深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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投資はコツコツ続ける地味な作業だ

エルフはドリアード族の訪問を頑なに願う

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「この国の問題をひとことで言うと、節々の弱った老人だ」

「それがこの国の印象でしょうか」

 グレスの言葉に俺は頷く。

「そうだ、この国を見たが大きな問題を発見できなかった。人口問題が大きいが、それはすぐに解決できない。小さな問題が何個もある。厄介だな」
「1つの事を解決しただけでは変わらないから、ですわね?」

「そうだ、複数の対策を同時にいくつも進める必要がある。すぐに王城に戻ろう!」

 俺達は王城に戻る。



 王城の前に椅子が置かれ、そこにマナが座っていた。
 マナはジュースを飲みながら日の光を浴び、行列を作るエルフと握手をしていた。
 椅子の横にはアップルパイが置かれ、片手でアップルパイを食べようとして地面に落とす。
 いつも笑顔のマナが悲しそうな顔をした。

 その瞬間にエルフが叫ぶ。

「アップルパイをすぐ作る!」
「私のストレージに入っているわ!」

 テーブルにアップルパイが置かれる。
 マナが王のようだ。

「なに?これなに?」

 そこにウサットがやって来る。

「おお!丁度いい所に来られましたな!今交渉に苦戦しております!どうか中へ!」

 ウサットが苦戦するなら俺でも無理じゃないか?
 中に入ると女王の横に幹部と思われる者がずらりと並ぶ。

「丁度いい所に来ましたね。内政の英雄が居なければ話が始まりません」
「どういうこと?」

「文官の私が説明します。単刀直入に言います。100のドリアード族の訪問をお願いします!」

 それ説明じゃねえよ!
 要望だろ!

「今国が衰退し、危機的状況だけど、何で必要なんだ?今ドリアード族はロングスパン領の農耕で大きな成果を上げている。この国は野菜も微妙に不足していたよな?」

「ドリアード族は我らの希望であり夢なのです!!」
「そうよ!ドリアード族を呼んでここで農業をやればいいじゃない!!」
「ドリアード族が来ればみんなやる気が上がるわ!!」

 圧が凄い。
 ドリアード族の話になると急に感情的になる。
 エルフってそういうものなのか?

「だが、ドリアード族の考えもある。無理に移民するように強制するものじゃないだろ?」
「内政の英雄が働きかければ行けます!!この小説にも書かれています!」
「その小説を寄越せ!!」

 エルフは小説を隠す。

「そんな事よりドリアード族です!」
「その小説を出してくれ!」

 会議は荒れに荒れた。



【1時間後】

「分かった。ドリアード族を呼ぶよう働きかけたらその小説を見せてもらう。それでいいな?」

「……それとこれとは話が別です」
「なんでだよ!」




【3時間後】

 俺達は食事を囲みながらまだ議論が終わらない。

「なあ、まずこの国の問題を解決してからドリアード族を呼ぶのがいいんじゃないか?もう秋になるだろ?ドリアード族が移動する時間が無駄だ。冬になれば野菜を作れなくなる」

「まずドリアード族を呼んでから問題の解決に当たるのがいいわ」
「まずドリアード族を最優先し、その後で我らは全力で問題解決に努力します。まずドリアード族なのですよ」

「そうはならないだろ!」



【5時間後】

「もう夜だ。早く決めよう」

「内政の英雄殿がドリアード族を最優先で呼ぶと約束すれば会議はすぐに終わりますな」

 こいつら、ドリアード族の事は絶対に譲る気が無い。
 効率が悪くなるだろ!
 食料が微妙に足りない今ドリアード族を移動させるってなんだよ!
 その間食料生産の効率が落ちる。
 冬になったら作物を育てられないだろ!

