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第85話

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 レイカさんの見学を断った後俺は眠った。


 次の日、柔らかい感触で目が覚めた。

 柔らかい、なんだ?
 
「ユイ?」

 ユイのお尻!
 胸!
 なんで俺とユイが抱き合ってるんだ!

「ううん、フトシ?……え?な、何で!」

 ユイが顔を背けた。

 周りを見るとリナ先輩とユヅキさんがにこにこと笑っていた。
 その横でレンは少し困ったような表情を浮かべていた。

「ユイ、おはよう」
「リナ、先輩ですか?」
「うん、喜んで欲しくて」
「リナ先輩!」

 ユイがリナ先輩の顔に枕を投げつけた。
 リナ先輩の顔に枕が当たるが、ケロッとしたままユイの頭を撫でた。
 ユイはを恥ずかしがらせると怒る。
 だが枕を投げるとは思わなかった。

「ごめんごめん、やりすぎた。食事が来るから」
「アマミヤ先生、レイカさん、起きてくださいよお」

 今日のユイとレンは意外だった。
 レンがいたずらを止めないのも予想外だ。

 食事が来て、ユイの顔を見るとまだ顔が赤い。
 食事が終わってもずっと赤い。
 恥ずかしそうにしている。
 この話題には触れたら駄目な気がする。

 今日からハザマ狩りだ。
 レンは納品金額勝負。

 でも俺は納品金額を競う事も無い。
 俺は初級冒険者レベル7だ。
 素材はヒトミに渡すしビリで構わない。
 でもみんながどう思っているのか聞いておこう。

「ユイとアマミヤ先生に相談があります。納品金額がビリになってもいいですか?魔石はすべて食べたいし、他の素材はヒトミに渡した方が利益が大きくなるので」
「私は大丈夫だよ」
「大丈夫だ。自分の成長を優先しても構わないし、アオイに素材を渡しても問題無い。それに、オオタは初級冒険者で私は教師だ、その辺の事情は説明してある」

 鬼ごっこのみそみたいで気が楽だ。
 俺達はハザマに向かった。


 ◇


 帰ると、旅館の入り口にモニターが設置されていて、レンのパーティーは納品金額がぶっちぎりの1位で、喧嘩を吹っ掛けたイノシシの牙は下の上ほどの順位だった。

 3人だけのパーティーでぶっちぎるって凄くね!?
 当然俺達はビリだ。

「ま、まだ1日目だからな! 勝った気になるなよ!」

 そう言ってイノシシの牙は去って行った。
 良きかな良きかな。

 俺は近くにいた生徒にイノシシの牙の事を聞いた。

「どうも、いい天気ですね」
「ナンパですか?」
「いえ、イノシシの牙の事を知りたくて、雰囲気が他の生徒と違って気になってそういう事、そうね、イノシシの牙は、親がお金持ち、かな」
「あ~、なるほど。ありがとうございます!」
「いえいえ」

 そうか、親に魔石を買って貰って貰えたのか。
 能力値やスキルはあるし装備も高価だ。
 けど立ち回りや技量が低いから納品金額が少ない感じで努力したくない系なんだろう。

 その日はゆっくり眠った。
 だが次の日の朝に事件が起きた。


 全員が武装状態で旅館前に集められると、他校の先生が説明をする。

「この村にスケルトンが現れ、生徒が剣で斬られる被害が出ています。なお、ハザマ施設からのモンスターが出て来ていない事はチェック済みです。つまり、ハザマ施設以外のどこかでハザマが発生したと考えるのが自然です。43年前に突如世界の至る所にハザマが現れて、その対処が分からなかったあの時、ハザマを放置した結果、多くのモンスターが地上に溢れ、甚大な被害を出しました」

 ざわざわざわざわ!

 向こうの世界の事は分かっていないが仮説はある。
 霊界、魔界、地獄やあの世と言われる精神世界であるとの仮説が有力だ

 ハザマを放置すればハザマにいるモンスターがこの世界に出てくる。

「ここにいる冒険者皆で山を探索します!もちろん報酬は別途支払われるのでその点は安心してください……少し失礼、はい、はい、分かりました。皆さん!たった今ハザマの位置が特定されました!まだフェイズ2には移行していません!」

 いつものハザマはフェイズゼロだ、それを放置するとフェイズ1になる。
 今はフェイズ1、ハザマからポップしたモンスターがこの世界に出てくる、それを繰り返す状態でまだ最悪ではない。
 だがフェイズ2、フェイズ3となるほど事態は悪化する。

「スケルトンの群れがこの村に迫っています!皆さんで協力してスケルトンを倒してください!3日、3日で熟練の冒険者がこの地に集結します!それまで凌ぐだけでいいのです!」

 今、この村にいる冒険者は100人の選抜された高校生、そして10人の教員は中級、後は一般冒険者が8人だったはず。
 合わせて118人。

 道路を見ると村から車が走って出て行く。
 みんな避難しているのだろう。
 旅館の従業員も避難して行き、村の放送がやかましく避難しろと音を立てる。

「何か質問があれば挙手の後質問してください!」

「はい!スケルトンの数は分かりますか?」
「分かりませんが、100以上はいるようです!他にはありますか?」

「はい!一般冒険者と共闘ですか?」
「いえ、一般の冒険者は他の場所で戦っているようです……少しだけ失礼、はい、はい、分かりました」

 スマホで通話をしている。
 何かあった事が皆に伝わって空気が重くなった。

「すぐに、ええ、場所は分かります。はい、みなさん!質問は移動しながら答えます!冒険者が苦戦しています!予定を変更します!今すぐ援軍に行きます!ついて来てください!」

 俺達は先生について行った。
 何故かレイカさんもスーツ姿で付いて来て、後ろからはドローンが飛んでついてくる。

「レイカさんも来るんですか?」
「自衛くらいは出来るわ」
「後ろのドローンは何ですか?」
「配信ドローンよ、プライバシーより迅速な情報伝達よね! 見えたわ! スケルトンね!」

 プライバシーより人命が尊重される。
 つまりネットで顔が映るよりモンスターの脅威を知らせる方が尊重されるのだ。
 レンに突っかかって来たパーティーが先頭を走る。

「俺達が助けてやる!レンより俺達の方が出来るんだ!いくぞお前ら!」
「「うおおおおおおおおおおおおおお!」」

「やめなさい!先行し過ぎです!」

 男性職員が注意するが聞かずにイノシシの牙の6人はスケルトンを倒していった。
 そしてスケルトンを全滅させた。

「楽勝おおおおおおおおおおおおおおおお!」
「「うえーーーーーーい!!」
「次は山の上から来るスケルトンを倒すぞ!」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」
「やめなさい!待ち構えて皆で攻撃します! 見渡しの悪い森で戦うのは危険です!」
「お前ら行くぜえええ!」

 レンに突っかかって来たパーティーが山を登って行った。
 そしてスケルトンを倒すが、途中から顔色が変わる。

「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!」
「ひぇえええ!スケルトンの大軍だあああ!」
「が! 太ももを刺された!」
「助けてくれえええ!囲まれるうううううううううううううううううううううう!」

 その時、レンが前に出た。

「雷神!」

 レンの体が雷をまとった。
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