魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~

ぐうのすけ

文字の大きさ
上 下
54 / 89

第54話

しおりを挟む
「自己紹介にまさかここまでかかるとは思わなかったぜ」

『兄貴お疲れ』
『癖が強いのが数人もおるからのう』
『だがそういう人がいないと面白くない』

 ごうのセリフは本当にそう思って言っている訳じゃない。
 面白くする為のセリフだ。
 癖のあるメンバーを嫌いになるのではなく面白いキャラとして楽しんで見て貰うための工夫だ。
 ごうはそうやって皆を守ろうとしている。

 最初だけはある程度段取りを決めている。
 次にする事も決まっている。

「豊香、童子、2人だけ前に出てくれ」

 ごうが2人を前に呼ぶ。

「え? 私ですか?」

『放火が何のことですか? みたいな顔しておる』
『私何かやっちゃいました?』
『分かってて言ってるだろ?』
『豊香は釣り糸を垂らすスタイル』

「ついに俺が達也の弟子になる時が来たか!!」

『来てないで』
『童子は説教される空気が分からんか』
『放火と一緒に呼ばれた時点で説教確定で草』
『魔眼を持ってるなら人の心を読めんかね?』

『読めないんじゃなくて読まないんだよ。魔眼を持っていれば人の心を読みやすくなるけど相手の動きを読んでも人の心を読まないと意味ない』
『童子は人の心を考えない無邪気なタイプだ』
『普段魔眼で目を光らせるのはマナー違反なんだよなあ』

 ごうが2人を前に呼ぶ。
 
「新は前に出なくていいの?」
「僕も新は前に出た方がいいと思うよ」

 凜と樹が提案した。

「ひでえ! 遅刻はしたけどそれ以外は何もしてないだろ」
「今回は2人だけだ」

『新はグレーゾーンでギリ助かっただけだと思うの』
『ギリギリ赤点回避なだけでよくは無いからね』
『新は自信過剰な所とたまに前に出過ぎる事があるけどそこまで悪くはない。遅刻はしたけども』
『冒険者レベル5の新より冒険者レベル6の童子と豊香から注意する考えな気がする』
『ありそうだな』

「まず豊香、炎上禁止な、今は人が多いから基本話さないでくれ」
「前向きに検討します」
「かなり前向きに検討したうえで実行してくれ」
「はい」

「次に童子、達也の弟子になろうと1日に何度もスマホに連絡するのはやめてくれ」
「弟子になったらやめよう」

 俺と達也が顔を見合わせて首を横に振った。

『童子が兄貴と達也を困惑させてる』
『童子は諦めないよな』
『何回連絡を送ったんだ? 嫌がらせになってね?』
『童子は仕方ない、いつもそういう感じだろ』

「困るんだよなあ、あまりしつこいと達也がスマホの電源を切る。それに基礎訓練の邪魔になっている」
「私のデートと配信コラボに誘った返答はまだですか?」

 豊香が笑いながら言った。

「豊香、ネタ発言はストップだ、黙ってくれ。今は童子だ2人一気に話をされると対処に困る」
「はい」

『すげえ、放火をピシャンと止めたぞ』
『後ろにいる工藤さんがうんうん頷いてて草』
『工藤さん、いつも放火と童子の世話をお疲れ様です』
『工藤さん可哀そう』

「達也、どう思う?」
「正直冒険者レベル6以降は教えられることがあるか分からない」
「そんな事は無い!」

「童子、口を閉じてくれ。デュラハンキラーからもハンドスピナーからも達也に教えて貰いたいと連絡があった。達也がウエイブウォークの指導を行うタイミングに皆をねじ込みはしたが何をするかは決めていなかった。正直レベル6の時点で強さはかなり出来上がり基本の上に個性が乗ってくる頃だ」

「俺からも言わせて欲しい。ハンドスピナーとデュラハンキラーが戦う動画を見て俺ならこうするとか感じる部分はあった。でも戦っているのはパーティー戦だ。連携によって動きは大分変ってくると思う。俺は連携の点で見ればみんなより未熟だ。俺の考えが合っているのか間違っているのか分からなかった」

