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テイカーの失敗続き⑫

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 王の処刑宣告で脅され、テイカーはブラック領を目指す。

 2000の精鋭は、500にまで減っていた。

 テイカーが精鋭を駒のように使いつぶしたこと。
 更にブラック領の精鋭が王都の兵や騎士になることを望み、王都に残った。
 テイカーの愚かな行いで多くの兵を失った王都側と優秀な精鋭の思惑は完全に一致した。

 くそくそ!まずいまずい!

 早くブラック領のダークスフィアを鎮圧しなければ俺の命が危ない!

 すぐに屋敷に帰り、ダークスフィア鎮圧に動かねば!





 屋敷に戻ると、屋敷が燃えていた。 

 なぜだ!部下は何をしていた!

 誰かいるか!出てこい!

 テイカーの取り巻きは揃ってブラック領を去っていた。
 その隙に何者かに火を放たれたのだ。

 なんでだ!

 おかしい!

 テイカーは屋敷を見つめ、膝をついた。

 その光景を遠くから監視するものが居た。

 クリムとリンである。
 元テイカーのパーティで、テイカーにより利益を吸い上げられ、星の返上にまで追い込まれた元貴族だ。

 クリムとリンは膝をつくテイカーを満足げに見届け、ブラック領から離れていく。




 十分に距離を取ると、笑い出す。

「あの顔を見られて良かったぜ!」

「これで気が晴れたわ。テイカーはもう落ちぶれる未来しか見えねーわよ。」

「今まで吸われて来た分は返してもらうぜ。」

 クリムとリンは満足げに歩き出す。




 屋敷が燃え落ちると、地下の金庫へと向かった。

 そ、そうだ!金庫に資金が残っているはずだ!今月の収入が入っている!」

 テイカーは周りの兵に指示しがれきを取り除く。

 そうだ、この場所だ、金庫の中に金が入って・・・・・ない?

 無い無い無い無い!

 何故ない!なぜ空っぽなんだ!?

 そこに騎士が現れる。

「まだダークスフィアの鎮圧に向かっていないのか?」

「見ればわかるだろうが!屋敷が燃えたんだよ!」

「なるほど、屋敷が燃えてまだ一向に、取り掛かっていないと。それで良いな。王の命に対して屋敷が燃えて取り掛かっていないという回答で良いのだな?」

「い、今から始める。」

「今と言うのは具体的にいつだ?兵も十分ではないようだがいつ兵が集まる?」

「今からだ!」

「今から集め始めていつ討伐に向かう予定だ?王に詳細を報告する必要があるのだ。討伐に向かうのは明日からか?明後日からか?」

「今日中に向かう!黙って見ていろ!」

「兵は集まっていないが今日中に向かうと、そのまま報告するが良いか?虚偽の報告があれば最悪罪人として処刑されるが、本当に今日向かうという報告で良いな?」

「俺が居れば簡単に鎮圧できるんだよ!黙って見ていろ!」

「なるほどな、そのまま一言一句伝えさせてもらう。それでは失礼する。」
 騎士は立ち去る。

 あまりにもテイカーが特殊な動きをする為、王はプレッシャーを与え続けた。

 王は普段まともな行動をするリコに対してはここまで厳しい対応はしない。
 やってみてうまくいかない事は良くある。
 だがテイカーの異常な行動は予想を上回った。
 愚かな行為を続け、完全にマークされていた。

 王としても貴重な騎士を監視の為に遊ばせておきたくはない。
 本来なら魔物狩りで存分に力を振るって欲しいところではある。

 だがテイカーなのだ。




 こうしてテイカーは兵を集め、ダークスフィアを鎮圧し始める。

 だが、どんどん兵が居なくなり、8つ発生したダークスフィアの内、3つしか消滅させられず、苦戦を強いられた。

 更に元シーフ家の者が盗賊化し、テイカーの足を引っ張り始めたのだ。

「キャンプが燃えています!」

「早く消火しろ!何をやっている!」

「食料が奪われました!」

「くそ!魔物の肉を食べ飢えをしのげ!」

 テイカーの味方をする者は殺される。
 こういう噂が流れ、兵の数はさらに減る。




 騎士がテイカーの元にやってくる。

「テイカー。王がお呼びだ。すぐに来い。」

「お、俺は今ダークスフィアの鎮圧で忙しい。今は行けない。」

「王の命を無視した場合、反逆者として処刑する決定が下されるが、その回答で良いか?殺されると分かっていても行かないという回答で良いか?」

 テイカーはボロボロに疲れ果てていた。

 ストレス・空腹・に加え、夜中に起こされ、盗賊の襲撃と魔物との接触がつたえられる。

「分かった。明日向かう。」

「すぐに来いと言う命令を無視し、明日向かうという回答で良いか?」

「黙れごらああ!今行くんだよ!」

「うむ、それでよい。」





 謁見の間に行くと、ホワイト領の中核人物がすべて揃っていた。

「テイカー。ブラック領の4分の1を没収する。残りのダークスフィア討伐に努めよ。終わらなければさらに領地を没収する。以上だ。詳細の資料は後で貰え。」

「お、お待ちください!」

「取り押さえ口を塞いで下がらせろ!」

 テイカーは近衛に拘束され、謁見の間から出ていく。

 テイカーは学園と学校の利権を失った。

 ブラック家の収益3本柱の内、学校学園・貸金を失い、残りの冒険者の人的資本も流出しつつある。


 今まで力を持っていたブラック領だが、経済力を失い、急速に力を失いつつある。
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