上 下
140 / 191

第140話

しおりを挟む
【ゼンさんのハザマ施設】

「着いたわ。ゼンさんも来たことだし、すぐに配信を始めるわね。2人で並んでください」

「はい、今日はハザマの名物オーナー、善行成ゼンユキナリさんのハザマを」
「フトシ君! 来てくれてありがとう! 報酬は弾ませて貰う!」

 ゼンさんが会話に割り込んできた。


「いや、報酬はいいのでハザマを消していきますね」
「はい、ゼンさんはハザマを閉める決断をしました。ハザマ施設を閉める為にはすべてのハザマを消滅させる必要があります。そこでフトシ君にはハザマを消していってもらいます」

「よろしくお願いします」
「今、フトシ君は砦のスキルを使えません。それでもハザマ狩りをやりたいと言ってくれた理由を教えてください」
「レンに魔石をあげたいので、今貯めています」

「頑張ってください!」

 俺はオーガのハザマに入って金棒を伸ばして瞬殺し、魔石を拾った。
 そしてボスの居る拠点の扉を金棒で破壊して真っすぐボスに金棒を伸ばすとボスオーガが魔石に変わった。
 俺は魔石をアイテムボックスに入れると景色が変わりハザマに戻って来た。

「おし! とりあえず後99回!」
「あ、いえ、無理はしないでくださいね」
「次に行きます!」
「無理はしないでくださいね!」

 俺は中級のハザマを全て消すまで動き続けた。


 ◇


「終わりましたか、もう夜中の2時ですよ。あんまり無理をしないでください」
「大丈夫です」
「フトシ君、どうしてここまでしてくるんだ? 助かるが、眠る時間を削っているだろう?」

「補足しますね、フトシ君はマスコミが毎日のように家に来るため眠れなくなっています」
「はい、元々夜型になってしまっていたので大丈夫です!」

「だが、普通ではありえないペースだ。砦無しでもこれとは」
「フトシ君には想いがあるのよね?」


「ゼンさんは立派な人だと思ったからです。他のオーナーは利権を守る為にハザマを閉める事に反対したり、訴えたりしています。自分が損をすると分かって、それでもみんなが良くなる決断をするのは中々出来る事ではないと思います」

「フトシ君は報酬を受け取りたくないのよね?」
「はい! ゼンさんは自分が損をしても、皆の為に動こうとしています! 応援したかったんです!」

 ゼンさんは上を向いて目頭を押さえた。
 周りのスタッフも拍手をした。

「助けてもらって、その上感謝までされるとは思わなかった。ありがとう! 本当にありがとう!」

 ゼンさんが泣きながら俺と握手をした。

「皆さん、ご視聴ありがとうございました!」

「フトシ君、スマホの連絡ですか、出てもいいですよ」
「……ゴウタさんからです。俺が世話になったハザマのオーナーです。ハザマを閉めたいから手伝って欲しいと」

「行きますか?」
「はい、連れて行って欲しいです」
「今日はダメです。一旦家に帰りましょう」
「いや、マスコミが来るので、家はちょっと」
「マスコミですか、分かりました。ビジネスホテルに行きます」

 俺は、レイカさんに送って貰ってホテルで眠った。
 次の日配信をしながらゴウタさんのハザマを消すと悲しい気持ちになった。

 このハザマには思い入れがある。

 ダイエットをした記憶

 ゴブリンを倒せるようになった記憶

 ゴウタさんが面倒を見てくれた記憶

 最後のハザマを消すとゴウタさんが俺に声をかけた。

「そんなに悲しい顔をするな」
「ゴウタさんは、悲しくないんですか?」
「思い入れはあった、でも、時代の流れだ、仕方がない」
「ゴウタさん、今の気持ちを詳しく聞かせてください」

 ゴウタさんは俺を向いて話始めた。

「フトシ、思い入れはある、だが、ほっとしている自分もいる。雇用を守り、スタッフの教育をして、問題を解決する。責任もそれなりにあった、だからな、本心からほっとしている気持ちもある」

 ゴウタさんは俺を気にかけている。
 ユイに似ている。
 俺は思わず頭を下げた。

「ゴウタさんには助けてもらいました! そのおかげで一人でモンスターを狩れるようになりました! ありがとうございます!」

 こうして、配信は終わった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

処理中です...