深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

文字の大きさ
上 下
100 / 113
投資はコツコツ続ける地味な作業だ

砂遊びのマナ②

しおりを挟む
 エルウィン王国のダンジョンは、王都近くのダンジョンを残してすべて消滅させた。

 最後の消滅予定ダンジョン消滅させると、グレスはほっとした顔をした。

「グレス、お疲れ様、他の兵士もだけどみんなのおかげだ」
「それはこちらのセリフです」

 俺とグレスが握手をする。

「はわわ!これは小説のあのシーンの再現ですわ!」
「あの小説ってどんな内容だったんだ?」
「そ、それは言えませんわ」

 エルルは小説の内容を言わない。
 もう10回以上聞いているが頑なに言わないのだ。
 ワインを飲ませてみたがそれでも言わなかった。
 ち、うまくいかない。

 出来る事をしよう。
 今はエルウィン王国だ。
 兵士を休ませたい。
 
「グレス、エルウィンの王都に帰ろう。前より王都の風景は変わっているはずだ」
「内政の英雄の力でしょうか?」
「いや、ドリアード族の力だ」
「そう言う事にしておきましょう」

 そう言ってグレスはさわやかに笑った。
 さっきからエルルが俺とグレスの会話を注意深く見守って顔を赤くしている。
 恐らく俺とグレスのBL展開が小説に書かれている。

 俺はもやもやを抱えたまま王都に向かった。




「こ、これは凄い!」

 グレスが驚愕する。

「また変わってる!」

 ドリアード族が『作る所』と言っていた場所は生産区になっていた。
 前は砂遊びをしているように見えていたドリアード族の計画は理にかなっていた。

 生産区は居住区から離れて騒音や煙問題が出ないようにしていた。
 更に所々ある無駄に高く建てられたように見える建物は見張り台として機能していた。

 エルフが見張り台の上から叫ぶ。

「魔物だ!戦闘態勢!容易!」

 エルフが見張り台から出て来て木の上から一方的に魔物を攻撃し、あっという間に魔物を全滅させた。
 王都の防衛力は少ない人数でも強化されているようだ。

 フロント王国のように防壁は無いが、誘い込んで射殺すような仕組みになっているのが見張りのエルフの動きを見ればわかる。

 エルフの戦闘が終わると俺達はドリアード族が作った球状の総合ギルドに向かう。

「こ、これはなんなのですか?」

 グレスも前衛的なオブジェクトを見て驚く。

「総合ギルドだ。宿屋多めの総合ギルドだな」
「そ、総合ギルド!」

 中に入ると受付のフィルが出迎える。

「もう盗みを働く者は捕まったのか?」
「はい、ほぼ捕まえました。ここで受付をしているだけで聖地巡礼のエルフが勝手に訪れますから簡単でしたよ」

「兵士のみんなを休ませたい」
「ジュンは中央の部屋に案内しますね」

 そこにマナがやってきて俺の服を掴む。

「使って」
「ん?」
「時間加速、使って」
「中央の部屋で使えばいいのか?」

 マナがこくりと頷く。
 俺は中央の部屋に入ってすぐに時間加速を使った。

『時間加速が強化されました』

『効果範囲が半径10メートルに拡張されました』

「効果範囲が半径10メートルに増えた」

 マナは「フィルに、言って来る」と言ってすぐに出て行った。

「あの、思ったことがあるのですわ」
「なんだ?」
「マナ様が作ったこの球体は、ジュン様の時間加速に合わせて作られているのでは?」

「そうか?」
「そうですわ、この球体の直径は30メートル、ジュン様の効果範囲は半径15メートルに広がるのでは?」

 そうなれば時間加速のスキルでこの球体すべてをカバーできる。

「俺のスキル強化を先読みしているのか?」
「その可能性もありますわ」

「ま、まさか」
「で、ですがジュン様のスキルは効果範囲のみが上昇していますわ。そして、半径15メートルは中心部の区画から周辺の第二区画に広がっていますわ」

「時間強化を鍛えてみよう」
「時間強化を何度も使ってみるのですわ」

 俺とエルルは同時に言った。
 それから俺は時間加速のスキルを使い続けた。
 高回転で宿屋は回り、最初はテント暮らしを予定していたグレスの1000の兵は皆宿屋で十分な休息を取ることが出来た。

 短期間で休息を終えた兵士・エルフはすぐに仕事を開始し、王都近くの魔物とダンジョンの魔物も狩りだした。

 そして、


『時間加速が強化されました』

『効果範囲が半径15メートルに拡張されました』

『時空魔法、空間転移を取得しました』

「まじでか。本当に半径15メートルまで強化された。しかも空間転移ってワープだよな?」

 マナは俺の膝に座って果実水とアップルパイを食べている。

「マナ、俺のスキル強化を予測できるのか?」

 マナはフルフルと横に首を振った。

「なんとなく、そんな気がしただけ」

 ドリアード族は、スピリチュアル系だよな。

 ドリアード族は森の賢者、か。

 間違っていないのかもしれない。






しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。 独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。 が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。 再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。 独自世界のゆるふわ設定です。 誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。 毎日0時にアップしていきます。 タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。 よろしくお願いします。 ※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。 ※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...