上 下
143 / 191

第143話

しおりを挟む
「四天王よ! 我の命に従え!」

 パチン!

「「御意のままに」」

 指を鳴らすと後ろの4人がレンを押さえた。

「フトシ、ちょ、ちょっと!」
「くっくっく、受け取らないか、仕方がない。今からショーを始める!」

 俺はジョークか本当か分かたないノリで配信を続けた。
 うまく演技し過ぎてはいけない。
 あれ? これコント的な感じ?
 そう思わせるクオリティの演技を続ける。

 最初は配信無しで強引に魔石を食べさせようと思ったが、レイカさんに反対されて今のプランに仕上がった。
 レイカさんが動画でレンのドクメンタリー動画をアップした事でモンスター省に『レンに魔石を食べさせて』と抗議の電話がかかって来た。
 そしてレイカさんはモンスター省に怒られた。

 レンに魔石を食べさせ、レイカさんの状況を改善する為配信で強引に魔石を食べさせ嘘か本当か分からない空気を作る。

 アイテムボックスから魔石を取り出した。
 そしてワイングラスに魔石を入れる。
 ワイングラスに入れた魔石をレンに食べさせていく。
 レンが顔を逸らそうとした瞬間にシンさんが顔を押さえた。

「魔王にして暴食の王たる我が強制的に施しを与えよう!くっくっくっく!」

 レンの口に魔石を詰め込んでいく。

「だめだ!これふぁ!フグ!」

『これマジの奴じゃね?』
『演技だろ。流石に配信で強引に食べさせるとかありえないだろ』
『フトシの演技はワザとらしい、でもレンの演技がうますぎる。強引に食べさせられている感が凄い』

 演技と思わせてマジだ。
 この状態でクレームを入れてきた人間が、馬鹿だと思わせるように持って行く。

 更にレンに食べさせてしまえばこっちのものだ。
 レンが騒げば俺達が強引に魔石を食べさせた事になってしまうからレンは騒げない。
 レンは優しいからな。

『演技のわりに魔石を食べさせるのが遅くね?』
『絵が地味だよな』
『でも地味な絵がだんだん面白くなって来た』
『魔石を口に詰めるのをてこずる魔王様で草』
『演技の上手いレン君、大根なフトシ君で草』

「ぶっつけ本番だったんでリナさん!食べさせるのを手伝ってください。早く終わらせます」

『フトシが素に戻ってるがなwwwwww』
『魔石を食べさせるのはぶっつけ本番だったか』
『魔石は高いからね』

 リナさんが口に手を突っ込んで強引に開かせた。
 俺は魔石を詰め込んでいく。

『えええ!そんなに詰め込む!』
『レンは上級になれるんじゃね?』
『技量の高いレンなら間違いなく上級到達だ』
『金持ちのスキル持ちが魔石を食べるのとはわけが違う。技量の高いレンが魔石を食べればパワー不足が解消される』

 魔石を詰め終わると俺は自分で拍手をした。

 パチパチパチ!

 周りにいたみんなも拍手をする。

「今日はフトシ劇場を最後までご覧いただきどうもありがとうございます!  レイカでした!」

 レイカさんは素早く配信を終了させた。

「おし、帰るか」
「ええええええええええ!」

 俺は違う意味でとても刺激的な体験をしてマイクロバスで帰路についた。

 ヒトミの機嫌が悪かったが、『次は2人で旅行に行こう』と言ってなだめた。



 家に帰り、学校に行くとレンが皆に囲まれていた。

「レンはすっかり有名人だな」
「フトシ君の方が有名人ですよ?」
「フトシ、すぐにわかるよ」

 みんなが集まって来た。

「フトシも来た!」
「フトシ君! お疲れ様、大変だったね」
「色々大変だったな、寝てないんだろ?」
「フトシ、お前はやっぱり凄いよ」

「予想外に反応が良いな」
「フトシ、レンを助けて、安心できたか?」
「ああ、心が軽くなった」

 そうだ、俺は、あの1年前の夏の日からレンを助けたいと思っていた。
 1年かかったか。
 いや、たった1年で出来た。

 魔石を集めるのは得意だ。
 ゴブリンを倒すのさえ苦戦していた1年前からは比べ物にならないほど魔石を簡単に集められるようになった。

 後は、冒険者試験と、砦の進化を待つばかりだ。

「ユイ、ヒトミ、良い新学期になりそうだな」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

俺だけ異世界行ける件〜会社をクビになった俺は異世界で最強となり、現実世界で気ままにスローライフを送る〜

平山和人
ファンタジー
平凡なサラリーマンである新城直人は不況の煽りで会社をクビになってしまう。 都会での暮らしに疲れた直人は、田舎の実家へと戻ることにした。 ある日、祖父の物置を掃除したら変わった鏡を見つける。その鏡は異世界へと繋がっていた。 さらに祖父が異世界を救った勇者であることが判明し、物置にあった武器やアイテムで直人はドラゴンをも一撃で倒す力を手に入れる。 こうして直人は異世界で魔物を倒して金を稼ぎ、現実では働かずにのんびり生きるスローライフ生活を始めるのであった。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...