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第16話 気合のサムライ

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【キドウ視点】

 道場の娘である大道ライカが私を手招きする。

「キドウ、アキラから電話よ」
「ありがとう」

 スマホを受け取ろうとすると私の両手を包み込むように両手でスマホを渡してくれた。
 そして目が合うとにこっとほほ笑んだ。
 思わず顔が熱くなる。

 私はライカに恋をしている。
 昔からだ。
 だが私はまだまだ未熟だ。
 ライカは13ゲート西高校3年で私と同じ学年だ。
 ライカは学校の4強に選ばれている。
 だが私はただのEランクだ。

 そしてまともに弟を食べさせる事すら出来ていない。
 お金を貯めて、もっと力をつけ、弟がお金の心配をせずに済むまでは絶対に告白しないと刀に誓っている。

 私は気持ちを切り替えて電話を取った。

『兄さん、大丈夫かもしれないんだけど、念のために援軍にこれないかな?』
「すぐ行く、場所は?」
『いつもの休息地点』
「すぐに行く」

 道場の子供が近寄ってきた。

「きあいどうしたの?」
「きあいげんきないな」
「少し用事が出来た」

 私は道場の師範の礼二レイジさんに礼をするとにこっとほほ笑んだ。

「アキラ君の所に行くのですね?」
「ええ、先生、今日は早めに上がらせてもらいます」
「待ちなさい。これを持って行きなさい」
「これは」

 先生が刀を俺に手渡した。

「君が高校を卒業する時に渡そうと思っていました。ですが必要なのは今この時でしょう」
「こ、こんなに立派な刀を」

「他の人にとってはただの刀です、ですがキドウ君が持つことでその刀は大きな力になります。そのボロボロの脇差では力を発揮できないでしょう?」
「くう!! きあああああああああああああああああああいい!! 遠慮せず、いただきます」

「きあいないた?」
「きあいなくな」
「きあい、あめあげる」
「皆は稽古に戻りなさい」

「最期にキドウ君、走ってはいけませんよ」
「ううう、は、い?」
「走って向かっても、疲れて足手まといになります。歩いて行きなさい。急いでいる時ほど落ち着きなさい」

「そうよ、それに防壁の中はイノシシがまだ暴れ回っているわ」
「そうです、最悪援軍に駆け付ける前に死にますよ。 防壁を回りこんで手薄な南から行くのがいいでしょう」

「……確かに、そうですね」

 私は、何を泣いている?
 今はアキラを助ける時だ。
 私が冷静にならずにどうする。
 兄である私が冷静に行動できずにどうする!

 バチン!

 両手で思いっきり頬を叩いた。

「行ってきます!」

 私は礼をして早歩きでゲートに向かった。



【ライカ視点】

 道場にいる子供が帰ると、父さんが近づいてきた。

「一緒に行かなくても良かったのですか?」
「いいわ、まだチャンスはあるもの」

 私はニヤッと笑った。

「そのような顔をしてはいけませんよ」
「そうね、後もう少し、キドウのパーティーを壊すまで、もう少しよ」
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