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第58話

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【ツムギユイ視点】

 フトシと一緒に住むことが決まった次の日、私達のパーティーは上級冒険者2人の付き添いでグレートオーガのハザマに入る事になった。

 私達のパーティーは4人だ。

 雷魔法と剣を使うレン
 土魔法を操るリナ先輩
 銃撃を行うユズキ先輩

 私以外みんなが中級だ。
 私だけが初級レベル10。
 私以外のみんなは期待されている。
 だから上級のハザマに入る高待遇を受けている。
 私は、おまけだ。

 上級冒険者の2人が前に出て説明をする。

「俺は双剣使いのハヤテだ。隣にいる大楯持ちがテツヤだ。耳にタコだろうが一応言っておく。危なくなったらすぐに逃げろ。おし、これでいつもの堅苦しいやつは終わりだ。俺とテツヤが前に出てグレートオーガと闘う。後ろから見学しつつ余裕があれば1体を集中攻撃するだけで大丈夫だ。あんま緊張せず気楽にな」

「「よろしくお願いします」」

「じゃ、行くか」

 グレートオーガのハザマは三角形の魔法陣が3つくるくると回っており赤い光を放っている。
 光度が弱く、最大でもグレートオーガは10体ほどしか出ないだろう。
 
 6人揃ってハザマにワープした。

「……さっきは6体いたんだが、拠点に引っ込んでいるのか?」

 みんなで前に歩く。

 すると横から地面が崩れる音がした。

 地面から7体のグレートオーガが現れて出口の魔法陣を塞いだ。
 グレートオーガはオーガより背が高く筋肉が発達しており、持っている金棒も大きい。

「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」

 更に穴からはグレートオーガの群れが増えていく。
 出口を塞ぐように立ちはだかった。
 いつもならモンスターはストレートに攻撃を仕掛けてくる。

 今回は様子がおかしい。
 隠れて奇襲はかけないし、出口の魔法陣を守る事も無い。

「おいおいおい!どうなってる!光度は弱かったはずだ!」
「ハヤテ、前に、キングとクイーン、4騎士がいる」
「なん、だと!」

 更に地面からグレートオーガが増え続けた。
 ハザマのモンスター、その上限出現数は101体だ。
 恐らく95体のグレートオーガがいる。
 更に拠点からはキング・クイーン・ファイター・タンク・ビショップ・マジシャンが迫って来る。

 みんなが絶句した。

「諦めるな!俺達がグレートオーガを押さえている内に魔法陣に走って脱出しろ!」

 ハヤテさんとテツヤさんが横にいるグレートオーガの群れに突撃してグレートオーガを倒していく。
 凄い!
 上級冒険者は凄いんだ!

 拠点からはキング達が迫って来る。

 私達では足手まといだ。

 私達が脱出できれば2人も脱出できる。

 私達4人は魔法陣に走る。

 あと少しで脱出できる。

 だがその時、ハヤテさんがグレートオーガの金棒に飛ばされた。

「え!」

 更にキング達がハヤテさんに迫って来た。
 テツヤさんが前に出て大楯で攻撃を防ぐ。

「ぐは、すま、ねえ」
「ハヤテ!立て直せ!早く立て直せ!」

 ダラダラと汗が流れた。
 上級冒険者だから大丈夫だと、そう思っていた。
 2人は無理をして私達を助けようとしてくれていたんだ。


「僕も前に出る!援護攻撃を!」
「1人じゃあぶないよ!」
「このままじゃ2人が殺されるよ!」
「ユイ!レンの進む道を作るのよ!」

 2人の先輩は遠距離攻撃でレンの進む道を作った。

 土魔法と銃撃でグレートオーガがひるんだ。

「く、アローラッシュ!」

 無数の矢がグレートオーガに突き刺さる。
 私の矢では威力が足りない。

 レンがグレートオーガの群れに飛び込むと切り札を使った。

「爆雷!」

 レンを中心に半径5メートルに雷撃が放たれた。
 レンはオーガに囲まれても、何度も爆雷でオーガを倒して来た。
 前衛がレンだけでもやってこれたのはレンのスキルの力が大きい。
 爆雷はレンの2つある切り札の1つだ。

 グレートオーガが硬直する。
 だが、切り札の爆雷1撃だけではグレートオーガは倒れない。

「雷神!」

 レンは更にもう1つの切り札を使った。
 レンが雷をまとって速度を強化し、もの凄い速度でグレートオーガに斬りかかり倒していった。
 レンは、明らかに無理をしている。

 これでレンは切り札を使い切った。
 切り札は2回までしか使えない。

 テツヤさんがハヤテさんを運ぶ。
 後ろから攻撃を受けながらも魔法陣に向かって走る。

 レンも後ろに走ろうとした瞬間。

 ゴス!

