上 下
47 / 51

第47話

しおりを挟む
  ユキナ・メイ・ユヅキとスルようになってから、ヒマリの様子が変わった。
 いつもよりさみしそうな表情を浮かべるようになり、会話への参加も少し緊張して意識しすぎているように見えた。

 その頃から母さんが動き出す。
 毎日ヒマリと5分から10分話をするようになった。
 たまに会話が耳に入って来る。
 僕がいてもお構いなしで講義を続ける。
 しかも何日もだ。

『もしも、ヒマリちゃんがずっと恥ずかしがって積極的にいかなかったとするじゃない?そうなれば、確実に結婚できないでしょうねえ。シュウと結婚出来ない、でも、その原因は逃げ続けたヒマリちゃん自身にあるのよ?もう少し積極的に動いた方がいいと思うわ。今の恥ずかしさを受け入れて、行動するだけで、将来を変えられるかもしれないわ。ねえ、お菓子の話をしましょうか……
「お菓子、ですか?」
「途中まで聞かないと意味が分からないと思うのよねえ。でも、我慢して聞いて欲しいわあ」
「わかり、ました」

「ダイエットをしている人がいたとします。ここにお菓子がありました」

 母さんはお菓子を目の前に置く。
 よくダイエットで走っているヒマリだけに向けた話だ!

「お菓子を食べるとおいしいわよね?でも、何度も我慢すれば痩せる事が出来て、ダイエットをした自分に自信がつくわねえ。お肌も綺麗になっておなかの調子も良くなるわあ。そしてお菓子を食べる癖を無くして習慣にする事で、ダイエットのストレスも無くなるのよ。でも、多くの人はお菓子を食べちゃうのよ。理由は分かるかしらねえ?」

「理由?え、、と……うまく言葉に出来ません」
「答えはねえ、人は今お菓子がおいしく食べられる小さなメリットを大きく見て、将来の大きなメリットを小さく評価してしまうのよお。私はお菓子が好きだけど食べる習慣は無いわねえ。お金もかかるのよねえ、お菓子は」

「だから、肌がきれいなんですね」
「ありがとう。う~ん、言いたいことは、ヒマリちゃんが恥ずかしがって動かないのはねえ、お菓子を食べてダイエットしない道を選ぶ事と一緒なのよねえ。
 置き換えてみるわね。
 お菓子を食べる=シュウにアタックしない
 将来太る=シュウと結婚出来ないしシュウの子供も産めない」

 そう言って母さんが紙に書いた。

「恥ずかしいのが嫌でシュウに積極的に行かないのはねえ、今の小さなメリットを取って、将来の大きなメリットを握りつぶして、将来不幸になる道を選んでいるのよ。
 ヒマリちゃん、ごめんなさいねえ。
 苦しめたいわけじゃないのよお。
 ただ、ヒマリちゃんはルームシェアを選んだわあ。
 あともう一歩なのよお。
 たったもう一歩だけなのよお。

 何度も言うわねえ、皆魅力があっていい子よ、後は積極性だけなのよお。
 シュウは3人と寝て自分が普通じゃなくて、ヒマリちゃんがまともだと思っているわあ。
 こうなってしまえば、シュウからアタックしてくれる未来はもう無いのよお。
 ヒマリちゃんから行かないと未来が変わる事は絶対に無いのよお」

 そう言って母さんは戻っていった。
 母さん、その5分だけの会話が本質を突きすぎていて心をえぐるようだよ。
 しかも母さんは善意で言っている。
 ただ、『絶対』とか『確実に』とか言葉を意図的に強くしている。
 母さんは絶対や確実が無い事を知ってそう言っている。
 母さんの話は次の日も続いた。




 僕がいる前で母さんとヒマリが話をする。

「ねえ、知っている?一人の男性と一人の女性が結婚するルールは明治時代に作られたのよ。それより前はもっと適当だったのよお。

 所で、どうして一夫多妻制が駄目か言えるかしら?
 シュウがメイや、ユズキ先生や、ユキナちゃんと寝るのが駄目ってどうして言えるのかしら?
 全員納得して寝ているのよ?
 これを崩しちゃうと、誰かが不幸になるわよね?
 皆でスルのは誰も傷つけていないわあ。
 ヒマリちゃんもスル事で良くなれるけどその話は置いておくわねえ。
 シンプルに考えましょう。
 どうして駄目か言えるかしら?」

