上 下
78 / 191

第78話

しおりを挟む
 家に帰りベッドに横になった。
 そして考える。

 ユイは弓の火力不足に悩んでいる。
 今日のような感じでハザマに行けばユイは魔石を食べてくれる。
 でも、100体狩ってやっと1個出るかどうか……
 時間がかかりそうだ。

 中級モンスターの魔石は能力値をアップするスキルを得られる。
 ガーゴイルは魔力アップのスキルだから、少なくともユイは弓をたくさん撃てるようにはなるだろう。
 アマミヤ先生はユイを助ける事が出来て元気になっている。
 今日の感じで何度もハザマに行く。
 それをやれば、徐々に2人は良くなっていくだろう。

 そして、中級ハザマに潜れば、ヒトミに堂々と素材を渡す事が出来る。
 そうなればヒトミの素材不足は気にしなくて良くなる。

 もうすぐ夏休みだ。

 ……スキルを試したい。
 我慢できなくなってきたのだ。

 砦を発生させた。
 そして部屋にいながらハザマを出して侵食する。

 するとモンスターが砦に現れてオートでモンスターを狩っていき、魔石が溜まっていく。
 便利だな。
 今度はベッドで横になりながら試すと、問題無く出来た。

 寝ながらレベルアップ出来る。

 でも、ゴブリン・オーガ・グレートオーガのハザマは不足している。
 あまり浸食しすぎるのは……やめておこう。
 オーガとグレートオーガの魔石は、力がアップするスキルを取れるんだ。
 最近、俺がハザマを消すと、他のハザマが消えているような。そんな気がして来た。

 俺の能力値は、ほぼオートで上がっていく。
 放置レベルアップか。

 少し、食べておくか。
 アイテムボックスから魔石を取り出して食べる。
 甘い。

 今日も、良い日だった。
 俺は眠りに落ちていった。



【ユイ視点】

 朝の陽ざしが気持ちいい。
 同じ家にフトシが眠っている。

 なんだか落ち着かない。
 フトシの部屋に行ってもいいかな?
 う~ん、でも……


 ◇


 行こう、もう2時間も経った。 
 フトシも起きているはず!

 私はフトシの部屋に行き、ドアをノックした。

「フトシ、おはよう、入っていいかな?」
「ん、んん、ユイ?いいぞ」
「入るね」

 ガチャ!

「うわ!え!これは!」

 フトシが慌てている。
 フトシの隣にシーツの膨らみがあった。
 まさか!

「ヒトミ!」
「ん、んん、おはようございます。ユイ」

 ユイが起き上がるとシーツがはらりと落ちた。

「な、何で裸なの!」
「裸の方が、寝心地がいいと思って、フィット感が上がって」
「フィット感!」

 フトシの手を引いてベットから降ろすとヒトミはフトシに抱き着いたまま離れない。

「ちょ!ちょっと!」
「まだ間に合います。フトシ君のおんぶダッシュがあれば」
「ダメ!ダメダメ!」

 私はヒトミに下着をつけてフトシを連れて朝食に向かった。
 後ろから服を着たヒトミがついてくる。

 3人、無言で食事を摂った。
 フトシを挟んでヒトミを見た。

「あらあら、今日は静かね」

 フトシの母さんがにこにこして言った。
 ヒトミが隣で寝ていても気にせず放置するだろう。

「ヒトミ、フトシのベッドで寝るの禁止ね」
「羨ましいならユイもやればいいじゃないですか」

「ダメダメ!」
「ユイとフトシ君は一緒にハザマに行っています。私はその後にフトシ君と一緒にいます。フィフティーフィフティーです」
「フィフティーフィフティーって何?全然フィフティーフィフティーじゃないよね?」

「私はユイも一緒に寝ていいって言ってます。1000歩以上譲ってのフィフティーフィフティーです……仕方ありませんね」

 ヒトミが立ち上がって部屋に戻り、武器を持って来た。

「フトシ君に頼まれていたロングナイフ2本です。太ももに取り付けるホルダーも付いています」
「ありがとう。でも一緒に寝るのはダメ」

「あ、フトシ君、レン君の武器もありますよ。取ってきます」
「う、うん、サンキュー」

 ヒトミはまた部屋に戻っていった。

「すぐに歯みがきをして学校に行こう。遅れるとヒトミがおんぶでサボるから」

 私はフトシの手を引いて歩いていた。

 私から手を引いて歩いている自分の事に違和感を覚えた。

『ユイ、次はあっちな』

 小さいころ、フトシに手を引かれてついて行った記憶を思い出す。
 でも、私が手を引く事は、あまりなかったように思う。
 いつも受け身だった。

 私の何かが変わろうとしている?

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

処理中です...