 グレートオーガの攻撃を受けた。
 レンは体勢を立て直して一番後方を走る。

 あと少しで魔法陣にたどり着く。
 その時、レンの雷神を超える速度でキングが迫ってきた。

 ゴキイイイイ!

 レンが金棒を受けて骨が折れる嫌な音がした。
 レンは丁度魔法陣の方向に吹き飛ばされた。
 
「おりゃあああああ!」

 テツヤさんがハヤテさんを片腕で持ちながらもレンを掴んで魔法陣に投げた。
 先輩がレンをキャッチするとみんなで魔法陣に走った。
 ほぼ同時にみんなで元の世界にワープした。

 ハヤテさんはありえないほどの血を流し地面に倒れ込んだ。
 テツヤさんの背中の装備がえぐれて血が出ていた。
 テツヤさんが回復カードでハヤテさんの傷を癒した。

 レンがせき込んだ。

「がは!」

 レンが血を吐いた。

 先輩がレンに呼び掛ける。

「レン!レン!レン!」

 私はフトシの言葉を思い出した。

『ユイが回復カードを使って回復出来る』

 全部使おう。
 今使おう。
 急いでレンの近くで座った。
 フトシに貰った回復カードを押し当てた。

 回復カードが光ってレンの傷を癒していく。
 完全に傷が癒えない。
 カードの回復には時間がかかる。
 一気に回復するわけではない。

 まだ足りない。
 2枚目、3枚目とカードを押し当てた。
 それでも足りない。

 血が流れ過ぎている。
 流れた血は元には戻らない。
 汗がダラダラと流れる。

 4枚目、5枚目とカードを使うと回復カードが無くなった。

「もう、無い……レンも1枚カードを貰ってた!」

 先輩が素早くレンのアイテム入れからカードを抜き取ってレンの体に当てた。

「回復カードを!誰か持っていませんか!?誰か!」

 周りにいた冒険者は横に首を振った。

 ハザマの職員が走ってきてすぐに運ばれていく。
 回復カードが足りない。
 レンは、血を流しすぎた。
 最悪の状況が頭をよぎる。

 立ち上がろうとして私は、地面に倒れ込んだ。
 私も一緒に病院に運ばれた。


 ◇


 レンは助かった。
 でも、しばらく入院が必要だ。

 数日後、特級冒険者がハザマを消す事になった。
 ハザマの事が気になって仕方がない。
 あのハザマが残っているだけでこの施設が怖く感じる。
 私は、ハザマに向かった。
 
 特級冒険者のパーティー4組がハザマの前に立つ。
 その周りを多くの冒険者とマスコミが囲む。

 スーツを着た男が言った。

「繰り返しにはなりますが、今回は様子見だけです。いけると思っても絶対にハザマを消そうとは考えないでください。あなた方特級冒険者は特別な存在なのですから」

 ただのグレートオーガなら特級冒険者が余裕で倒せる。
 でも今回はキング・クイーン四騎士すべてが揃う異常事態だ。
 かなり慎重になっている。

「分かってる。倒せると思っても無理はしない。今回は偵察だけ、だろ?」
「はい」

「5分だけ黙ってくれ、特にマスコミな。集中して、雑念を捨てて偵察をする。ミスがあれば即死につながる」

 特級冒険者の男が目を閉じる。
 みんながごくりと唾を飲み込んだ。
 ピリピリとした雰囲気で空気が重い。


「……おし、行ってくる」

 だがその瞬間、ハザマが消えた。
 ざわざわざわざわ!
 大きなハンマーを持った男が呟くように言った

「イレギュラーか。怖いねえ」

 カシャカシャカシャカシャ!

 カメラのフラッシュとマスコミがあわただしく質問を始め、一気に騒がしくなった。
 でも、私は、ハザマが消えてほっとしていた。

 後日『キング・クイーン・4騎士のハザマが謎の消失!?』の記事が新聞の一面を飾った。
 テレビやネットでハザマ消失のニュースは盛り上がった。



 あとがき
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 『転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた』

 https://www.alphapolis.co.jp/novel/665186024/748812350
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