「……えっと、それは、分かりません」
「そうね、私も答えられないわあ。やめる事で不幸になるけど駄目とただみんなが思う事、これが道徳なのよねえ。
 なんとなく、日本のみんなが駄目だと思っているだけで、誰も理由を説明できないのよお。
 無理に理由を出そうとすれば『一人で独占しちゃ結婚出来ない人が出る!』なんて、言う事は出来るわよ?でもねえ、みんな結婚せず子供もあまり産まないまま苦しくなっているのが今の日本じゃない?
 それで日本はどんどん悪い方向に行っているわあ」

「そうかもしれません」

「例を出すわね。大学生が奨学金を使って大学を卒業してローンを返し終わるまでに20代が終わるわあ。その後に30才になってから結婚出来たとしても、そこから子供を産む、そうなっちゃうと1人産めて良い方よねえ?人によっては35才を超えるまでローンを返せなくなっちゃって、責任感から婚期を逃しちゃうわね。そうなっちゃったら結婚出来ないわよねえ?
 まじめで誠実な人は子供を産めずに、生活保護を貰わなくていい図太い人が子供を産んでその子供が増えていくわねえ。
 今の日本はパソコンのバグのようなものを多く抱えているわあ。
 皆バグを直す事はせず、『不倫した!』『隠し子を産んだ!』と言って芸能人なんかを引きずり下ろして皆不幸で貧乏で憎しみ合う社会にしているわねえ。
 意味が分かるかしら?」

「なんとなく、分かります」

 母さんの言っている事は分かるけど、ヒマリのHPはゼロだよ!
 止めよう。

「母さん、もうやめよう」
「シュウ、私はヒマリちゃんの幸せを考えて言っているのよお?」
「そうかもしれないよ、でもヒマリが疲れてしまうよ」

「分かったわあ。所で一夫多妻制や一妻多夫制を導入するニュースは見た?」
「それはそういう法案を通したいです!と政治家が言っているってだけの話だよね?」

「あら、法案は通ると思うわよ。宗教の自由や少子化の脆弱性をうまく突いているわねえ。もし通らなくても、特区で限定的に実施するなら出来ると思うわあ」
「そうなの?」

「所で、特区が出来たら、そこに引越しをしたいのよねえ。ねえ、シュウ」

 母さんはいつものにこにこした笑顔から真剣な顔になって言った。

「もし、一人の子供しか産めないなら美人四天王のメイ、ユヅキ先生、ユキナちゃん、ヒマリちゃんの中で3人を切り捨てることになるわあ。私は4人選ばれる方がいいと思うのよお。
 ただ周りの足を引っ張って気持ちよくなるだけで誰も助けない、そういう人間はより、私は5人に結婚してもらって、私と父さんがすべての矢面に立つ道を選びたいわあ」

 母さんはさらっと言ったけど、その道を選んだら母さんと父さんは多くの攻撃を受けることになるだろう。
 誰かを引きずり下ろしたいマスコミの的になるし、ネットでもバッシングされる。

 父さんも母さんもそれを分かっている。
 分かっていて、その道を選ぼうとしているのが分かった。

「最後に言わせてほしいわあ。ヒマリちゃん、行動すればそれだけで幸せになれるわあ」

 そう言って母さんは去って行った。
 母さんは、子を守る母のような顔をしていた。
 母さんは、本気だ。




 あとがき
 常識とは違う理屈だと納得できない方もいると思いますが、シュウの家族である山田一家は、表には出していませんが

『貧乏から富裕層に昇ろうとしている行動する者』

 の設定なので、僕を含めたほとんどの貧乏人とは違う考えで動きます。
(僕を含めた多くの人が貧乏人ですよ。預金や有価証券3000万持ってない人は貧乏なカテゴリーらしいです)

 お金持ちになる人の性格特性

・人の批判に時間を使わず自分で動く事に時間を使う
・行動して幸せを作っていく
・時間を大切にする
・子供への金融教育や人生への教育には時間を使う

 お金持ちになりそうな人間はそういう原理で動くと思っています。
 後、ラブコメはファンタジーだと思うんです!

 ラブコメ=非日常=ファンタジー=ありえない事が起こる。
 完璧すぎるアリバイなのです!キリ!

 ではまた!



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

幼馴染は何故か俺の顔を隠したがる

れおん
恋愛
世間一般に陰キャと呼ばれる主人公、齋藤晴翔こと高校2年生。幼馴染の西城香織とは十数年来の付き合いである。 そんな幼馴染は、昔から俺の顔をやたらと隠したがる。髪の毛は基本伸ばしたままにされ、四六時中一緒に居るせいで、友達もろくに居なかった。 一夫多妻が許されるこの世界で、徐々に晴翔の魅力に気づき始める周囲と、なんとか隠し通そうとする幼馴染の攻防が続いていく。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです

狼蝶
恋愛
 転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?  学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?

処理中です...