上 下
45 / 116

第45話 無法地帯

しおりを挟む
 現場に近づくと怒鳴り声が聞こえた。
 西高校の生徒だ。
 みんな我先にドローンに乗り込み、防壁の中に降りていく。

「おい!俺の魔石を取るな! 殺すぞ!」

 パンパンパンパン!

「いってえ! てめえ! 何撃ってやがる!」
「おい! 速くドローンに乗れ!」
「待て! 俺も乗る!」
「へっへっへ、今が稼ぎ時だぜ!」

「早くしろよ! 殺すぞ!」
「うるさい!」

 ドローンに乗った生徒をドロップキックで落として取っ組み合いが始まった。
 大人がいなくて防壁の上は無秩序状態だ。
 大人たちは防壁北に向かった、高校生の多くは残ったがそこに防壁西にウサギが向かい、高校生も招集を受けた。

 今ここには西高校のヤバイ奴しかいない。
 西高校のまともな人間は隠れるか避難しているだろう。
 ライトアップされた防壁で足を引っ張り合いながら魔石を奪い合っている。
 防壁に設置された監視カメラで何人か逮捕される可能性すらある。

 俺は足を止めた。

「一旦止まろう。西高校の奴らしかいない。作戦会議だ」
「ウサギを倒しに行けば、最悪銃で撃たれますね」
「そうなんだよ、あいつらどさくさに紛れて人を殺すと思う」
「普段から、人を殺したいと言ってる奴がいるべ」

「まず、ハンダは撃たれるか後ろから殴られる」
「一旦様子見だ」
「もうちょっと下がりましょう」
「それが良いべ」
「ここに立っているだけで危ないすらあるよな」

 怒鳴り声と怒号が止まない。
 西高校は犯罪者予備軍が多い。
 前に出るのは危険だ。
 西高校の生徒はモンスターより危険すらあり得る。

「しばらくカフェで時間を潰すべ」
「私お勧めのカフェを知ってます。夜のカフェに行きましょう」
「任せるべ。実は」
「入った事が無いんですよね?」
「んだんだ」

「俺も兄さんもそう言うのはよく分からない」
「2人はお金を稼げるんですから、外食に慣れておいた方が良いですよ」
「そう、かもな」
「カフェデビューか、受けて立とう」

 兄さんが服の襟を正し刀の位置を整えた。

「そう言うのじゃないですよ。普通に入って飲物を飲むだけです。一回やってみましょう」
「きゅう、服の中に隠れていてくれ」

 きゅうが服の中に隠れた。
 
 俺達はメイに付き従うようにカフェに入った。

「私はキャラメルマキアートにします」
「「同じものを」」

 5人が一斉に言った。

「私は飲物だけでいいですが、皆はパンサンドとかどうですか?」
「「それでお願いします」」

「は! 兄さん、これは罠だ、パンサンドとキャラメルマキアートを合わせて1000ポイントを超えている」
「く、そうか、中々罠が多い」
「あ、いいですよ、私が皆分を奢りますから」

「バカな! 6000ポイント近くの」
「いいですから、気にせず食べましょう。キャラメルマキアート6つにパンサンド5つをお願いします」

 全員がメイに礼をした。

 6人でテーブルに座って待つ。
 緊張で汗が出て来る。
 兄さんも額の汗を拭っていた。

 これが、カフェか。
 飲み物とパンサンドを合わせて1000ポイント越え、それを一日2食頼んだとする。
 一カ月で6万越え!
 これは貴族のたしなみか!

「アキラ、キドウ、2人はもうたくさん魔石を取れるんですから、慣れましょう」
「う、うむ、だが」
「ライカさんと一緒に来る事になるかもしれませんよ?」
「く、カフェか。慣れる必要があるな」

「兄さんは頑張ってくれ」
「アキラも慣れていきましょう」
「お、俺は、もう少し、か、稼げるようになってから考える」
「2人の気持ちは分かるべ。おいらも中二まで貧乏だったべ」

 3人でうんうんと頷いた。

「……3人とも強いですよね?」
「俺はまだまだだと思うけど、それがどうしたんだ?」
「たくさん魔石を取れるようになれば、料理はこういう所で済ませて出来るだけ時間を節約した方が沢山お金が手に入りますよ?」

 トッププレイヤーがテイクアウトの商品をゲートの中で食べながらインタビューを受けていたな。
 収納に三カ月分のテイクアウト品を入れている冒険者もいた。

「刀の道以外にも新しい壁が」
「違います、普通に外食やクリーニングを利用するだけでいいんです」

「お待たせしました。キャラメルマキアート6つです」
「ありがとうございます」
「「ありがとうございます」」

「所でここのお店は避難しないんですか?」
「そうですねえ、多分大丈夫じゃないかなーと思ってます。少し防壁から遠いですし」
「そうですか」
「今からパンサンドもお持ちしますね」
「お願いします」

「パンサンドです」
「ありがとうございます」
「「ありがとうございます」」
「ごゆっくりどうぞ」

 俺達は無言でパンサンドとキャラメルマキアートを頂いた。

「うわあ、誰も話さないんですね」
「緊張するんだ」

 俺は服に隠していたきゅうにパンサンドを食べさせる。
 きゅうがぬんと服から出て口にパンサンドを入れるとしゅっと引っ込んだ。
 もぐらたたきを思い出す。

 くちゃくちゃくちゃくちゃ!

「きゅう! きゅう!」
「キャラメルマキアートもあるから」

「あ、まずいですね」
「ん?」
「防壁の西が、突破されます」
「西高校の生徒が止められなかったか!」

 6人で立ち上がり現場に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...