奪われ続けた少年が助けたおばあちゃんは呪いをかけられたお姫様だった~少年と呪いが解けたお姫様は家族のぬくもりを知る~

ぐうのすけ

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第21話

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「か、か、カモンが悪い」
「私は理由を答えるように言った!それが理由になるのか!!」

 ギャラリーも同調して騒ぐ。

「そうだそうだ!」
「ゴリ、あんた最低だな!」
「こんな小さい子供をいじめるなんて、許せないわ!!」
「人のせいにするなよ!」

「皆さん、お気持ちは分かります。1つ1つ整理していきましょう。ゴリ、お前はなぜカモンに暴力を振るった?理由を答えるのだ」

 完全にクラッシュが正義の味方で、ゴリ社長が悪者になっている。
 クラッシュの管理にも問題はあったのに、ゴリ社長とその社員がすべて悪く見えるように映像が作られていた。
 僕はクラッシュが怖くなった。

「あ、あいつは、そ、外面が良いんだ」
「ほう、カモンは映像を見る限りまじめに働いていた。外面がいいと、その情報はお前の会社以外からは一切入ってこなかったのだが、その回答でいいのだな?」

「か、カモンは、あ、あれだ。ノービスで、つ、使えなかった」
「本気で言っているのか!会社で作ったポーションをノービスの方に買っていただくことで我らの会社は成り立っている!取り消せ!その発言は許せん!!今すぐノービスの方全員に謝るのだ!!」

 皆が同意するように叫ぶ。
 8割の人はノービスなんだ。
 クラッシュの発言でゴリの印象は一気に悪くなった。

 クラッシュは自分の評判を上げてゴリ社長を潰す気だ。
 でも、クラッシュはノービスを見下しているけど、ここでは絶対に悪く言わない。

 こうしてクラッシュとゴリの話が続いた。



 ◇



 ゴリは何度も責められ、論破されて焦り続け、失言を続けた。
 クラッシュに操られるようにギャラリーはゴリに怒号を浴びせる。
 最後にはクラッシュに剣を抜いて襲い掛かった。

「殺すぞごらあああ!!」

 クラッシュはゴリの攻撃を躱しゴリのみぞおちにパンチを叩きこんだ。

「ぐべええええええ!!」

 ゴリは数メートル吹き飛ぶ。

「そう言う所に問題があるのだ!オーナーの責任としてブラックポーションの社員全員を解雇する!異議がある者は訴え出ても構わん!!」

 そうか、クラッシュはいらない社員とゴリを解雇したかったんだ。


「話は変わるが、カモン君、今までブラックポーションの不正に気付くことが出来ず申し訳なかった。賠償を支払おう。もしカモン君が良ければ私がオーナーを務める他の会社に改めて入社して欲しい」

 そう言ってクラッシュが僕に向かって頭を下げた。
 
「ぼ、僕はもう、冒険者としてやっていきます。会社には入りません」
「そうか、すまなかった」

 クラッシュはいらない社員を解雇するために僕がいじめられているのを知っていて知らない振りをしていたんだ!

 そしてみんなに見えるこの場所を使ってクラッシュは正義の味方になっている。
 人を辞めさせているのにいい人間に見られているんだ!

 いらない社員にお金を払わず辞めさせるために映像をみんなに見せて証拠を突きつけたんだ!

 リストラなら会社から退職金を払わないといけない。
 でも、不正をした人を解雇するならお金を払わなくていい。
 クラッシュは賞賛を浴び、笑顔で手を振っていた。

 人を悪者にして辞めさせているのにクラッシュは善人に思われている!

 ああ!
 クラッシュが言っていた!
『ペンは最強魔法よりも強い』って!それはこういう意味だったんだ!
 

「クラッシュ様!最高!」
「さすがポーション王子!」
「正義は勝つってか!」

 クラッシュに操られているみんなを見て寒気がした。
 ペンは、最強魔法より強いのかもしれない。
 ペンじゃないけど、高い映像装置をクラッシュが買い揃えた理由が分かった。

「皆さんにお見苦しい映像を見せてしまいました。我々は今後体質改善に取り組んでいきます!それでは失礼しました」

 クラッシュが拍手をされながら帰っていく。

 ゴリが起き上がり、ポーションを飲んだ。

「お前のせいだ!カモン!お前のせいだぞ!」

 ゴリは周りから非難される。

「こんな小さい子供に八つ当たりかよ!」
「お前には人の心が無いのか!」
「だから解雇されるんだよ!」

 取り巻きの社員は危険を感じてこの場から逃げ出していった。

「カモンんんんんんん!決闘だあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 プロテクタが前に出る。

「ゴリ、お前よりカモンの方が強い!ここで負けて更に恥をさらす事はねえ!逃げ帰っときな!!」

 プロテクタの発言で広場の流れが変わった。
 今までゴリが僕をいじめるのは酷いと言う声が多かった。

 でもプロテクタの言葉で、僕がゴリをぶっ飛ばす所が見たいと言う声が多くなっていく。
 特に男の人だ。

 皆試合や決闘が好きだ。
 こういう娯楽にみんな乗っかってしまう。
 みんなお祭りが好きだからプロテクタ、煽っちゃ駄目だよ!

「カモン!やっちまえ!」
「ゴリに目に物見せてやれ!」
「プロテクタが言ってるんだ!カモンが勝つ!」

「いや、あのですね」
「「「カ・モ・ン・!カ・モ・ン・!カ・モ・ン・!カ・モ・ン・!カ・モ・ン・!カ・モ・ン・!カ・モ・ン・!カ・モ・ン・!カ・モ・ン・!カ・モ・ン・!」」」

 声が大きくなっていく。
 プロテクタがニヤッと笑った。

「そうは言ってもゴリが殺されちゃいけねえ!俺が審判を務める。決闘じゃねえ!これはあくまで試合だ!」

「試合なら安心ね」
「プロテクタがついているなら大丈夫よ」

 女の人も反対意見を言わなくなった!
 少ない反対の声も消えていく。
 逃げられない!
 もう、逃げちゃ駄目な空気になってる!
 隣にいたティアが言った。

「大丈夫かな?」
「大丈夫だ!いざとなったら俺が止める!!みんなも試合を見たいよな!!どうだ!?答えてくれ!!!」

 プロテクタは皆を完全に煽っている。
 自然に中央広場の中央が空いていき、ゴリは僕の事を口角を上げながら睨んでいた。

 ぼ、僕は言おう。
 NOと言うんだ。

「カモンんんんんんん!逃げたらどうなるか分かってんだろうなあああ!!!」

「カモン、ここでゴリへの恐怖を捨てろ!鬼人化を使いこなせ!お前は鬼人化を制御できる!ぶっつけ本番になるが俺を信じろ!俺の言った俺の言葉を信じてくれ!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」

 プロテクタが熱く言った。
 僕の為でもあるのか。
 プロテクタは僕の為に言ってくれた。

 僕は、首に下げた母さんの形見を見つめる。

 そして、ゴリの前に立った。
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