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第183話
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昼休憩に戻ると置きっぱなしにしていたスマホから連絡が来た。
無視をしようかと思ったが何度もしつこく連絡が来る。
スマホを開くと戻ってくるように連絡が来た。
何を返してもとにかく戻って欲しいとしか返ってこない。
何があったかは分からないが、戻った方が良いのだろう。
「神殿さん、戻れますか?」
頭に声が響いた。
『後7日で戻れます』
「それでよろしくお願いします」
『分かりました。7日後にハザマを消滅させます』
俺は7日後、世界に帰って来た。
ヒトミが俺に抱き着いた。
ユイ・いのり・レイカさん・ユズキ先輩が俺を待っていて、科学者は10人に増え、皆が拍手をした。
そして何故か配信用のドローンが飛んでいる。
「ずっと待ってました! お帰りなさい」
「……ああ、ただいま」
その時に気づいた。
言葉がうまく出てこない。
言いたいことはいっぱいあった、でも、会話がうまく出来ない。
声は出る、でも、会話がうまく出てこないのだ。
「悪い、うまく、言葉が出てこない」
みんなが悲しそうな顔をした。
『半年以上引き籠ってるのと同じだからな』
『精神に異常が無いか自覚できない場合もあるで』
『フトシ、お疲れ様』
『休んだ方が良い』
『みんなの事は気にせず休んでくれ』
レイカさんが大きな声で言った。
「様々な方と議論をした結果、フトシ君の安全を考えていったん戻って貰う決断をしました。精神の状態、体への影響、何が起きるか分かりません! フトシ君を失う事は世界の損失でもあります! ゆっくりと休んで、精神と体のチェックをして貰い、その結果を見定めます!」
「話せないわけではないです」
「フトシ、いつもならもっと言葉が出てくるよ。自分の変化には自分では気づけないから」
ユイの言う通りなのかもしれない。
自分の事を知るのは難しい。
自分の事を客観的に見る能力があれば、俺のスキルはもっと早く強くなっていた。
「桃太郎さんから連絡があります。城のスキルはまだ完成していないそうです」
「そう、なのかも、しれない」
「それと今回は皆さまに向けて連絡があります。神殿を制御していた妖精が解放されました」
妖精が飛んで俺の目の前で止まった。
薄紫色の長い髪と白いワンピース。
見た目は18才ほどで手のひらサイズだ。
良く出来たフィギュアのようにも見える。
『おおおおお! 欲しいわ!』
『マジでかわいい! 天使すぎる!』
『何で解放されたんだ?』
「初めまして☆ 妖精ちゃんです☆」
「神殿の、声、でも、雰囲気が違う」
「神殿を管理していた時は正確な言葉を使わないと神殿から注意が来るんです☆」
ハイテンションでいつもそんなに笑っているのか?
「名前が妖精ちゃん?」
「名前をつけて契約してください」
「俺で、良いのか?」
「神殿ハザマで戦ったフトシだけが私と契約できます☆」
「名前を、つければ、それでいいのか?」
「ですです☆」
妖精ちゃんが期待のまなざしで俺を見た。
「じゃあ、メルヘンで」
「あれえ? バカにして」
「ない」
「適当につけて」
「ない」
「本当はバカに」
「ない」
「いいですよ、今から私はメルヘンです☆」
メルヘンと話をして少しだけ、肩の力が抜けた。
自分が思っているより、俺は緊張していたようだ。
何気ない会話。
笑顔で見つめるみんな。
少し寒くて白く積もった雪や森。
それでも俺の心が温かくなった。
無視をしようかと思ったが何度もしつこく連絡が来る。
スマホを開くと戻ってくるように連絡が来た。
何を返してもとにかく戻って欲しいとしか返ってこない。
何があったかは分からないが、戻った方が良いのだろう。
「神殿さん、戻れますか?」
頭に声が響いた。
『後7日で戻れます』
「それでよろしくお願いします」
『分かりました。7日後にハザマを消滅させます』
俺は7日後、世界に帰って来た。
ヒトミが俺に抱き着いた。
ユイ・いのり・レイカさん・ユズキ先輩が俺を待っていて、科学者は10人に増え、皆が拍手をした。
そして何故か配信用のドローンが飛んでいる。
「ずっと待ってました! お帰りなさい」
「……ああ、ただいま」
その時に気づいた。
言葉がうまく出てこない。
言いたいことはいっぱいあった、でも、会話がうまく出来ない。
声は出る、でも、会話がうまく出てこないのだ。
「悪い、うまく、言葉が出てこない」
みんなが悲しそうな顔をした。
『半年以上引き籠ってるのと同じだからな』
『精神に異常が無いか自覚できない場合もあるで』
『フトシ、お疲れ様』
『休んだ方が良い』
『みんなの事は気にせず休んでくれ』
レイカさんが大きな声で言った。
「様々な方と議論をした結果、フトシ君の安全を考えていったん戻って貰う決断をしました。精神の状態、体への影響、何が起きるか分かりません! フトシ君を失う事は世界の損失でもあります! ゆっくりと休んで、精神と体のチェックをして貰い、その結果を見定めます!」
「話せないわけではないです」
「フトシ、いつもならもっと言葉が出てくるよ。自分の変化には自分では気づけないから」
ユイの言う通りなのかもしれない。
自分の事を知るのは難しい。
自分の事を客観的に見る能力があれば、俺のスキルはもっと早く強くなっていた。
「桃太郎さんから連絡があります。城のスキルはまだ完成していないそうです」
「そう、なのかも、しれない」
「それと今回は皆さまに向けて連絡があります。神殿を制御していた妖精が解放されました」
妖精が飛んで俺の目の前で止まった。
薄紫色の長い髪と白いワンピース。
見た目は18才ほどで手のひらサイズだ。
良く出来たフィギュアのようにも見える。
『おおおおお! 欲しいわ!』
『マジでかわいい! 天使すぎる!』
『何で解放されたんだ?』
「初めまして☆ 妖精ちゃんです☆」
「神殿の、声、でも、雰囲気が違う」
「神殿を管理していた時は正確な言葉を使わないと神殿から注意が来るんです☆」
ハイテンションでいつもそんなに笑っているのか?
「名前が妖精ちゃん?」
「名前をつけて契約してください」
「俺で、良いのか?」
「神殿ハザマで戦ったフトシだけが私と契約できます☆」
「名前を、つければ、それでいいのか?」
「ですです☆」
妖精ちゃんが期待のまなざしで俺を見た。
「じゃあ、メルヘンで」
「あれえ? バカにして」
「ない」
「適当につけて」
「ない」
「本当はバカに」
「ない」
「いいですよ、今から私はメルヘンです☆」
メルヘンと話をして少しだけ、肩の力が抜けた。
自分が思っているより、俺は緊張していたようだ。
何気ない会話。
笑顔で見つめるみんな。
少し寒くて白く積もった雪や森。
それでも俺の心が温かくなった。
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