 ドリアード族は移動が遅いんだ。
 最悪チョウチョを追いかけて迷子になる。

 ウサットが俺を見てフルフルと首を横に振る。
 もう打つ手はないか。

「分かった。呼んでみよう」

 大歓声に包まれる。
 エルフ同士で抱き合って涙を流す者も居る。
 
「幹部とグレス、メイドも全員集合だ」

 幹部とグレス、メイドが集まって来るが、エルルも集まって来る。

「メイド9人はここの王の下でしばらく働いて欲しい」
「「分かったよ」」

「マナだけど、ここで野菜や穀物を育てて欲しい。収穫なんかは、エルフがやるだろう」
「分かった」

 エルフがしゃしゃり出てくる。

「お任せください!」
「私達に任せて!」
「何の心配もしなくていいわ」

 こいつら、マナをここに永住させようとしている。
 分かりやすい。

「次にリースだけど、ここで盗みが起きている。犯人逮捕をしてくれ。強引に押さえつけてもいい。王から許可は貰っているからな」
「わかったにゃあ。フィルが居ればもっと楽だにゃあ。まだチャージは終わらないのかにゃ?」

「終わらない。しばらくかかる」
「わかったにゃあ」

「グレスはここでダンジョン消滅を始めてくれ」
「分かりました」

「最後にラビイとウサット、一旦ロングスパン領に戻る」

「私は道の整備なのです?」
「そうだ、交易を復活させたい。護衛もつける予定だ」
「魔物を狩りつつ道の整備をするですよ?」
「その認識で合ってる」

「私ははドリアード族の移動と護衛ですかな?」
「いや、食料生産だ」

「ジュン様、お言葉ですが、我らマッチョ100を使えば一気にドリアード族を運ぶことが出来ます。倒木があっても押し退け、川があっても難なく台車を持ち上げ、走ってここまで運ぶ事が出来るのです」

「それは考えたが、今回はただでさえウサットの負担が大きくなる。これ以上負担を増やせば仕事を圧迫する」
「構いません。筋肉に試練を。その一言だけでいいのです」

「わ、分かった。後は俺の方でマッスル・アイアンに鉄の増産をお願いしてくる。微妙に鉄も足りないらしい」
「それもわたくしが伝えます」

「マッチョ100の人員には漁師やファーマーが多い。ウサットの負担増大はマッチョ100の負担に直結するだろ」
「筋肉に、試練を!」
「分かった。頼む」

 正直マッスル・アイアンと話をしなくて良くてほっとしている。
 あいつ話がかみ合わないんだよな。
 その点ウサットなら大丈夫だろ。

 今回は皆に役割がある。
 グレスはダンジョン消滅。
 リースは盗みの撲滅。
 マナは食料生産。
 ラビイは道づくり。

 特にウサットの負担は大きい。
 食料生産から領の管理、マッスル・アイアンとの調整やドリアード族を運ぶ件。
 やる事が多くなる。

 俺は、何をしよう?
 頼りになる皆は忙しくなる。
 やる事が無かったら、グレスの所にでも行くか。

 じーーーー!
 視線を感じる。

「わたくしは何をすればいいでしょう?」
「手伝ってくれるのか?」
「はい!頑張りますわ!」

「そうだな、今回はウサットの負担が大きい。もしドリアード族がここに来てくれるなら、先行して斥候をしつつ魔物を倒したい」

「分かりましたわ!」

「「私達も行きます!!」」

 エルフも大勢名乗りを上げた。
 どんだけドリアード族が好きなんだよ。

「ま、待ってくれ。まだドリアード族が来てくれるか分からないんだ」
「行きます!」
「行くわ!来てくれなかったとしてもドリアード族の木の城を巡礼するわ!」

 やりにくいんだよなー。
 来ないでくれないかなー。
 お前らドリアード族の事になった瞬間目が怖いし。

 いつもの自然でさわやかな笑顔はどこに行ったってくらい豹変する。
 無理だな。
 流れは止められない。

 今日は休もう。
 こうしてエルフの国に来て次の日には、ロングスパン領に戻ることが決まった。



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