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第77話

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 俺は東北にあるダンジョンをソロで配信し続けた。

 ごう・デュラハンキラー・ウエイブウォークはダンジョンに入りキャンプをしながらモンスターを狩り続けた。
 ダンジョンキャンプは効果が実証されてみんなは効率よくモンスターを狩った。

 青森の市長たちが謝罪の配信を申し出てごうがそれに答えた。
 だがその頃俺達は青森を出て南下していた為スキップしたダンジョンはそのまま放置されている。
 あくまで効率よくダンジョンのモンスターを狩るを徹底した。

 東北のモンスター狩りが終わり東京に帰ると奈良君のいる冒険者組合支所でドロップ品の換金をした後3日間の休暇を取る事となった。
 次は九州、四国、中国地域の溢れ出しダンジョンを狩る事で自衛隊の無駄な移動や冒険者の招集による遠征を余儀なくされる事態を防ぐ。

 そうする事でデュラハンのいるリビングアーマーのダンジョンに向かわせる土台を作る予定だ。
 だが思ったよりも政府の動きは鈍く、自衛隊の協力は難しいかもしれない。

 東京に帰って次の日、俺とごうが政府から呼ばれた。
 自衛隊と冒険者の在り方について送った要望について話を聞きたいとの事だった。

 黒い高級車が家の前に止められて白い手袋をつけた男がドアを開けた。
 ごうと俺が車に乗り込む。
 車がビルの入りビル内部を案内されると取材陣がシャッターを切る。

 カシャカシャカシャカシャ!

 総理と防衛大臣が俺とごうに握手をする。
 その後ろには官僚と思われるメンバーがいて席に着く。

「ドローンを起動させて配信してもいいですか?」
「問題ありません、どうぞ」

 俺はドローンを起動させて配信を始めた。

「達也です、今から僕が送った要望について会議をします」

 カシャカシャカシャカシャ!

 総理が目を細め紙を見ながら言った。

「えー、まずは赤目君の要望にあった自衛隊を出来るだけ防衛から攻撃に変えて欲しい点、そして冒険者の招集と横槍を無くしていきたい点、この意見は受け取り検討を重ねています。その結果自衛隊の一部のより多くの攻撃に当てる為実験的にレンジャーをダンジョンの攻撃に当てる事を決定しました」

 カシャカシャカシャカシャ!

『少し前進やね』
『ただ、試験的にレンジャーを責めさせる方針が決定しただけで施行までは更なる時間がかかる』
『もっと言うと野党ではまだ反対意見してる』

『つか防衛をするより攻めた方がいいのは他の国が証明してる』
『でも実験的にと言わないと通せないんだなあ、まだ防衛してればいいと思っている国民も多い』
『これでもかなり急いでいる方よ』

『小手先の動きなんだよなあ』
『小手先でやらないと数年かかるで』
『抵抗勢力がねちねちと邪魔をしすぎなんだ、しゃあない』

「続きましては防衛大臣の言葉をお願いします」

 防衛大臣が立ち上がり記者に向かって話す。

「今回、実験的にではありますがレンジャーの……」

 話が長い。


 ◇


 30分以上話が続いた。
 政府の立場で間違ったことを言えない為か堅苦しくイメージしずらい話だった。
 ざっくり言うとこれからは溢れ出しを未然に防ぐことを模索していく、そういう内容だった。

 会議と名はついている物の政治家のパフォーマンスのように進んだ。

「総理、そろそろ次の予定が……」
「うん、赤目君、白銀君、要望はしっかりと受け止めて検討します」

『政府のパフォーマンスだけで話し合いをする気はないんだな』
『てか、ちゃんと会議をしてしまえばお前ら、細かい言葉の言い回しで炎上させるだろ? で野党につ疲れてまた国会が空転する。だから政府はその対策でああしている、ああするしかない状況やね』
『口やかましい国民性は政府の改革を遅らせるよな』

『一番早く改革を進められる方法はざっくりした案で進めてみて問題があればすぐに修正する事だ、でもそれをやるとお前ら『やるんだったらちゃんと考えてからやれ!』とか言って潰しに来るだろ? で、政府はそれが分かっているから両手に盾を持つようになって攻めの改革が出来なくなる』
『達也の話くらいは聞いて欲しかった』

