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第71話

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 ヒトミとアマミヤ先生が俺に抱き着いた。
 今まで試験に集中していたため、皆のひそひそ声は頭に入らなかった。
 でも耳を澄ますと色々聞こえてくる。

「秘密の特訓を受けたんだろ?」
「それしかない。あの血の量はおかしい」
「となれば、アマミヤ先生が危険な特訓を受けさせてフトシがそれを乗り越え、そして更に満身創痍の状態で試験を受けに来た、こういう事か」

「それならアマミヤ先生の涙の理由も分かるな」
「話は変わるんだけど、グレートオーガの金棒ってあんなに飛ぶものなの?あれミサイルじゃん」
「いや、持つのもきつい。振るのはもっときついと考えると」
「普通じゃないな」

「しかも上級ランクの教官が攻撃をギリギリで躱し、いや、服が破けてたな」
「近接試験もやっつけ感があったよな」
「ああ、竹刀が折れるでしょ?振るの早いでしょ?証拠は取りましたからね的な」

「それにしても、羨ましいな」
「泣いて抱きつかれたいわ」
「俺達は試験官のお姉さんが服が破けるアクシデントを見て満足するしかないんだよ」
「お姉さんの顔が赤くて可愛かったな」

 ヒトミとアマミヤ先生が飲物と食べ物を取り出した。

「喉が渇いただろう。水だ」
「おにぎりがあります」
「丁度お腹が空いていたんだ」

 俺は水とおにぎりを貰った。

「ああああ!うめえええええええ!」

 俺は水とおにぎりを残さず食べきった。

「先生とヒトミは食事を食べました?」
「まだです」
「私もまだだ」

「ユイ、食事はまだか?」
「うん、まだだよ」
「食事にしよう。母さんに何食分も貰ってためてるからな。砦!」

 4人で砦に入った。
 そして食事を食べる。


 ◇


 食事が終わると、試験の結果を聞きに行った。

「ツムギユイ、中級レベル1、合格だ」
「おおおおお!おめでとう」

 俺はユイの手を取って喜んだ。

「あ、ありがとう」
「あーそれと、オオタフトシ」

 心臓の鼓動が激しく鳴った。

 第一試験は中断になった。

 第二試験もやっつけ仕事だった。

 試験に落ちたから適当に試験をした可能性がある。

 第二試験でも金棒を使えれば良かったか?でも禁止されたし。
 
 頼む、受かってくれ!

 受かっていてくれ!

 アマミヤ先生に元気で合格したと、胸を張って言いたいんだ!

「初級レベル7、合格だ」

「おっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!やったああああああああああああああああ!!俺合格しました!!!俺元気ですから!!!」

 試験官3人が俺を冷めた目で見つめる。

「「……」」

「オオタ、良かったな」
「良かったですね」
「おめでとう。でも、もっと上に行けるよ」

 俺は踊った。
 食事を食べたら体力が回復したのだ。
 ブレイクダンスでくるくると回転し続けた。

 そして起き上がりポーズを決めた。

「話を続けていいか?」
「あ、はい、すいません。嬉しすぎてつい」

「納品金額がもっと多ければもっと上のランクに行けた。中級冒険者までなら適当に試験を受けても上がれるだろう。もっと納品してから、早めに試験を受けて欲しい。次の試験期日は」
「え、ちょ!まだ納品ノルマがまだです。納品してから次を考えますよ」

「早めにドロップ品の納品を済ませてくれ」
「はい!頑張ります!」

 もしかしたらとは思っていた、俺は思っているより強いんじゃないかと。
 俺は中級のオーガも、上級のグレートオーガも倒せる。
 相性の影響もあるかもしれないが、簡単に倒せた。

 そしてグレートオーガの角付きを倒して、初級レベル7にもなれた。

『中級冒険者までなら適当に試験を受けても上がれるだろう』

 次は、中級を目指して試験を受けてもいいかもしれない。

「お疲れ様だったな」
「いえ、こちらこそお疲れさまでした!」

 周りを見渡すとアマミヤ先生・ヒトミ・ユイが笑顔で俺を祝福する。
 俺一人だったらここまで強くなれなかった。
 すこし、心に余裕が出来た。

 試験が終わり帰宅し、クイーンの魔石を食べたが変化の無さにがっかりした。
 スキルが強くならないのか。
 その日はぐっすり眠った。
 次の日、学校が始まるとレンが学校に来た。
 朝レンの所に行くとは皆に囲まれていた為、放課後にみんなでレンの机に集まった。
 レンにも感謝している。

「レン、退院おめでとう。所でグレートオーガの金棒がボロボロになったからこれでレン用の新しい武器を作りたいんだ」
「それは、悪いよ」

「いや、受け取って欲しい。俺さ、レンの事が羨ましいと思っていたんだ。いや、今も羨ましい。俺ひねくれてて、でも、レンならこんなひねくれた事は考えないよなって何度も考えを変えて、自分の駄目な所を直したから初級レベル7になれたんだ」
「私からもお願いします。私が剣を作ってフトシ君に渡せますから」

「……僕は、ユイの方に頑張って」
「わわわ、ダメダメダメ!」

 ユイがレンの口を塞いだ。
 おかしい、レンは人を困らせたりしない。
 でも、ユイは必死で言わせないようにしている。

「ぐぬぬ、レンさんはユイの肩を持つんですね」
「いや、肩を持つというより、普通に動いて欲しいんだ」
「なんだ?何の話?」

「い、いいから」
「そ、そっか。とにかく、レンの剣は作るから。それと、ユイにも」
「回復カード!こんなに一杯!」

「俺が沢山使ってしまったから7枚しかない。でも、カードを渡すだけで命が助かるかもしれないって思うと、安いよなーって思って」
「でも、悪いよ」

 教室に先輩2人が入って来た。
 確か、レンとユイのパーティーだ。

「レン、ユイも貰っておきなさいよ。あげたいって言ってるのに貰わないのは失礼よ」
「貰っておいたほうがいいよお、ね?」

「ユイもレンも貰っておけって。貰わないと邪魔になるくらい毎日ここに来る。俺とレン。それにユイの時間が奪われ続けるだろうな」
「えええ……」
「フトシにはいつも貰ってばかりで」

 先輩なにやあっと笑った。

「ユイ、体で返したら?」
「リナ先輩!」
「冗談よ。でも貰うで決定ね。レン、もうしばらくハザマ探索は休む?」
「行くよ」

「行ってらっしゃいいい!」
「行ってらっしゃい」

 俺とヒトミは店員のように見送った。

「ユイ、動かないと取られるわよ。誰とは言わないけど」
「リナ先輩!」
「じゃあね!」
「またねえ」
「また今度ね。リナ先輩!変な事言わないでください!」
「フトシ、いつもありがとう、また明日」

「おう!またな!」

 さてっと、俺もアマミヤ先生とハザマ施設に行こう。
 またなと言ったけど同じ学校前の施設に行くから結局会うんだよな。

「負けませんよ」

 ヒトミが小さな声でつぶやいた。

「ヒトミも、またな」
「また明日会いましょう」

 俺は職員室に向かった。
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