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第14話
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俺は皆が冒険者組合に来る1時間前から待機していた。
そしてごうがみんなを連れてダンジョンに向かう。
俺はみんなを見送ると思わせてダンジョンに向かう。
ダンジョンに入るわけではないがダンジョン前で待機する。
「達也さん、行くんですか?」
「ダンジョンの前までな」
「冒険者の資格を取ればいいでしょう? 一緒にダンジョンに入れます」
「いや、それはまだだ」
「いつでも大歓迎ですよ」
「いや、まだいい」
「では、いつ復帰するんですか?」
「沙雪の手がかからなくなったらだ」
「手はあまりかからないでしょう」
「何かあった時に備えて手は空かせるつもりだ」
「ではもし沙雪さんが寮のある高校に入ったらどうですか?」
「悲しくなるからやめてくれ」
「そうではなくて、寮に入れば手はかからなくなります。冒険者に復帰しても問題は無いでしょう」
「……考えておく。今はダンジョン前にいるだけでいいから」
「ええ、気長に待っています」
「すぐ帰って来る」
「……ええ、気長に待っていますよ」
俺と奈良君は噛み合わない会話をして冒険者組合を出た。
冒険者組合を出てから奈良君は最後まで冒険者に復帰する話をしていた事に気づいた。
俺はダンジョンの入り口に向かった。
みんながダンジョンに入った事を確認するとパソコンを開き、スマホのテザリングでネットにつなぐ。
ごう・新・凛・樹がダンジョン内を歩く。
『うおおおおおおおおおおおおおおおお! 見てみ! ドローンがちゃんと動いてるぞ! へへへへ! 俺の美技を見せるぜ!』
新、はしゃぎ過ぎだ。
『新、1人だけで走り出さないでよね?』
『へへへへ!』
『新、1人だけで走り出さないでよね!』
『2人で騒ぐからゴブリンが来るぜ。ダンジョンで騒ぐのは良くねえな』
『凜、騒ぎ過ぎだってよ』
『私!』
ごうの言葉があっても新はまだはしゃぎ続けている。
『前を見て集中しろ! 構えろ!』
6体のゴブリンが現れた。
新が前に出た。
『ちょっと新!』
『いい、新は疲れるまで好きにさせる』
ごうは走り回る犬を疲れさせるように新を放置した。
『おりゃあああ! ショット!』
ゴブリンが出てくると人差し指を立ててゴブリンに向けて黒い魔法弾を放った。
新の籠手には杖の効果があり杖無しでも魔法威力を高められる。
『『グギャアアアアアアアアアアアアアア!』』
ゴブリンすべてを倒した。
次のゴブリンが出てくると違う魔法を使う。
『ボム!』
『『グギャアアアアアアアアアアアアアア!』』
新が前に手を向けると前方に黒い爆発が発生してゴブリンをまとめて倒した。
『もっと奥に行く』
ごうは新に何も言わず先に進んだ。
奥に進むと新は前に出て片っ端からゴブリンを倒していく。
『おりゃあああああああああ!』
ザンザンザン!
新の両手剣でゴブリンを斬り倒す。
新の戦闘スタイルは杖の効果を持つ籠手の黒魔法と両手剣のダブル。
攻撃的な戦闘スタイルになる。
ごうは新を見守る。
ドローンの全方向カメラが苦笑するみんなを映し出す。
『はあ、はあ、はあ、はあ、おりゃああ! ショット! ボム!』
チュドーン!
パンパンパンパン!
ザンザンザンザン!
『新、そろそろ他のメンバーにも戦わせたい。休憩しないか?』
『はあ、はあ、はあ、少し休むとするか』
『スポーツドリンクだ』
『サンキュー。ごくごく! ぷはあああああ! 楽しいいい!』
『みんなも遠慮せず力を試してくれ!!』
他のみんなもゴブリンと戦い始めた。
樹は凛のサポートに回る。
凜が杖を掲げた。
黒い魔法弾を作ってゴブリンに飛ばし倒していく。
凜も問題無い。
更にあえて攻撃をせずにゴブリンを引き寄せると前方にバリアを発生させた。
ゴン!
