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ハルトVSテイカー 王との会食

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 ホワイト領に隣接する北東は王都、北にはブラック領が隣接している。
 王都やブラック領との行き来はそれほどの長旅ではないのだ。

 その為王都へは3日で到着し、ジークに連れられ王都を一周した。

 表通りはおしゃれで、大きな店が並ぶが、少し裏に踏み入れるとスラムが広がる。

「表と裏の落差が激しいな。」

「ええ、やはりホワイト領の経営はまだうまく行っている方なのでしょう。」

「ああ、現状を、見てもらいたかった。王都には他の領から大量の難民が流れてくる。ホワイト領の比ではない。」

 その後すぐに王都へと入場し、部屋で待たされる。

 どうやら王がブラック領とホワイト領合同で会食をすることになっているようだ。

 王が定期的に貴族を呼び、会食を開くのはよくある事のようだ。

「これいつまで待つんだ?」

「夕食ですので、後4時間程度でしょう。」
 リコは大量に持って来た書類とにらめっこしていた。
 ホワイト領に毎日手紙を送り、内政を進めることになっているのだ。

 俺とゲンさんは暇を持て余すが、外出は禁止された。


 コンコン!
 部屋をノックする音が聞こえる。
「会食の用意が整いました。」

 俺達3人が席を促され座ると、テイカーたちもやってくる。
 テイカーの後ろに2人が続く。
 執事のカイ、後は知らない人だ。

「は!ハルトか。また汚い手を使ってホワイト領と王に取り入ったようだな!今に正体を暴いてやる!」

「テイカー、俺に腕を切り落とされたことをまだ根に持っているのか?」

「なんだと!貴様!この俺をバカにするのか!」

 テイカーが急に立ち上がるが、周りの騎士が剣に手をかけたことですぐに座る。

「王がもうすぐ来られます。みな静かに待ちましょう。」
 リコの言葉にテイカーが反応する。

「は!その通りだ!黙っていろ無能の平民が!」
 リコはみんなに言ったと思うんだが、理解できなかったのか?
 テイカーだ。理解できなかったんだろうな。

 王が入場し、席へと座る。
 全員が立ち上がり礼をする。

「座って楽にせよ。」
 王の言葉により皆着席する。

「遠慮せず食べてくれ。」
 王はそういうとあえて自ら先に食事に手を付ける。
 こうすることで他の者も食事に手を付けることが出来るようになる。

 皆が食事に手を付けると、王は斜め後ろに控える側近に合図する。
 テイカーとの決闘の時に決闘を取り仕切った人だ。

「まずはブラック領から、3点ほど。1つめが、ブラック領の学費の高さ。特に非戦闘職に対する学費が異常に高い。至急改善を求める。2つめがテイカーの女遊び。領を発展させ、領民を守る為の資金を150名以上の女性を軟禁するために使っている。至急改善を求める。そして最後、ブラック領からの難民の多さと、領の死亡率の高さだ。至急改善を求める。」

 テイカーはすぐに弁明をしようとするが、側近に止められる。

 王がゆっくりと発言する。
「この失態はテイカーの責任か?それとも執事の失態か?」

「し、執事の責任にございます!私自らが指揮を執り、至急改善いたします!」

「ふむ、聞けば執事カイは家族も居らず独り身と聞く。騎士ジークより執事に責任を取らせ、ブラック領から追放し、王都で働かせる罰を与えたいと進言があった。テイカー、もしこの判断に納得できぬようであれば、貴様に責任を取らせたい。どう思うか?」
 なるほど、執事にテイカーの怒りの矛先が向かないようにし、テイカー自らに追放させるつもりだな。
 これで執事を守れる。

 カイを見ると、感動し涙を流していた。

「執事に罰を与えるべきです!この者は無能です!」
 王と側近はテイカーの言葉ににやりと笑う。

「決まりだ!そして、改善がうまく行くかどうか騎士ジークをテイカーのそばに置き、定期報告をさせる!」

「か、かしこまりました。」

「次、ホワイト領。」

 王の指示でホワイト領への言葉が始まる。
「リコ、難民を救ってもらい感謝する。しばらく王都の内政の手伝いを頼みたい。元ブラック領の執事カイには罰としてリコの手伝いを命じる。」

「かしこまりましたわ。」

「謹んでお受けいたします。」

「次に大工ゲン、王都の大工への教育を命じる。」

「まかせな!」
 ため口か、さすがゲンさん。

「最後に料理人ハルト!騎士団の料理番を命じる。」

「謹んでお受けします。」
 俺はカイの真似をした。

「お待ちください!この者!ハルトは無能です!無能の平民にそのような大役は務まりません!」
 テイカーが話に割り込む。

 側近が口を開く。
「テイカー。人の批判をする前にまずブラック領の問題を解決しなさい!言っておくがブラック領の問題は3点だけではない!すぐに帰り改善を進めなさい!」

「皆騙されているのです!卑怯者の平民の口車に乗ってはいけません!」

 側近が合図すると、騎士に連れられテイカーは退場した。
「な、何をする!無礼だぞ!」


 バタン。

 扉が閉められると王はため息をつく。
「すぐにテイカーを帰らせ、改善に当たらせろ。ジークには厳しく監視させるのだ。」

「は!」
 側近はすぐに退出する。

「さて、皆に与えた任務に何か問題点はあるか?」

「俺、私、わたくし?が受けたにんむでございまするが・・」

「いつも通りの話し方でよい。」

 俺はすぐに口調を戻す。
「料理の条件が分からないから何とも言えない。ダンジョンや遠征に同行するのか?寮のようなところで作るのか?何人までなのか?それによる。」

「逆にどのような条件が良い?」

「まず騎士100人程度からダンジョンに同行して料理をしてみたい。食材はこちらで揃えたいが、問題は、料理を作る為の家が無い事だ。テントでも作れることは作れるが効率が落ちる。」

「食堂なら俺が作るぜ!今から始めて、材料さえあれば明日の夕方までには作れる!」

「ゲンが家を作り、ハルトは100人の騎士隊に同行して料理を作るか、それで進めてくれ。」

 こうしてゲンさんはすぐに部屋を出た。

「もう一つ、テイカーの事だが、再三言っても民を軽視し、魔物狩りを進めない。今回テイカーを呼んだのは再三の指示を無視し続けた為だ。他に良い手があれば聞きたい。」

 王の言葉に俺は反応する。
「あ!」

「案があれば何でもいい。言ってくれ。」

「テイカーのプライドを刺激する。ライバルを作り、王都への魔物の納品対決をさせて、負けたら無能扱いする。」

「うむ、良い手かもしれんな。考えておく。所でハルト、貴族の星に興味は無いか?」

「ありません!」

 こうして会食は終わった。
 俺の全力否定に王は苦笑した。

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