を受ければ近接ランクやHPランク、持っているスキルが詳しく分かる。
 でも金と時間がかかる。

「お断りします」
「理由を、聞かせてくれるかな?」
「僕は、兄さんに4強になって欲しいんです。手伝いたいです。僕がいなければ兄さんはとっくに4強になっていました。放課後は道場に行って兄さんが4強になる作戦を練りたいんです」

「測定は予約さえしておけばそこまで時間はかからない。それに今なら余裕で費用も払えるはずだ」
「今は時間が惜しいです」
「兄さんにも同じことを言われたよ。そういう所は似ているね。でも、兄さんは4強になりたいとは思っていないよ?」

「だと思います、それでも兄さんには学校を卒業する前に4強になって欲しいです。今ステータス測定は受けません」
「……そうか、分かった。うん、無理だけはしないで欲しい」
「はい、ありがとうございました」

 俺は職員室を出た。


 放課後になるとライカさんと兄さんが教室に来た。

「メイはいないの?」
「メイは今学科試験を受けています」
「そう」

「見てきますね、あ、来ました」
「合格しました! 今日から2年生になるまで学校に行かなくていいですよ!」
「おめでとう」
「頑張ったな」
「良かったじゃない」

「きゅう♪」
「きゅうの機嫌もいい」
「きゅうも祝福してくれるんですか?」
「きゅう♪」

 きゅうが兄さんに飛び乗った。

「あ」
「きゅう♪」

 次はライカさんに飛び乗った。

「ふふふ、可愛いわね。懐かしい感じがするわ」
「私もだ」
「きゅう♪」

 そして俺に飛び乗る。

「次は私」

 きゅうは俺の肩で佇む。
 メイに抱き着く気配が無い。

「こ、来ないんですか!」
「……」

「私にだけ懐いてないです!」
「……」
「きゅう、メイがさみしがるから」
「きゅう」

 きゅうがメイに飛び乗ってすぐに俺の肩に戻った。

「アキラが言ったから飛び乗ってる感が凄いです!」

 俺はきゅうを両手で抱いた。
 じっと見つめるが何を考えているのか分からない。

「きゅう、何なんだろうな? メイがイメチェンをしたからか?」
「きゅきゅう」
「ソウルスキルを発動しているからか?」
「……」

 よく分からない。
 きゅうがふわっと浮き上がった。

「何故か聞いても反応がない。謎だけど諦めよう」
「そ、そんな!」
「道場に行こう」
「謎が解けてないですよ!」
「研究室でも駄目だったんだ。俺達に謎解きは難しいだろ」

 メイがきゅうを抱っこしようとするとすっと躱した。

「あ、素早いです。と見せかけて!」
「きゅきゅう♪」

 きゅうがメイの手を素早く躱す。

「はっはっは、仲がいいじゃないか」
「遊ばれてるだけです。えい!」
「きゅう♪」

 メイの手をきゅうが躱しつつ道場に到着した。
 道場に入ると子供たちがきゅうを追い回す。

「きゅう、大人気だな。それに楽しそうだ」
「良く来ましたね」
「「先生、よろしくお願いします」」

「子供たちの練習は終わりにしましょう、久しぶりに稽古を受けなさい」
「お父さん、キドウとメイで打ち合ってみるのが良いと思うわ」

 兄さんが刀を抜くとライカさんが刀を回収し、兄さんが鞘を両手で構えた。

「ブラックスターの力を試してみたいです☆」
「うむ、思う存分に蹴りを繰り出してくれ」
「遠慮なく!」

 メイがジャンプして更に空中でジャンプする。
 そして兄さんの頭上に蹴りを繰り出す。
 それを兄さんが鞘で打ち返すとメイがその反動で高く舞い上がり、また二段ジャンプをして兄さんに蹴りを放った。

 着地するだけじゃなくて、刀を蹴ってジャンプしても二段ジャンプが再使用できるようになるのか。

 メイが上から蹴りを放ち、それを鞘で打ち返す。
 その動作を何度も繰り返した。

「それまで! 分かりました。メイさん」
「はい☆」
「まだソウルスキルの扱いに慣れていませんね?」

「そうかもです」
「今度はジャンプ蹴り無しでキドウ君に攻撃をしてください」
「分かりました。せい!」

 ガキン! ガキンガキンガキンガキンガキン!

「それまで! 基本の鍛錬も必要です」
「ありがとうございました☆」
「次はキドウ君とアキラ君、打ち合ってみなさい」

 俺は剣を抜いて鞘を両手で構えた兄さんと打ち合うが刀無しでも兄さんの攻撃を突破できない。

「それまで! アキラ君、攻撃のタイミングが微妙にずれています。能力値が急に上がって、微調整が追い付いていません。普段の戦いではその部分を意識するように」
「ありがとうございます!」


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