雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった

ぐうのすけ

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第10話 奉仕メイ

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【メイ視点】

 後ろに下がってクラック君に変わったアキラの目を見た。
 口では過激な事を言っているし、無理をしすぎる部分もある。
 でも、私にはクラック君が悪役には見えない。
 
 私はクラック君のおかげで助かっている。
 呼吸が整ったらまた戦える。
 クラック君も、アキラも、無理をしている。
 それだけは分かった。


 どう動けばいい?
 どうすればいい?
 危機が走馬灯のように脳を加速させた。



 私は普通の両親の元に生まれた。
 小さな頃から男の子が寄って来た。
 私は冒険者としての才能がそこまで無いんだと思う。
 ソウルスキルは覚えていないし、蹴りしか能が無い。
 そしてその蹴りも決め手に欠ける。

 でも、今はどこの会社も給料が安い。
 冒険者だけは誰でもなれてお金がいい代わりに死亡率が高い。

 父さんは普通の会社員で治安の悪い西地区に暮らしている。
 治安が悪い代わりに土地は安いし、危ない所に近づかなければ危険はある程度回避できる。
 

 私は戦闘能力が低くて一番治安の悪い第13ゲート西高校に入った。
 その時、アキラとキドウを初めて見た。

 中二病のアキラと気合侍のキドウ。
 変人兄弟だと噂になっていた。

「中二病と気合サムライ」
「あの兄弟はヤバイ」
「マジで関わらない方が良いよ」

 私は2人に近づかないようにした。
 それでもトラブルに巻き込まれた。
 高校に入ってすぐに男子生徒が肩を抱いてきた。
 抵抗しても振り払えなくて怖かった。

「記念撮影しようぜ!」
「やめてください」
「暴れんなって」

 その時、アキラが助けてくれた。

「やめろって」
「ああああ! 雑魚が調子に乗るなよ! 不良品のお前が調子に乗るな!」

「きああああああああああい!」
「げえ! 気合侍だ!」

 キドウが走ってきてくれたおかげで私は助かった。

 2人の目を見て、2人の行動を見て、噂は当てにならないと思った。
 2人とはすぐに仲良くなって同じパーティーに入って同じ道場に通った。
 もちろん身を守る意味もあったが2人にそれを話すとすんなり受け入れてくれた。

「私が奇声をあげる変人と言われている事は分かっている。むしろパーティーが増えて助かる」
「くっくっく、我らのパーティーに入るのだ」

 言っている事は変でも、2人は意外とまともだった。
 仲良くなってから私は2人に相談した。

「男の人に良く声をかけられて困っています。どうすればいいでしょうか?」
「1人にはならない方が良いだろう」
「アキラはどう思いますか?」

「すっごい真面目な話をするんだけど、冗談じゃなく聞いて欲しい」
「いいですよ」
「人は自分より弱そうで優しそうな人に強く当たる」

「なんか、経験してきたような言い方ですね?」
「ほら、俺は努力してもソウルランクがFだからそういう目に合いやすい。兄さんが守ってくれたからまだよかったけどな」

 アキラは危機を察知する能力が高い。
 苦労があったんだろう。

「アキラが私の立場ならどうします?」
「まずは髪を原色の赤と青で半々に染めて毒ガエルや毒蛇感を出す。それとメイクはきつめにして、制服じゃないゴスロリ服とかにする。更にバトルブーツを真っ赤とか真っ黒にして一見やばいやつ感を出す」

 魔力の影響で髪色は様々だ。
 スキルも多様で、校則はかなり緩くなっている。

「髪を染めるのは青半分、赤半分じゃないと駄目ですか?」
「駄目ってわけじゃないけど、今は魔力の影響で赤い髪とか青い髪も多少いるから毒ガエル感があまり出ない。だから、うわ、こいついかにも染めてんな感を出しておきたい」
「アキラ、キドウ、私がその格好をしても、普通に接してくれますか?」

「問題無い」
「大丈夫だ、むしろ、毒オーラを出していこう」

 私はアキラに言われた通りの格好をした。
 明らかに怒られにくくなり、ナンパもされにくくなった。
 それでも学校でナンパされた時は身を守る為にお酒を飲んで酔拳を使い蹴りを入れた。

「ぐぼおおおおおおおお!」

 大柄な男子生徒が地面に転がる。
 すかさずアキラが駆け寄ってくれた。

「待て待て! 背が大きいマッチョが女子生徒に近づいたら怖いだろ?」
「げほ、げほ、そっかあ、おれ、怖いのかあ」

 この事件の後、めでたく男の子は寄ってこなくなった。
 そして、私も見事に変人パーティーの仲間入りだ。
 荒くれ者が多い西高校では、毒が無いと危ない。

 このパーティーは居心地がいい。

 みんな変で、

 面白くて、

 それでいい。
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