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第64話

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【白金豪己視点】

 俺は野球ができるドームの場所を押さえていた。
 ドームの中心には俺が立つ。
 その周りにたくさんの画面が俺を囲む。

 テレビ、ネット、達也が向かってくる様子を映し出している。
 日本には希望が無い、だがそんな中達也は皆に希望を与えている。
 安全が失われた日本でモンスターを高速で狩り続けている。
 
 そして今だけ、その時だけの日本に未来の冒険者を育てる種を蒔いている。
 ウエイブウォークが活躍しているのは達也のおかげだ。
 達也、もっと上に行け!


 会場には魔石やドロップ品を集計する冒険者組合のスタッフと機材の数々が並ぶ。
 観客席にはマスコミと一般客が満席で座る。

 ドームの巨大画面にはここに向かってくる達也とデュラハンキラーの配信が映し出された。

「「わああああああああああああああああああああああああ!」」

 テレビを見ると各社が達也の様子をライブ配信している。

『ドーム前では物々しい雰囲気が漂っています。ドロップ品を集計した後に各地に運ぶ車とそれを護衛する警察車両が並びます』

『数百億とも言われる達也さんのドロップ品の窃盗に備えて警察は万全の準備で望んでいます』

 外の様子は問題無い。
 ドーム内部でも中継が行われている。

『たった今達也さんを乗せたバスがここに向かっています! ドーム内の巨大画面に達也さんが映し出されました』
『ナイスバズリ散らかしイベントの内容は達也さんに知らされていないようです。達也さんの顔は度重なるモンスターをの戦いの為かぐったりした表情を見せています』

 TV局のスタジオでも達也のコメントが流れる。
 俺は前に並んだモニタをチェックしていく。

『達也さんは冒険者組合支部に向かう時間すら惜しんでモンスターを倒し続けてきました。達也さんが北海道と東北のダンジョンに向かった理由を解説お願いします』

『北海道と東北って広いしここから遠いでしょ? モンスターの溢れ出しが起きるたびに自衛隊が念には念を入れて駆けつけるので移動時間がかかるわけです。その費用だけで財政を圧迫します』

『なるほど、ですがそれなら人の多い関東のダンジョンに行くでも良かったと思いますが?』

『関東は人が密集してますし交通インフラが充実していて、冒険者の数が多い為現状対処可能です。しかしもし北海道のダンジョンで大規模なモンスターの溢れ出しが起きた場合各地から自衛隊が遠くの北海道まで出動する事になります。自衛隊は日本国民の命を守るのが役目ですから安全重視で人を送り込むわけです』

『それは過剰な自衛隊の移動となり無駄に思えますが、その辺はどうなんでしょう?』

『もし自衛隊の数が足りなくて犠牲者が1人でも出ればこの番組で自衛隊を叩くでしょう? でも自衛隊の数が多ければ多いで今のように無駄だと叩く、どう転んでも自衛隊が叩かれる状況です。大体ダンジョンからどの程度モンスターが溢れ出すか予想なんて出来ませんよ。戦いは不確定要素の塊ですからやる前はどうなるか分かりません。後出しじゃんけんは何の意味もありませんよ!』

 解説の男が途中から怒鳴るような口調で言った。

『し、失礼しました』
『ふう、その無駄を減らすために達也さんが動いた、そういう事です』
『は、はい、勉強不足でした』

『大体民意に従った結果が今の自衛隊不足と自衛隊がモンスターを思うように倒せない状況です! 今だけ、その時だけの守りの姿勢では未来の日本を駄目にします! 自衛隊は守りではなくもっと攻撃をする事によるモンスターの溢れ出しを未然に防止する方向に舵を切るべきです!』

 俺が配信した達也の意図が皆に伝わっている。

 あと少しで達也がここにやってくる。
 会場の空気を温める!
 俺はマイクを持って話し始めた。

「もう少しで達也がここに到着する」
「「わあああああああああああああああああああああああ!」」

「達也は多くのモンスターを倒してきた。だが中には達也に対して次のような事を言う人間もいる『自分だけお金を稼いでズルい』『才能があるから楽が出来る』こういった物だ、こういう事を言う人間は一部だと思う、だがそれでも誤解を解いておきたい」

 会場が少し静かになった。
 今から言う言葉は皆が達也を批判できないように持って行く言葉だ。
 何度も、何度も言葉を変えて同じことを言う。 
 そして日本の価値観を変えていく。

「達也は前から種を蒔いてきた。辛い訓練に耐えてきた! 伝説のレベル7パーティーウエイブライドの白帆と黒矢の忘れ形見を育ておばあちゃんを引き取り、その姉の孫の面倒を見た。そして次の世代を担うデュラハンキラーを導き、更に若い世代、ウエイブウォークも丁寧に育てた。達也が育てたダブル1期生の内1人は達也の寄付によって更に多くの冒険者を育て続けている!」

「達也の積み上げたものが! 今まで助けた人達が今、達也に恩を返そうとしている! 俺はよう、こう思うんだ、今の自分は10年、20年前の自分がやってきた事の積み重ねで出来ている! 俺が言いたい事は達也をもっと見て欲しい! 達也が短い言葉で言ったその裏にある苦労と重みをみんなに知ってほしい!」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」

 いいタイミングで来た!
 達也とデュラハンキラーが会場に入ってきた。
 達也は皆からフラッシュと歓声を浴びる。

「来たようだぜええ! 今日の主役、赤目達也がよおおおおおおおおお!」
「「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」」

 会場は歓声に包まれた。
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