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第32話

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 まずい、こいつら、余計な事は言うな!

『お母さんが焦りだしたwwwwwwwwwww』
『何だろう、さっきは感動したけど、ネタの匂いがする』


「覚えているわ。イクスが言った『俺は助けなくていい。次は困っている人を助けてくれ』は私の胸に今も生きているわ」

「そ、そろそろ配信を終わらせようではないか!!」

 ニャリスは冒険者を映して配信し続ける。
 俺を完全に無視している。

『命令したくないお母さんwwwwww』
『来た来た来た来たああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!遂に来たああああ!』

「僕も覚えているよ。『自信を持て、お前は素晴らしい人間だ。もう一度言う。お前は素晴らしい』は今でも覚えている。その言葉のおかげで今の僕がある」
「俺だって覚えている。俺が冒険者として伸び悩んだあの時、イクスは言った。『行き詰まっていない。お前は過去を超えていく。俺には分かるんだ』は俺の人生を変えた」

「も、もう終わりだ。もうやめておけ」

 まずい、ギークが語り始めた。

「俺は昔、危険を考えずに背伸びをして魔物を狩りに行った。俺は未熟で、そして、どうしようもないほど馬鹿だった。へへへ、あの時は案の定魔物に囲まれてよお。死にかけたぜ。そんな時、イクスが現れた。カッコよかったぜえ!俺とすれ違う瞬間に俺の傷が癒えていくんだ。アクアマリンが危なくなった時と同じだ。いつ回復魔法を使ったか分からなかったんだ。いや、回復魔法だったかどうかも分からない。今でも分からねえ」

「大げさだろうな。昔の事は美化されるものだ」
「いや、あれは見間違えじゃねえ!イクスはナイフを持ってアサルトアントを通り抜けた。俺にはそう見えた。だが、その後、アサルトアントが倒れていった」

 ギークが笑顔になって懐かしむように言った。

「俺は努力した。だが、努力して強くなればなるほどイクスが遠くに感じる。おかしいだろ?だが本当にそう感じるんだ。山に登ったと思ったらそこは山の途中だった、そう気づかされる。勝てねえ、勝てねえよ。イクスは4英雄の中で最高で、最強だ」

 俺はニャリスのギルドカードを一瞬で抜き取り、配信を終わらせた。

「ああああ!酷い!」
「ふう、さて!帰るとするか」

 俺はギルドを出ると、アクリスピ・アクアマリン・カノンが帰って来た

「べとべとじゃないか」
「そんな事より、アクアマリン」
「リカバリー(状態異常回復)」

 アクアマリンが俺に魔法をかける。

「おお!遂に回復魔法を覚えたか!」
「はい!覚えました。ヒール!」

 俺に魔法をかける。

「おおお!ヒールとリカバリーを覚えれば、水魔法の基本は覚えた事になる」
「リカバリー!リカバリー!リカバリー!リカバリー!リカバリー!リカバリー!リカバリー!リカバリー!リカバリー!リカバリー!リカバリー!リカバリー!リカバリー!、ふう、疲れました」

 アクアマリンは疲れるまで俺に魔法をかけてくれた。

「助かるが、俺にかけても中々治らないぞ」
「でも、少しでも効くならかけたいです」
「そうか、優しいな」

 皆ぬるぬるで、異様にテカテカしている。
 これ目当てに配信を見るファンもいるだろう、主に男性だ。

「シャワー、シテ」
「分かった」

 温水シャワーを発生させると3人がシャワーを浴びる。

 これは、美人がぬるぬるになる配信。
 伸びる。

 俺はギルドカードを取り出してチャンネル登録者数をチェックした。
 カノンとアクアマリンのチャンネルが15万越え。
 ぬるぬる効果か。

 シャワーを終わらせると温風を発生させつつ水分を除去していく。

「いい、良き」
「気持ちいいです」
「癒されますわあ」

 服が渇き、立ち去ろうとするとアクアマリンが言った。

「あの、次の訓練について、相談したいです」
「わたくしも相談したいですわ」
「……分かった」

 俺はギルドに戻った。
 まさか、帰ると言ってすぐギルドに戻る事になるとは。

 ニャリスはギークにゴレショを向けて配信を再開していた。
 ニャリスめ。
 配信が終わるとギルドカードで動画を編集している。

「まずは魔物の納品と、食事を注文した後に話を聞く」

 納品と食事を注文して席に着く。

「アクアマリンとカノンは何に迷ってるんだ?」

「わたくしは、迷っているというより何か助言があれば頂きたいのですわ」
「カノンは、魔法使い向きだからそのままでいいだろう。訓練するとしたら基本の魔法訓練がいいだろう」
「助言、感謝しますわ」

「アクアマリンは?」
「私は、水魔法をもっとうまくなりたいです」
「水魔法は出来ている。氷魔法を覚えた方がいいだろう」

「でも、私は助けられてばかりです。お母さんを治したいです!」

 今まで何度もお母さんと呼びかけていたけどついにお母さんと言った。
 心の中で俺の名前はお母さんなのだろう。

「……こう考えるのはどうだ?氷魔法を使ってもっと強くなってくれ。その頃にはアクアマリンが強くなっている。強くなった魔力で俺に魔法をかけて欲しい」

「アクア、イクスの呪いは厄介。強くなってから治した方がいい」
「分かりました。氷魔法の練習をします」

 食事が終わり、受付嬢が歩いてきた。

「凄いですよ!まずアクアマリンさん、カノンさんはCランクに昇格可能です。それに2人共チャンネル登録者数15万人を突破しましたね。更にアクアマリンさん、1憶ゴールドの返済が終わりました!」

「いい機会ですわね。実はわたくし、秘密にしていたことがありましたの」
「分かった。聞こう」

 ニャリスが素早く近づいてきた。

「そんな!あんなに頑張ったのに私より登録者数が多い!寝る時間も削って頑張ったのに!」

 ニャリスが俺の肩を掴んだ。 
 だから鼻血が出るんだ。

「おかしいおかしいおかしいよ!なんで何で何で!」
「待て待て、まずはカノンの話を聞いてからだ」
「失礼しましたわ。わたくし言うタイミングを間違えましたの。後にしますわね」
「ニャリス、年下のカノンに気を使わせるのはどうなんだ?」
「おかしいおかしい!絶対おかしいよ!」
「まずはアクアマリンの奴隷解放からだ。アクアマリン、手を出してくれ」

 俺が手を伸ばすとアクアマリンが手をすっと引っ込めた。
 奴隷解放だぞ?
 なぜ手を引っ込めた?

「奴隷解放だぞ?すぐに済む」

「何で!何でなの!なんで2人の方がいっぱいいってるの!」
「わ、分かった分かった!落ち着こう!作戦会議!作戦会議だ!!」

 カノンの秘密?何の事だ?
 
 なぜアクアマリンは手を引っ込めた?

 そしてニャリス、そろそろ落ち着け。

 
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