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第11話 増していく力

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「ふははははは! はあ、はあ、どんどん来い! 俺がすべて切り倒してやる! 闇魔法の餌食になれ!」

 クラックは消耗していた。
 100のウサギを倒したら次は500のウサギを相手にしている。
 
 100を切るまでウサギが減った。
 でも、俺は栄養失調になったばかりだ。
 栄養が足りない。

 能力値は上がるが反比例するように栄養が枯渇していく。

「アキラ、次はお前が戦ってみろ」
『分かった』

 俺とクラックが入れ替わった。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 俺は飛び掛かるウサギに剣を何度も斬りつけて倒していった。


 そして、すべてのウサギを倒すと地面に寝ころんだ。
 意外と、何とかなるもんだ。


「はあ、はあ、全部倒しちゃいましたか」
「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、やった。勝ったぞ。ははははははは」
「はあ、はあ、うれしそうですね?」
「メイ、酔拳を使おうとしてただろ? 使わせずに倒せた」

「……バレてましたか」
「あれは使った後体調が悪くなるからな」
「お疲れ様です。せめてドロップ品は私が拾っておきますね」
「頼む、ちょっとだけ、眠る」
「いいですよ」

 俺は眠りに落ちた。


 ◇


 目が覚めると野営の用意が出来ていた。
 ダンジョンも日本と同じで朝と夜がある。
 テントは無しで、焚火の周りに集まって暖を取る。
 テントを買えないのもあるが、パーティーメンバーが少ない状態で使えば襲撃を受けた際にテント事攻撃されてしまう。

「あれ? すぐに起こしてくれなかったのか?」
「今、イノシシがゲートを超えて溢れ出しています。ここでビバークです」
「またか」

 ぐううううううううううううう!

「お腹が空きましたよね? おにぎりと鍋がありますよ」
「助かる。血が足りない」
「たくさん食べましょう」
「我慢できなくて、全部食べてしまいそうだ」

「大丈夫です、2セット目と3セット目の用意までしてあります☆」
「うまい、もぐもぐもぐもぐ、ウサギ鍋か」
「ですです」
「メイは食べないのか?」
「私はパンを食べながら料理をしてたので大丈夫です」

「そっか、ありがとな」
「いえいえ、たくさん食べましょう」

 俺は夢中で鍋を食べて、おにぎりを口に詰め込んだ。
 体に血が巡り温かくなっていく。


「あ、きゅうも食べるか?」
「きゅう」

 きゅうが首を横に振った。

「今は気にしないでって言ってるんじゃないですか?」
「きゅう、俺を気遣ってくれるのか」
「きゅう♪」

 きゅうがこくりと頷いた。

「夜の見張りも私に任せてください! なんせ私は万能メイドですから☆」
「分かった。頼むな」

 俺は焚火の前で横になった。


『起きろ、アキラ、起きろ!』
「クラック、か」
『メイが寝た』
「夜、遅いからな」

 メイが俺の横でもたれかかりながら寝ている。
 無防備だな。

 消えそうになっている焚火に薪を投げ入れた。

『話をするにはいいタイミングだ』
「分かった。何の話だ?」
『俺から心を閉ざすな、お互いに心を開かなければ魂の融合は進まないだろう』

 そういう感覚はする。
 でも、俺はクラックを信頼できない。

「言っている事は分かる。確かに、心を閉ざすと記憶を覗かれなくて済む」
『そこでだ、名案がある』
「なんだ?」
『お前の記憶を見せてくれ』

「ん? 普通は言い出した方が見せるんじゃないのか?」
『そういう礼儀はあるな、だが、心を閉ざしているのは俺ではない、お前だ』
「俺が記憶を見せれば心を開きやすくなる、か?」

『そうだ』
「逆じゃないか? お前が記憶を見せてくれて、信頼出来れば心を開く」
『俺は過酷な人生だった。今お前に負荷をかけるのは逆効果になりかねん』

「あ、そうか、俺が混乱していると思っているな?」
『混乱しているだろう』
「していない」
『している。お前は物事を飲み込めていない。自分の弱さを認めろ』

 言い合いが続く。


 決着がつかない。
 ここで言い合っても始まらない。
 俺から記憶を見せよう。
 だが、

「分かった、記憶を見せる、でも次はお前だ」
『約束する、ここを出て落ち着いたら必ず俺の記憶を見せる』

「約束を破るなよ」
『お前と俺は一心同体になるのだ。約束を破る事は自分自身に嘘をつくことになる』

「……俺の心を見せよう」
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