 最後は俺とごうが握手をして写真を撮って終わった。
 特に議論をする気はないようだ。

 配信を終わらせ部屋を出て車に乗るとそこで助手席に乗った男が声をかけてきた。

「赤目さん、白銀さん、相談がありまして」
「なんでしょう?」
「防衛大臣と私的な話し合いの場を設けたいです。この後ご予定はありますか?」

「予定はない、行ける」
「僕も大丈夫です」
「ありがとうございます」

 車が走り出すと料亭に案内された。
 中に入ると周りに人の気配が無くそこには防衛大臣がいた。
 高そうなご馳走が並び、握手をした後座る。

「まずは、時間を取って貰い助かる。遠慮せずさ、どうぞ」

 俺とごうが食事を食べる。

「食べながら聞いて欲しい、赤目君が寄付をして次の世代を担う冒険者を育てる為に基礎訓練や武器の使い方などを教えている。そこに自衛官を入れる事は出来るだろうか?」
「いいですよ。それは僕が言い出した形にして言えばいいですか」

「それで、お願いしたい。これが公になると自衛官を訓練できていない、国を守る自衛官を安く使っていると思わぬ方向から批判が出てしまう」

 政治家はアクションを起こした時点で批判に晒される。
 何をしても叩かれる。
 事情は分かる。

 自衛隊に予算を使えない。
 税金を増やすと叩かれるし景気を腰折れさせる。
 自衛隊を訓練をするにも金がかかる。

 でも優秀な自衛官は冒険者に転職したり海外に抜かれる。
 苦しい状況で少しでも経費を浮かせたいんだろうな。
 教官不足、予算不足、でもそのままそれを表で言えば炎上するだけだ。

「同時に何人訓練したいですか?」
「欲を言えば500人、少なくとも100人」

「……はい、んと、僕が自主的に自衛官でも受け入れるPRをしておけばいいですか?」
「それで頼む」

「ちょっと奈良君に連絡してみます……もしもし、奈良君」
『達也さん、どうしました?』
「うん、ちょっと、今冒険者の基礎訓練で人を育ててるでしょ? 空きってある? 自衛官も訓練に参加させたいと思ったんだ」

『そうですね、今空きはありません、ですが適性のある冒険者に声をかけて空きを増やす事が出来るかもしれません。1日時間をください』
「そっか、出来れば訓練を受ける自衛隊を500人、最低でも100人受け入れたいんだ」
『分かりました』

「うん、ありがとう、手間をかけるね」
『いえ、政府と込み入った事がある様なので、状況は推察できます』
「そ、そっか、その事は内密に進めて欲しい」
『分かりました、では』
「どうも~」

 防衛大臣が無言で頭を下げた。
 なんだろう、表で動けない政治家か。
 きついだろうな。

 予算が少なくて防衛費を思うように増額出来ない。
 何をやっても批判を受ける。
 言い訳が出来ない。

 表と裏、様々なテクニカルな事を駆使して批判を受けないように、政権が倒れないように事を、案を潰されないように表と裏を使い分けあの手この手で事を進めている。

「そう、ですね、1日後、結果を僕の配信で知らせます。そうなったらすぐに対応して欲しいです」
 
 防衛大臣がコクリと頷いた。

「ですが、自衛官が冒険者に転職する可能性もあります。それでも大丈夫ですか?」
「そこは、問題無い」
 
「訓練を受けて海外に出て行く冒険者もいるだろう」
「そうだな、でも、それも政府は計算に入れているんだろう」

 海外に人が流出してもやらないよりやった方がいい。
 そういう判断だろう。

「今日は助かった」

 防衛大臣のスマホが鳴った。

「失礼、食事を楽しんで欲しい、私は用事が出来た」

 防衛大臣が料亭から出て行った。
 ごうがスマホを眺める。

「また溢れ出しか、四国で被害が出ているぜ」
「次は四国じゃなくて九州に行くんだよなあ」
「九州も四国も中国地域も全部行く。達也、頼んだぞ」
「うん、政治家も大変だな、しがらみだらけか」

 口やかましい国民、批判だけで改革案を出さない野党、派閥、ネットの炎上、様々な爆弾をかいくぐり、表と裏を使い分けて政治の技量をフルに使い完全に進められない中で潰されない程度に事を進める。

 政治には、あまり関わりたくないと思った。
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