『グベエエ!』
ゴブリンがバリアにぶつかり動きが止まった瞬間に黒い魔法の弾を発生させてゴブリンを倒す。
近くにいた新が軽く腕を斬られた。
『ミスった! おりゃああ!』
傷を受けながらも新はゴブリンを斬り倒した。
『ヒール! 痛みはない?』
魔法で腕の傷を癒した。
凜は黒魔法と白魔法を使いこなすタイプで杖で攻撃も防御も回復も可能だ。
『かすり傷だ』
『もお、ぼおっとしすぎ』
『次は当たらねえよ』
樹はゴブリンに包囲しそうになるのを見逃さず引き付けてサポートする。
『樹、気を使わずに前に出て戦ってみろ!』
『はい!』
樹が前に出るとゴブリンに右手の円盾をぶつける。
そして左手の剣で仕留める。
ゴブリンが一斉に襲い掛かってきてもバリアで後ろのゴブリンだけ足を止めて分断させた。
飛び掛かるゴブリンにバリアや盾をぶつけて剣で倒す。
攻撃を受けても焦らず対処して隙を見て白魔法で回復していた。
樹は剣と盾で戦うカウンタースタイルでタンクのような戦い方だ。
戦士の力と白魔法の防御や回復魔法を織り交ぜるスタイルで安定感がある。
だがどうしても攻撃的な新や遠距離攻撃が出来る凜に比べてモンスターを倒す速度が遅い。
そして凜や新のように杖となる装備を付けていない。
将来的には杖無しの方が強くなることを伝えて樹はその通りにしてもらった。
俺が皆にプレゼントした武具を樹は今でも身に着けている。
だが、その事で今みんなよりも魔法の威力が出ていない。
殲滅力でも魔法威力でも後れを取れば樹の自信を付けるどころか逆効果になりかねない。
樹の顔を見ると暗いままだ。
何度も繰り返し樹に声をかけるべきだろう。
杖無しで戦うスタイルは今苦しくても後で楽になると何度も言おう。
そして前に立ちモンスターの足を止めるタンクは一見目立たなくてもパーティーにとって心強い存在である事を何度も言う必要がある。
樹だけではない。
タンクタイプだけでもなくダブル候補者全員がそれを理解する必要がある。
俺はその日からみんなに5分だけでも話をする事に決めた。
みんなが帰って来ると俺の想いを伝えて解散した。
そして週に1度ダンジョンに入る事もその場で決まった。
ごうは他のダブル候補生もダンジョンに連れて行ってくれるようだ。
ごうには敵わないな。
達也は気づいていない。
この配信が動画で公開され視聴回数が増えていく事を。
そして樹・新・凜のパーティーがバズり、配信や動画で『達也先生』の名前が何度も出る事を。
そしてごうがみんなを連れてダンジョンに向かう。
俺はみんなを見送ると思わせてダンジョンに向かう。
ダンジョンに入るわけではないがダンジョン前で待機する。
「達也さん、行くんですか?」
「ダンジョンの前までな」
「冒険者の資格を取ればいいでしょう? 一緒にダンジョンに入れます」
「いや、それはまだだ」
「いつでも大歓迎ですよ」
「いや、まだいい」
「では、いつ復帰するんですか?」
「沙雪の手がかからなくなったらだ」
「手はあまりかからないでしょう」
「何かあった時に備えて手は空かせるつもりだ」
「ではもし沙雪さんが寮のある高校に入ったらどうですか?」
「悲しくなるからやめてくれ」
「そうではなくて、寮に入れば手はかからなくなります。冒険者に復帰しても問題は無いでしょう」
「……考えておく。今はダンジョン前にいるだけでいいから」
「ええ、気長に待っています」
「すぐ帰って来る」
「……ええ、気長に待っていますよ」
俺と奈良君は噛み合わない会話をして冒険者組合を出た。
冒険者組合を出てから奈良君は最後まで冒険者に復帰する話をしていた事に気づいた。
俺はダンジョンの入り口に向かった。
みんながダンジョンに入った事を確認するとパソコンを開き、スマホのテザリングでネットにつなぐ。
ごう・新・凛・樹がダンジョン内を歩く。
『うおおおおおおおおおおおおおおおお! 見てみ! ドローンがちゃんと動いてるぞ! へへへへ! 俺の美技を見せるぜ!』
新、はしゃぎ過ぎだ。
『新、1人だけで走り出さないでよね?』
『へへへへ!』
『新、1人だけで走り出さないでよね!』
『2人で騒ぐからゴブリンが来るぜ。ダンジョンで騒ぐのは良くねえな』
『凜、騒ぎ過ぎだってよ』
『私!』
ごうの言葉があっても新はまだはしゃぎ続けている。
『前を見て集中しろ! 構えろ!』
6体のゴブリンが現れた。
新が前に出た。
『ちょっと新!』
『いい、新は疲れるまで好きにさせる』
ごうは走り回る犬を疲れさせるように新を放置した。
『おりゃあああ! ショット!』
ゴブリンが出てくると人差し指を立ててゴブリンに向けて黒い魔法弾を放った。
新の籠手には杖の効果があり杖無しでも魔法威力を高められる。
『『グギャアアアアアアアアアアアアアア!』』
ゴブリンすべてを倒した。
次のゴブリンが出てくると違う魔法を使う。
『ボム!』
『『グギャアアアアアアアアアアアアアア!』』
新が前に手を向けると前方に黒い爆発が発生してゴブリンをまとめて倒した。
『もっと奥に行く』
ごうは新に何も言わず先に進んだ。
奥に進むと新は前に出て片っ端からゴブリンを倒していく。
『おりゃあああああああああ!』
ザンザンザン!
