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第52話

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 俺はヒトミを家に送った。

 運がいい割にどうも攻撃が受けると思っていたが、戦闘が終わるとヒトミが俺に抱き着いて、申し訳なさそうに俺を見つめていた。
 ヒトミは俺が命を賭けて無理をして血だらけになりながら守ってくれたと、そう思っているようだ。

 でも、血は出たけどそこまで痛みは感じなかった。
 倒せる確信があったし、何ならゴブリンと闘っている時の方が怖い思いをしてきた。
 2分もかからず4騎士を倒したし。

 ヒトミは勘違いをしている。
 俺には都合がいいけど、ヒトミを騙しているみたいで嫌だな。
 家まで送る途中で何度も自分は運が良い事を話した。
 マジシャンの炎はそこまでダメージが無い事を話した。
 でも、信じて貰えなかった。
 全部ヒトミを安心させるための嘘だと思われた。

 もう、覆せないだろう。

 シャワーを浴びると部屋に入った。
 クイーンの魔石を食べるとグレートオーガのハザマを出せるようになった。
 ……キングとクイーンの魔石を食べると上位種のハザマを出せるようになるのか?
 絶対にそうとは言えないが、その可能性は高いだろう。

 俺の力は高まった。
 次は4騎士の魔石を食べよう。
 4騎士の魔石を食べると、俺のスキルに変化があった。

『マイルームを進化可能です。進化中はマイルーム関連のスキルが使用できなくなります。進化まで10日かかります。進化しますか?』

 進化中は……アイテムボックスは使える、後はハザマを出すのと、レッドオーラ、金棒を出すスキルが使えるか。
 ……問題無いな。

 最近マイルームの性能に頼りなさを感じていた。
 俺は進化を選択した。

 楽しみだな。
 次はもっと強くなるのか?
 進化だから普通は強くなるよな?
 更に雑魚やボスの魔石も食べよう。

 10日間は、何しよ?

「フトシ君、入っていいですか?」
「いいぞ」

 ガチャリ!

「渡したいものがあって」
「今日の事は気にしなくていいんだ」
「気にしますよ。これを、プレゼントしたいです」

 俺の手にカードを置いて、両手で俺の手を包んだ。

「回復カード、高いだろ」
「無理をして魔石を借りたので」
「いや、でも借金には金利がある。大変だろ?売ってお金に変えればいい」
「金利は年でたった15~20%です。冒険者なら自分に魔石を使えば人に貸すより多くお金を手に入れられるようになります」

 冒険者の、特に高校生の俺達は伸び盛りだ。
 魔石の一番いい使い方は自分に使う事なのだ。
 金利は年で15~20%だが、冒険者が強くなれば稼ぎが2倍3倍と増えていく。
 伸び盛りの冒険者は普通なら魔石を貸さない。
 ヒトミは、魔石を借りた事も気にしてるんだな。

「気にしなくていいんだぞ」
「私の体でお礼をする事も出来ます」
「気にし過ぎだ」
「回復カードを何度も渡します」
「正直欲しいけど、やっぱり悪い」

「でも、金利が最大でたった20%は、おかしいです。少なすぎます」
「国の決まりだからな」
「何度断っても渡します。何度も渡します」

 もう、何を言っても無駄だろう。
 ならば、軸を変えよう。

「ありがとう。俺への借金が無くなったら貰おう」
「今から渡します」

 駄目か。
 更に軸を変える。

「そ、そうか、レンや、ユイにあげてもいいのか?」
「フトシ君にあげた物なので自由に使って欲しいです。売ってもだれにあげてもいいんです」

「……凄く助かる。ありがとう」
「私の体も貰いますよね?」
「……いや、それはちょっと」

「でも、私のおっぱいは好きですよね?」
「すき、それでも、だめだ」
「大きさと形には自信があります」
「だ、だめだ」

「残念です」

 誘惑に負けそうになる。
 話を変えよう。

「そ、そう言えば、このペースでアイテムを作っていたらゴブリンのナイフが無くなるかもしれないな」
「……オーガの金棒がいっぱいありますよね?取引して欲しいです」

「う~ん、それなんだけど、俺って初級レベル1だろ?初級レベル1でオーガを倒してますってなると、ハザマの件がバレそうだから慎重に行きたいんだ」
「……アマミヤ先生、アマミヤ先生に相談すれば、あ、他の先生には言わない方が良いですが、アマミヤ先生なら大丈夫です」

「アマミヤ先生か……丁度マイルームが進化中で使えないから、ちょうどいいのかもな」
「進化ですか!初級レベル1で進化は普通あり得ないです!絶対に相談した方が良いですよ!」

「う、うん、そうしてみる」

 ヒトミの距離が近くてドキドキする。
 顔が近いし前のめりになられると胸に視線が行ってしまう。


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