深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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終章

グレス、魔将を倒す

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 イツキと俺の対決が決まり、イツキが怒って城から出て行くと、王が俺に謝った。

「すまなかった。イツキの敵意を集めさせてしまったな」
「いや、いいんだ。俺はダンジョンの消滅に戻る」

「対決はどうするのだ?」
「無視する。今はダンジョンを消滅させる。皆をレベルアップさせたいんだ」

 俺は人材への投資を何よりも優先する。
 そうすれば皆が勝手に魔物を倒してくれるし、みんなの稼ぎも良くなる。

 それにこうなる事は予想済みだ。
 あいつ元の世界にいた俺の上司に似ている。
 何かあると反射的に人のせいにしてよく分からない悪口を言って来る。
 俺がイツキを煽る為のセリフもあらかじめ用意してあったし、王が勝負で決着をつけるよう言ったのも事前に口裏を合わせてあった。

 タケルがプライドの高い人間だとすれば、イツキは頑固で思い込みが激しいのが悪く出た感じの人間だ。
 まともに対応しても勝手に俺を悪者にし続け、話がおかしくなり続けるだろう。

 俺とイツキが対決をする、と見せかけて俺はダンジョンを消滅させつつ皆のレベル上げをする。
 別にイツキが魔将を倒しても構わないし負けてもいい。

 あいつはこれからデコイとして機能してもらおう。
 魔将にはイツキをマークしてもらい、俺達はその隙にダンジョンを消滅させ、【黒い石】を無効化させる。

 黒い石はダンジョンのコアに瘴気を急速チャージさせ、容量オーバーさせる仕組みだが、その為のダンジョンが少なくなれば魔将の打てる手を減らせる。
 俺はひたすら時間加速と空間転移で物資の受け渡しをこなし裏方に回った。


 ◇


【一か月後】

「報告します。すべての部隊は順調に魔物を狩っております。グレス殿の兵も順調に魔物を狩っております。やはり上級ダンジョンで皆がパワーアップしたおかげでしょう。流石ジュン様です」

「皆のおかげだ。上級ダンジョン1つを残してダンジョンを消滅させるにはどのくらいの時間がかかるだろうか?」

「恐らくあと半月もかからないでしょう。それと、聖騎士イツキの件ですが」
「また何かやらかしたのか?」
「どうやら魔将に苦戦しているようです」

「まあ……ボッチだからな。苦戦するのは仕方がない。しぶとい奴だから、注意を引くには打ってつけだ」
「ダンジョンの消滅が終われば、ついに動くのですな?」

「そうだな。でも、念入りに行う」
「手はず通りに!」



 俺達はダンジョン消滅を終わらせると、魔将の元に向かった。



【万能の魔将ゴブル視点】

「イツキはまた撤退していきます!」

 部下ゴブリンが報告する。

「あいつは間抜けごぶ。あんなに自信満々でかかって来ていつも逃げ帰るごぶ。とりえはしぶとさと逃げ足の速さだけごぶ」

「東の方角から奇襲を受けています」
「またごぶか。お前らで適当に追い払うごぶ」

 まったく、イツキはしつこいごぶ。
 だが、止めだけはなかなかさせないごぶ。
 ん?反対方向から人の気配?

「それが、複数の敵が迫ってきています!」
「おかしいごぶ、イツキじゃないごぶか?」

 振り向くと、2人の男が歩いてくる。

「誰ごぶ?」

「投資家のジュンだ」
「剣聖、グレスだ」

「どうやってここまできたごぶ?見張りの部下はどうしたごぶ?」
「優秀な仲間が全部倒した。お前が万能か。剣聖グレスと闘ってくれ」

 グレスが剣を構えて前に出る。

「たった一人で魔将の俺に勝負を挑むごぶか?」
「グレス、魔将相手に礼儀を尽くす必要は無い。すぐ殺してくれ」

「分かりました!」

 グレスがいきなり両手剣で斬りかかってきた。

「おわ!いきなりすぎるごぶ!」

 咄嗟に剣を取り出して受ける。
 こいつ!強い!

「分かったごぶ。お前の強さは認めるごぶよ。こっちも本気を出すごぶ。万能の力を思い知るごぶ」

 俺の力は【万能】。
 剣も魔法も遠距離攻撃もすべてを使いこなす。

 杖の効果を併せ持つこの剣で氷の矢を発生させる。
 更に剣に炎の魔法をかけ、炎の魔法剣を使う。

 そう、俺は同時に複数の攻撃を使いこなし、剣と魔法の矢で一気に敵を攻撃する事で倒して来た。
 倒される前に相手を圧倒的な力でねじ伏せる。

 これが俺の万能の力!

 グレスが剣を俺に向けて近づいてくる。

 俺は、あっという間に斬られて倒された。
 体が黒い霧に変わって消えていく。

「ぐえええ!な、何が、起きたごぶ?」

「グレスのレベルは100を超えている。そして剣聖の力で戦闘力はプラス25ポイントされるんだ。グレスは、多分イツキより強い」

 投資家が死にゆく俺に言った。

「【呪い】や【軍】の魔将より、お前の方がやりやすいな。ま、倒したのはグレスだけど」
 俺が、霧のように消えていく。
 意味が、分からない。


 



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