痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ

文字の大きさ
上 下
178 / 191

第178話

しおりを挟む
 俺は毎日レギオンを倒した。
 倒しても倒しても被害が増えていく。

 ゼンさんやゴウタさんは新たにスキルに目覚めた希望者の訓練を引き受けた。
 政府から戦闘訓練を受けて冒険者が多い地域に住めば生存率が上がるデータが出た。
 政府を批判していた国民も大分意識が変わった。

 昔のように守ってもらう時代ではなく自衛の時代になったのだ。

 ヒトミには魔石を食べて貰い、魔法の弾丸を作って貰っている。
 みんながレギオンとの戦い方に慣れてきた。
 思いつくことは全部やった、神殿からハザマに入る以外は全部だ。

 高校3年になり、学校に通わなくなり、レギオンを倒して魔石を食べ続けるがスキルに変化が無い。
 能力値は上がるがスキルが進化しない。

 俺のスキルならまとめてモンスターを倒せる。
 俺は雑魚狩りが得意らしい。
 ちまちまレギオンオスまで走り回って倒しに行くのはもやっとしていた、そのもやもやが募り、いらだちに変わり、神殿のハザマに行きたい想いに変わっていく。
 そしてその思いは日に日に増していた。

 日本のみんなを助けたいとかそういう想いよりもまとめてレギオンを倒したい想いが強いのだ。
 多分俺はおかしいのかもしれない。

 テレビをつけるとまたレギオンのニュースだ。

『村にレギオンが現れました。多数の被害が出たと思われますが、今回も被害者数は分かっていません』

 テレビの画面で子供が泣いていた。
 これはさすがに可愛そうだ。

 ……でもよく考えるとおかしい。
 マスコミは政府の批判を促すような報道をしているが、問題の根っこは政府が緊急事態宣言を出して都市部に移住を促しているのにいまだに移住を拒む村の大人に責任があるように思う。

 避難用の仮設受託は政府が用意している、それでもマスコミのコメンテーターは、『過疎地域をこのまま消滅させて予算を削減しようとしている』とか『仮設住宅の湿気が酷い』と散々だ。

 日本には余裕が無い、限られた予算でみんなを生かす必要がある。
 となれば、過疎地域の役所とか、そういう利権を村の消滅によって淘汰していく必要がある。
 村の維持は東京なんかの都会から成長のリソースを吸い取ってばら撒くことで成立していた。
 今政府は珍しく予算の削減を行って持続可能な運営を目指している、珍しくまともな事を言っている。

 なんだろう、どこかで見た事が……ああ、そうか、マスコミはお金が無い親に『おもちゃ買って! 買って買って!』と駄々をこねる子供と同じだ。
 しかも親に金が無い事を分かった上で騒いでいる分子供よりたちが悪い。
 自分で出来る事をすればいいのに。

 ……自分で出来る事、俺が神殿のハザマに行く事か。
 結局色々考えて、その結論にたどり着く。
 他の事を考えていても最後はそこに行きつくのだ。

『出来るのにやらないのは卑怯だ』

 それが結論だ。


 神殿に行ってみよう。
 どうするかはまだ決めていないけど、神殿と話をしてから決めよう。
 神殿と対話をする為レイカさんの車に乗った。

「フトシ君、神殿が開くハザマに行きたいの? まだ世界中の誰も行った事が無いのよ? 無理してない?」
「まだ、分かりません。神殿と対話をしてみて、それで決めたいです」

「今分かっているのは、
 ハザマを作るのも消滅させるにも7日かかる。
 モンスターがどの程度発生するかはやってみないと分からない。
 ……自由に帰る事が出来なくなるのよ?」

 神殿ハザマはざっくり言えばこちらの世界に侵攻しようとしていたモンスター側と同じ条件になる。
 いつものハザマ狩りと違って気軽に出入り出来なくなるのだ。

「はい、対話をしてそれから決めます」
「分かったわ」

 俺は神殿に到着し、配信を止めて貰い、集中して対話をした。

「神殿さん、もし僕がハザマに行くとしたら、日本に出てくるレギオンはどの程度減らせますか?」
「やってみなければ正確な数字は分かりません。ですが方法はあります。この神殿結界を世界から切り離し、日本だけに結界を張るよう再構築したとします。やってみなければ分かりませんが、ざっくり、被害を3割ほど軽減できる予想です、ですがそれはあくまで予想にすぎません」

 日本だけに結界の範囲を絞っても予測は3割程度……十分じゃないか。
 俺1人で日本の3割も減らせるなら、十分だ。
 むしろ俺1人で3割も減らせる、十分多い。

「僕が死んでも、モンスターはこの世界に溢れませんよね?」
「フトシ君が死んだ場合、ハザマが消滅してレギオンは向こうの世界に戻ります」

 いつも消滅させているハザマの逆バージョンか。
 都合がいい。

「物資を補給したらハザマに行きたいです」
「結界で日本だけを守るように再構築しますか? ただし世界に溢れたモンスターは海を伝って日本に来るでしょう」
「日本の政府が決めるまで待ってほしいです」

「命を危険に晒してハザマに挑む戦士にしか決定権はありません」

 日本だけを異世界から守っても他の国に出て来たモンスターが海から攻めてくる。
 それでもいい、自分の国の事は自分でやる、それがいい。
 それが自然だ。
 多分、グローバル化された世界は終わろうとしている。
 もっと言うとその地域の事は地域の力で回していくようになるだろう。

 俺は世界から批判されるだろう、でも、しばらくハザマに籠るから直接何かを言われる事も無い。
 自分で何もしないで口だけ出す世界の批判者は卑怯者だ。
 みんながスキルに目覚めつつある今、皆を助けたい人は地道にモンスターを狩るか戦闘訓練を受けている。
 無視する、卑怯者は無視でいい。

「日本だけを守るように結界を再構築してください」
「分かりました。結界再構築の用意をします。あなたがハザマに入った瞬間に結界は再構築されます」

 レイカさんは色々な表情が入り混じったような顔で言った。

「……やっぱり、行くのね」
「はい、物資の補給をお願いします」

 こうして、俺が神殿のハザマに行く準備が進んだ。
 レイカさんが自分の首をかけて失敗の責任を取る事を決めた。
 総理は結界の再構築と俺のハザマ狩りを世界に向けて配信する事を世界に公開して世界からバッシングを受けた。
 だが日本のみんなから俺は歓迎されていた。

 総理は……何をやってもバッシングされるのか。


 出発の日、皆が見送りに来た。
 スズメさんが俺の手を握る。

「帰ったら、結婚」
「分かりました。帰る事が出来たら結婚ですね」
「絶対、帰って来るって言って」
「……絶対に帰ってきます」

 レイカさんが俺にキスをした。

「レイカ、さん」
「私は、フトシ君が帰ってきたら、モンスター省を辞めるつもりよ。私も、フトシ君と結婚したいわ」
「分かりました。まずは戻ってからですね」

 ユズキさんが俺の手を握った。

「私も、帰ってきたら結婚したいよお」
「ユズキさんは、まだ話をした事があまりないので、お互いに話をしてから決めましょう」
「そ、そんなあ! 私だけ!」
「急に結婚しようと言われても、正直困惑しますよ」
「そ、そうだよね、帰ってきてね?」
「……はい」

「私だけ結婚が決まってないかあ」
「まずは、戻ってからです」
「そうだねえ。戻ってから、話をしようね」

 

 俺はその日、世界で初めてハザマ神殿に行く。

 俺はその日、ファーストペンギンになる決意をした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

処理中です...