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第46話

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 俺はトレントをたくさん倒した後、家を建てる。
 炎魔法で積もった雪を溶かして地面を乾燥させ、石を撒いて土魔法で地面を固める。


 寄付がたくさん集まっていたのでそのお金をグランドに渡した。
 俺が作った家にみんなが住んでみんなの生活が楽になっていく。
 その姿を見ると助けている事を実感できる。

 俺が家を作れば作るほど他の案件が進んでいく。

 ……ニャリスがパーティーから抜けて俺を配信し続けている。

「ニャリス、俺はただ家を作っているだけだ。面白くないだろう?」
「気にせず続けて。再生数は伸びてるよ。特にダイジェスト動画の再生数は凄いよ!」

 やりにくい。
 魔法で雪を溶かしただけで反応があるのだ。
 最近は家を建てた後、内装は他の子に任せている。
 そのやり取りも全部配信されていてやりにくい。

 グランドとのやり取りも全部配信されている。

「後何棟作るの?」
「最初に作った分と合わせて7棟作った。後3棟だな」

 コーン!コーン!コーン!
 カンカンカン!

 雪が降る田舎の空に、大工作業をする音が響き渡る。

「……」
「……」

「あ、コメントに質問が来てるよ。最近起きた魔物調査の事件について意見を聞きたいって」
「最近ニュースを見ていない。よく分かっていないぞ?」

「簡単に言うと国から依頼された魔物調査を長年サボっていたクランがあって、魔物の繁殖を野放しにする事になったからあふれ出しが何件も起きてるよ。アクリスピちゃんとドラグさんは魔物を狩ってて、パープルメアちゃんは魔物に壊されたクリスタルサーバーの施設を直してるよ」

「皆大変そうだな。でも、3人がいるなら大丈夫だろう」
「お母さんは行かないの?」
「声がかかったら行こう。必要が無いから声がかからないだけだろう」

 俺は大工作業を続けた。




 受付嬢から連絡が来た。

『今すぐ魔物討伐を依頼します』
「急だな」

『こちらの落ち度です。イクスさんに考えがあり、あえて動いていないと思い込んでいました。今すぐお願いします』
「分かった。詳しい事はギルドで聞く」
『はい、出来るだけ早くお願いします』

 通話を切る。
 配信を見られていたのか?

「ふう、呼ばれたか」

 元奴隷と奴隷の錬金術師が集まって来る。

「「後は私達に任せてください!!」」
「後は頼んだ」

 今度はドラグから連絡があった。

『イクス、今すぐ来い!ギルドの依頼は無視しろ』
「何があった?」

『魔物の再調査でドラゴンの群れが見つかった。ドラゴンが住処を変えたせいで逃げ出した魔物が街に入って来た。ジェンダ達も連れてこい!俺が責任を取る!』
「すぐに向かう」

 通話を切ると、俺の近くにニャリスの顔があった。
 ニャリスの吐息が伝わってくる。

「……」
「……」

「盗み聞きは感心しない。そして通話をそのまま配信で垂れ流すのはもっと良くない」
「緊急事態だよ!今すぐにみんなを連れてくるね!」
「ニャリスに任せた。俺はすぐに向かう。ギルドへの連絡も頼むぞ」
「分かったよ!」

『おお!急展開だ!』
『ドラグ達がいるのは南のワイドアイランドだ』
『島か?』
『違う、陸続きだがなぜか地名がワイドアイランドなんだ』

『冒険者はワイドアイランドに集まろう!』
『拡散しようぜ!』

 俺は急いでワイドアイランドに向かった。



 ◇



【ワイドアイランド】

 街にたどり着くと、すでに魔物は倒された後だった。
 色んな地域から冒険者が集まっていたのだ。

 ニャリス効果はバカに出来ないか。

 ドラグ・アクリスピ・パープルメアが集まっている。

「終わったか?」
「いや、竜以外の魔物を倒しただけだ。厄介な事にドラゴンが街の近くにいるらしい」

 何も起きず、ドラグが皆に謝るだけの状況が一番良かった。
 だが、ドラグの勘が当たったか。

「竜を斥候してくればいいか?」

「いや、それは今やっている。何かやるとしたら明日以降だ」

 そこにボロボロになった兵士が帰還する。

 冒険者も集まって来る。

「報告します!斥候隊100人の内!96人がレッドドラゴンに殺されました!残ったのは我ら4人だけです!!」

 想定よりドラゴンが厄介だ。
 生き残った者を見ればわかる。
 歩き方だけで腕のいい斥候だと分かる。

 完全にギルドの予想を超える被害が出ている。
 ドラグが前に出る。

「レッドドラゴンの戦力は分かるか?」
「レッドドラゴンの成体(大人)が125体!レッドドラゴン・カイザーが1体です!ここに向かっています!2日後には到達します!」
「上出来だ!ゆっくり休んでくれ」
「申し訳、ありません、う、ぐうううう!ああああああ」

 男が地面に座り込み、苦しむように泣く。
 周りにいた冒険者が騒がしくなった。

「レッドドラゴンの成体が125体!おいおいおいおい!1体だけでも強敵だぜ!」
「しかもカイザーかよ!カイザーは厄災一歩手前の強さだぜ!しかもレッドドラゴンを操る力を持っている!」
「125体のレッドドラゴンだけでもやばいのにカイザーがいる事で軍のように協力して襲い掛かってきやがる!」

「だが、こっちには4英雄がいる」
「待て!カイザー1体だけなら倒せるかもしれない!だが、レッドドラゴン125体を倒す前に潰されちまうぜ!」
「ドラグ!どうすりゃいいんだ!教えてくれ!」

「今日は休め!よく寝て明日考える!!」

 有効な手は思いつかない。
 それは皆も同じか。

「そ、そうだぜ、疲れた状態じゃ勝てるもんも勝てなくなっちまう!」

 俺達4人は宿屋に入った。

「イクス、いい方法はあるか?」

「確実に勝てる方法はない。2日後なら奇策も間に合わない。切り札になりそうなエリクサーも持っていない。パープルメアは持っていないか?」

 エリクサーがあればごり押しでドラグをカイザーに当ててカイザーとの戦闘途中にドラグを完全回復させられた。

「無いわね。前作った分は王様に献上っしちゃったわ」

 王の娘、その病を治すために献上するしかなかったのだ。
 時間をかけて作ろうと思えば俺とパープルメアなら作る事が出来る。
 ただ何度も失敗して作る前提だ。
 金と時間がかかる。

 俺は1本だけ持っていたがアクアマリンのお守り用に使ってしまった。

「エリクサーをドラグが使えればマシになったんだけど難しいか」
「手に入れるつても無いわね」

「カイザー1体だけならドラグをぶつければ勝てる。だが」

「そうね、カイザー1体なら何とかなるわ。問題は125体のレッドドラゴンよ。そっちの方が厄介だわ。飛んで攻めてくるし、少し離れて炎のブレスを撃って来るわ。並みの戦士は近づく前にやられちゃうし、魔法使いには一気に距離を詰めてくるのよねえ。銃使いは火力不足ね」

 そう、レッドドラゴンは空を飛び高機動で中距離ブレスを撃ち、しかもタフだ。
 もっと言うと最初に近づいた者から焼き殺される。
 死ぬためにおとりになって接近できる者はほとんどいないだろう。
 近づくことが出来ないままやられていくだろう。

 今回の戦いは、ドラグを消耗させずにカイザーにぶつける事。

 それがカギになる。
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