新の両手剣でゴブリンを斬り倒す。
新の戦闘スタイルは杖の効果を持つ籠手の黒魔法と両手剣のダブル。
攻撃的な戦闘スタイルになる。
ごうは新を見守る。
ドローンの全方向カメラが苦笑するみんなを映し出す。
『はあ、はあ、はあ、はあ、おりゃああ! ショット! ボム!』
チュドーン!
パンパンパンパン!
ザンザンザンザン!
『新、そろそろ他のメンバーにも戦わせたい。休憩しないか?』
『はあ、はあ、はあ、少し休むとするか』
『スポーツドリンクだ』
『サンキュー。ごくごく! ぷはあああああ! 楽しいいい!』
『みんなも遠慮せず力を試してくれ!!』
他のみんなもゴブリンと戦い始めた。
樹は凛のサポートに回る。
凜が杖を掲げた。
黒い魔法弾を作ってゴブリンに飛ばし倒していく。
凜も問題無い。
更にあえて攻撃をせずにゴブリンを引き寄せると前方にバリアを発生させた。
ゴン!
『グベエエ!』
ゴブリンがバリアにぶつかり動きが止まった瞬間に黒い魔法の弾を発生させてゴブリンを倒す。
近くにいた新が軽く腕を斬られた。
『ミスった! おりゃああ!』
傷を受けながらも新はゴブリンを斬り倒した。
『ヒール! 痛みはない?』
魔法で腕の傷を癒した。
凜は黒魔法と白魔法を使いこなすタイプで杖で攻撃も防御も回復も可能だ。
『かすり傷だ』
『もお、ぼおっとしすぎ』
『次は当たらねえよ』
樹はゴブリンに包囲しそうになるのを見逃さず引き付けてサポートする。
『樹、気を使わずに前に出て戦ってみろ!』
『はい!』
樹が前に出るとゴブリンに右手の円盾をぶつける。
そして左手の剣で仕留める。
ゴブリンが一斉に襲い掛かってきてもバリアで後ろのゴブリンだけ足を止めて分断させた。
飛び掛かるゴブリンにバリアや盾をぶつけて剣で倒す。
攻撃を受けても焦らず対処して隙を見て白魔法で回復していた。
樹は剣と盾で戦うカウンタースタイルでタンクのような戦い方だ。
戦士の力と白魔法の防御や回復魔法を織り交ぜるスタイルで安定感がある。
だがどうしても攻撃的な新や遠距離攻撃が出来る凜に比べてモンスターを倒す速度が遅い。
そして凜や新のように杖となる装備を付けていない。
将来的には杖無しの方が強くなることを伝えて樹はその通りにしてもらった。
俺が皆にプレゼントした武具を樹は今でも身に着けている。
だが、その事で今みんなよりも魔法の威力が出ていない。
殲滅力でも魔法威力でも後れを取れば樹の自信を付けるどころか逆効果になりかねない。
樹の顔を見ると暗いままだ。
何度も繰り返し樹に声をかけるべきだろう。
杖無しで戦うスタイルは今苦しくても後で楽になると何度も言おう。
そして前に立ちモンスターの足を止めるタンクは一見目立たなくてもパーティーにとって心強い存在である事を何度も言う必要がある。
樹だけではない。
タンクタイプだけでもなくダブル候補者全員がそれを理解する必要がある。
俺はその日からみんなに5分だけでも話をする事に決めた。
みんなが帰って来ると俺の想いを伝えて解散した。
そして週に1度ダンジョンに入る事もその場で決まった。
ごうは他のダブル候補生もダンジョンに連れて行ってくれるようだ。
ごうには敵わないな。
達也は気づいていない。
この配信が動画で公開され視聴回数が増えていく事を。
そして樹・新・凜のパーティーがバズり、配信や動画で『達也先生』の名前が何度も出る事を。
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