上 下
84 / 85

王の謝罪

しおりを挟む
 キュキュクラブは旧ベアー家があった国の南で魔物狩りを終わらせ、王都へと赴いた。

 王都はレッド領のレイドボス発生の報を受け、すぐにブルー領へと侵攻し、ブルー領を素早く統一した。

 ブルー領の当主は民に嫌われていたようで、王の統治に反対する者は少なかったようだ。

 レッド家は力を失い、王への態度を軟化させた。






 俺と王は個室で、2人だけで話を始めた。

 何故かまた俺だけが呼ばれた。
 解せぬ。

「皆が居る前では腹を割って話せぬ。だから人払いをした」

「何の話なんだ?」

「すまぬ」

「ん?」

 王の目には涙が溢れていた。
「今まで無理をさせてすまなかった!苦し思いをさせた!わ、私に力があればハルトにこんな苦しい思いはさせなかった。」
 王はハルトに頼り続けた。
 それしかできる事が無かった。
 王は気づいていた。このことで私と同じようにハルトを生贄にしてしまっている。
 何も返す事ができない。
 だから謝る事しかできない。
 だが、それだけでも、出来ることはしよう。

 王がただ謝るだけのハルトと王の会談は終わった。


 会談が終わると、ハルトは王の事を考える。
 謝罪したくて人払いをしたのか。

 ここまで泣いて謝っている。

 王という立場がある。

 他の人が居たらここまで謝る事は出来なかっただろう。

 マッチャー・グレー。

 この王は本来なら、王にさえならなければ普通の人間だったんだろう。

 貴族と民、中と外から足を引っ張られ、邪魔されてきた。

 未来の為の改革も無知な民と貴族に邪魔される。

 王は今までの苦労のせいか顔に疲れがにじみ出ていた。

 何度も周りに足を引っ張られ、誰が味方か分からず、疲弊していく。

 疲れ果てて自身の実力を発揮しきれない。

 大変な思いをしてきたのだろう。

 だが今はホワイト領・カイ・ジークもいる。

 今ここで謝ったのは王に余裕が出てきた為だ。

 これから良くなる。

 皆がいれば良くなる・・・・・・・。




 いや、違う!

 人任せにするのは違う!

 俺は、俺に何が出来る?

 俺はどうすればいい?

 俺はどう考えればいい?

 王との話が終わった後、その事が頭に残って離れない。

 何が良いかは分からない。

 だが俺は王が望んだ貴族にはなりたくない。

 貴族にならなくてもやれることはある。

 きっとあるんだ!

 帰る前にカイの顔が浮かぶ。

 気が付くと俺はカイの前に立っていた。

「ハルト殿、どうされましたかな?」

「食事を国に寄付したいんだ」

 こうして俺はかつてないほど大量の食事を寄付し、ホワイト領へと戻った。






【謁見の間】

「ハルト殿から大量の料理の寄付を受けました。これがその資料になります」
 カイは淡々と報告した。

 王は資料を見て泣きだした。
 大量の料理を寄付されたのだ。
 国庫に影響を与えるほどのハルトの料理がだ!
 紙を持つ王の手が震えた。

「ありがたい」
 ありがたい、そうある事がむずかしい。
 だがハルトはありがたくあり続けた。

 ハルトは本当にありがたい人間だ。

 カイは王の言葉の意味をくみ取った。
「ハルト殿は本当にありがたい人です」




 その後定期的にハルトから大量の料理が寄付された。

 この寄付は国が安定するまでの1年間続いた。

 更にキュキュクラブから大量の資金が定期的に寄付された。

 この資産と料理の力で王都は急速に復興していった。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら

キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。 しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。 妹は、私から婚約相手を奪い取った。 いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。 流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。 そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。 それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。 彼は、後悔することになるだろう。 そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。 2人は、大丈夫なのかしら。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...