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第68話

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「伸びろ!金棒!」
 
 金棒が10メートルの長さに伸びて金棒を横に振った。
 前にいたグレートオーガがすべて倒れ、タンクが簡単に吹き飛ばされた。
 金棒を横に振るだけでグレートオーガが魔石と金棒に変わった。

 邪魔がいなくなった!
 振り回して当てるだけでグレートオーガが倒れていく。
 タンクを、倒せる!?

 金棒を伸ばしたままタンクを攻撃するついでにグレートオーガを倒していった。
 タンクだけになると、状況が変わった。
 タンクへの攻撃に集中できる。
 金棒を伸ばす事で雑魚は俺に近づけなくなった。

 タンクが簡単にやられて魔石に変わり、魔石を飲み込んだ。
 キングの魔石で力が増した上にタンクの魔石を取り込んで更に力が上がった。

 そう、か、金棒が強いだけじゃない。
 俺の力が増しているんだ。
 金棒の強化と能力値のアップ、両方の力か。
 闘技場のグレートオーガをすべて倒し、魔法陣からグレートオーガが出てくるたびに金棒を振って倒した。
 作業だな。
 だが、目が、霞む。
 息が切れる。
 クイーンの元にたどり着く前に倒れるだろう。


『フトシくん!!フトシくん!私をそこにワープさせて!』
『話を聞いてください!フトシ君!』

「あ、先生、ヒトミ、今忙しいんだ」
『フトシくん!私のきゅうでスタミナを回復出来るから!それでクイーンを倒せるから!ワープさせて!』
『回復カードを使います!私もワープさせてください!』

 スタミナさえあれば、今ならワープさせても、行ける!
 クイーンを倒せる!

 ヒトミとアマミヤ先生がワープできるように魔法陣を出した。

 その瞬間にアマミヤ先生がきゅうを投げた。

「きゅう!回復!」
「きゅう!」

 俺ときゅうが輝きを放った。
 不思議だ、金棒で殴っているのに楽になっていく。
 更にヒトミは俺に回復カードを使う。

「全部使います!使えるだけ使いますから!」

 回復カードが気持ちいい。
 少しずつ傷が治っていく。
 回復カードは重ねて使っても一気に回復はしないが、回復の効果時間が長くなっていく。
 このまま完全回復できるんじゃないか?

 だが、その瞬間にきゅうが消えた。
 アマミヤ先生が倒れたのだ。

「ヒトミ!アマミヤ先生を頼む!俺一人でクイーンを倒せる!」
「分かりました!」

 今ならクイーンを倒せる!

 俺は第三階層、第二階層とグレートオーガを倒しながら走った。
 そして第一階層に出るとクイーンが逃げ出した。
 グレートオーガの魔法陣に乗ると、ハザマに入って行った。

 クイーンがグレートオーガのハザマに入れる?
 1度ここまで出てきたら、出入りできるのか?
 それとも、ハザマに入ったら、ここに出てくることができない?
 どっちだ?

 ……分からない。
 でももし、砦を解除してクイーンが出てくる事が出来るとしたら?
 砦が破壊されれば、この空間を維持出来なくなり日本にグレートオーガが溢れる。
 脅威だ。
 
 分からないなら、ハザマを消してクイーンを倒す。

「ハザマ浸食!」

 俺はクイーンの入ったハザマを消そうとした。
 だが、浸食が遅い。
 抵抗されているのか?
 グレートオーガが出てこない。

 俺はアイテムボックスから魔石を取り出して食べた。
 大量の魔石を食べた。
 今日倒した魔石を全部取り込んで更に力を上げる。 

 その上でハザマの浸食を続ける。
 絶対に浸食してやる!
 魔法陣が消えるとクイーンとグレートオーガが出て来た。

 その瞬間に金棒を伸ばしてすべてをなぎ倒した。
 クイーンはあっけなく魔石に変わり、俺は大きく息を吸い込んで吐き出す。

 俺は地面に座り込み、地面に寝ころんだ。
 
「はあ、はあ、ああ、やっと終わった。は、ははははははは!やった!やった!」

『フトシ君、ワープさせてください』
「いや、そっちに行く」

 俺はプライベートルームにワープした。
 
 アマミヤ先生はベッドに横になりながら泣いていた。

「フトシ君、本当に良かった。私が変な事を言ったせいで、こんなことに、うううううう」

 先生が俺に抱き着いた。
 先生は、山でハザマ狩りを提案した事を気にしている。 
 でも、先生のせいじゃない。

 思えば先生は自分では魔石を受け取らなかった。 
 でも、俺やヒトミを助けるためにはかなり無茶をしていた。
 頑張って人を助けようとしていた。
 先生はリスクを取って俺の成長を助け続けてくれた。

 先生が泣きながら俺に抱き着いて泣き続けている。
 ああ、そうか、俺は運がいいんだ。
 先生は、俺に負い目を感じている。
 でも、こういうのは嫌だな。
 ずるい。

 俺が、今できる事。

 俺は何が出来る!

 今どうすれば良い!?

 ……俺が笑わなくてどうする!

 今笑わなくてどうする!?
 
 こういうのは得意だろ!
 
 俺は先生を抱きしめたまま明るい声で言った。
 

「先生、おかげでめっちゃ成長出来ました。魔石がたくさん手に入りました。いやあ、もう、簡単にFIRE出来るかもしれませんね。はっはっは」

 俺は先生を抱きしめ続けた。


 先生が落ち着くとゆっくり話し始めた。

「本当に無事でよかった。でも、今日の試験には間に合わないわ。あんなに試験の為に頑張っていたのに、ごめんなさい」
「いや、大丈夫ですよ」
「今日は休みましょう。命より大切なものは無いわ。フトシ君に何かあったら大変よ」

 先生は俺の事を心配している。
 先生は俺が試験を受けられない事を気に病んでいる。
 
 俺が元気な事を見せればいい。

 俺が元気いっぱいで試験に合格すればいい。

 ヒトミが、俺の顔を見て察した。

「フトシ君、試験に行くんですよね?」
「ああ、試験に行って来る。俺は元気だ!元気に試験を受けて元気に合格します!先生、俺元気ですから!」

 アマミヤ先生は俺の言葉を聞いてまた泣いた。

「アマミヤ先生は任せてください。砦を解除してすぐに出発してください!」
「ヒトミ、ありがとう。行ってくる!」

 俺は走った。
 試験は13時からか。
 今は12時54分!

 後6分!


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