「そ、そんな!」
「そこでだ、結果が出るか分からない、だがよう、打ち合ってみねえか? 達也と1対1で! 総当たりで!」
「お、俺にやらせてくれ!」

『おおおお! いいぞ! やろうぜ!』
『こういうの待ってた!』
『いいねえいいねえ!』

『兄貴! 熱いぜ!』
『目が離せない!』
『達也が戦う所を見たい!』

 コメントを見ると一気に反応が上がった。
 ごうの盛り上げ方がうまい。
 童子も好感触だ。
 他のみんなも頷いた。

「お前たちの気持ちはよーくわかったあ! 今から達也と打ち合いをする!」

 童子が前に出た。

「俺にやらせてくれ!」

『我慢できない童子』
『アタッカーはあんな感じよ、でも童子はそれが強く出過ぎている』
『ぐいぐい行くよね』

「分かった、達也、童子、剣を構えろ」
「俺は剣だけで戦った方がいいよな?」
「そうしてくれ」

「無意識に黒魔法と白魔法を使ってしまうかもしれない」
「いい、気にしない! 剣で打ち合わせてくれ」
「分かった」

「達也、童子、剣を持って構え! 3歩下がれ! 打ち合いの時間は3分だ! 俺の合図とともに打ち合いを始める!」

 ごうはさらっと3分ルールを追加した。
 これにより童子がしつこく言ってくる事は無い、はずだ。
 デュラハンキラーとハンドスピナー合わせて12人いて1人5分で計算しても1時間かかる。
 予定より早く配信が進行することはあまりなく、時間が後ろにずれていく。
 なので1人3分だけにした。

「分かった」
「早くしてくれ!」
「それでは打ち合い、始め!」

 童子が俺に斬りかかった。
 お互いに魔眼を使い剣戟を交わす。
 無数に打ち合い続けお互いに一歩も当てられないまま打ち合いは終わった。

『すげえええええええええ!』
『剣が早すぎて動きが見ないけど凄い事だけは分かった』
『達也は戦士の魔法しか使っていないのに全部防ぐのが凄い』

「達也、どうだった?」

 童子がワクワクしたような顔で聞いてくる。

「正直、これをこうすればいいと思える部分は見当たらなかった」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお! やったぜ!」

『童子、喜んでるけど達也は最初の位置からほぼ移動していないからな』
『それは俺も思ってた。童子だけステップを多用してたけど達也は向きを変えるだけでその場から動かんのよな』
『童子はかなり強いはずなのに達也の動きは余裕に見えた』

 これで童子は満足するだろう。

「次! 前へ!」


 ◇


 ウエイブウォークは見学は見学でそれ以外の戦士全員と打ち合い、その後白魔法を使う皆に攻撃を耐えて貰い、次は黒魔法の打ち合いをした。
 配信は盛り上がりコメントが滝のように流れた。

 最後に豊香と対峙する。

 その瞬間に皆が後ろに下がった。
 豊香は範囲攻撃をするボムが得意だ。
 みんなが巻き添えを恐れたのだ。

 デュラハンキラーのメンバーがすっと頭を下げた。
 童子だけは楽しそうに観戦している。

「本気で撃ってもいいですか?」
「いいぞ、いつでもいい、ただし避けられないと思えば黒魔法以外も使う」
「いいですね、こっちから行きます。ボム!」

 チュドーン!

 黒魔法の範囲攻撃を魔眼と身体強化で何とか避けた。
 豊香の魔法発動は速い。

「メガボム!」

 チュドドドーン!

 ボムより更に範囲の広い攻撃に俺は上に飛んだ。
 走って空を駆けあがる。

「ふう、あっぶね」
「これも避けますか」
「なんとかな、メガボムってピンポイントバリアやツインハンドみたいな固有の技だろ?」
「そうです」

 固有の技は冒険者レベル7になる者が覚える事が多い。
 基本を納めた先に個性が出てくる、それがツインハンドなどの技に昇華される。

「撃って来ていいですよ」
「ツインハンドを使う」

 手加減したツインハンドで豊香を狙うとボムで応戦して来るが豊香はあっけなく攻撃を受けた。

「そこまで!」
「ふう、やっぱ負けちゃいましたか。達也さん、どうしました?」
「メガボムはよかった。でもどうしてショットを使わないんだ? 牽制でショットを使った方がいいのに使わなかったよな?」

 黒魔法の基本は単体攻撃のショットと範囲攻撃のボムだ。
 ボムだけで戦えば魔力消費が多い、燃費が悪くなるのだ。
 そしてショットの方が連続発動できる為牽制に向いている。

「ショットを狙うのが苦手で、ボムを使っている内にそれだけで戦うようになっていました」
「メガボムの尖った攻撃は良いんだ、他の人が出来ない攻撃だから、でもショットが苦手だと魔力切れが怖いな」

 豊香はボムが得意すぎたんだろう。
 そして魔法の発動が早い。
 他の高い能力とパーティー協力でショットを使わず何とかやってきたのかもしれない。

「練習した方がいいですよね?」
「そう、だな」
「分かりました。ウエイブウォークと一緒に達也さんの訓練を受けます」
「……え?」

『放火がウエイブウォークの達也指導にぬるっと入ってきた!』
『これで定期的に達也さんに会える、そんな作戦』
『放火嫌い!』

 結局豊香は炎上した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

処理中です...