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投資はコツコツ続ける地味な作業だ
エルウィン王国へ
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王の笑いが収まると、王が咳払いをした。
「そろそろ会議を始めよう」
「は!そうでしたわ」
「王女様はエルウィン王国の問題が何か分かりますか?」
「名前で、呼んで欲しいのですわ。それと呼び捨てで敬語無しでお願いしたいですわ。わたくしは王女ではありますが、人口1万程度の小国ですわ。ロングスパン領の大領主たるジュン様の下です」
エルルが上目遣いで俺を見た。
「いや、王、このフロント王国とエルウィン王国の立場は対等だ。それを崩すような真似は良くないだろ?」
「いや、エルルとジュン殿が親密な友人関係なら、問題はないだろう。それに貴族と王女が結ばれるのはたまにある事だ」
「まあ、ジュン様とわたくしが結ばれるだなんて」
エルルは両手を頬に当てて顔を赤くした。
王はエルルに問いかける。
「エルル、エルウィン王国の問題が何か分かるだろうか?」
「まあ、申し訳ありません。問題は人口の少なさですわね。そのせいでじわじわとエルフの数が減っていますわ」
「うむ、人口はすぐに解決できない問題だ。その他に何かあるだろうか?」
「小さな問題が積み重なっていて、大きな問題は見当たりませんわね」
「エルルでも問題が分からないか。これは、面倒な展開になるかもしれない。俺が見に行っても解決法が出ない可能性もある。下手をすれば長期戦になる」
「ジュン殿、私はそうなっても仕方がないと思っている。ジュン殿が解決出来ねば他の者にも無理だろう。それに、投資とはそういうものだろう?」
「……そうだな」
俺はこの世界に来るまで株式への長期投資をしてきた。
全世界とアメリカの投資信託を買い、コツコツ積み上げる。
と言ってもネットで1度毎月積み立ての設定をしてしまえば後は自動で口座から毎月定額を投資に回すことが出来た。
後はたまに株価を見て、価格が下がったタイミングで投資に追加投入していた。
そして暴落が起きてもずっと売らないで持っている。
難しいのは心を保つ事だ。
株の価値が半分になって売りたくなってもずっと持ち続ける。
俺はインデックス投資の本と、お金持ちになる本を合わせて10冊ほど読んだ。
それで良かったと思えた事は金持ちになる特別な方法を学べたとかそういう事じゃなかった。
『暴落が起きたら買え!決して売るな』
これが最大の学びだ。
そのおかげで俺はずっと投資信託を持ち続けることが出来た。
転移して使えなくなったけどな。
「そうだな、まずエルウィン王国に行ってみる。地道な作業になりそうなら、それをやろう」
「すまない。苦労をかける」
「苦労をしているのは王だ」
「ジュン様、私も連れて行ってもらえませんかな?」
「そうだな、幹部は全員連れて行こう。後は、グレスの部隊だけど、正直物資はどれだけ持ちそうだ?」
「エルウィン王国は冬になると雪が積もる。そうなれば進軍に支障をきたす。グレスの部隊がいられるのは雪が積もる前までで、兵数は1000だ。これ以上は厳しい」
この世界は日本と同じで春夏秋冬の順に季節が巡る。
今は夏の後半でもうすぐ秋だ。
冬まで100日程度か。
「グレスの部隊が1000か。かなり好条件だ。ちなみにいきなりグレスの部隊が中級ダンジョンに向かったらエルフのみんな怖がらないか?」
「大丈夫ですわ。エルウィン王国とフロント王国は昔国交がありましたし」
魔物が多くなって交易とかが苦しくなったんだったな。
「分かった。すぐに向かおう。物資の用意は出来ているな?」
「はい、準備は出来ております」
「グレスもこちらに向かっている。明日の朝には出発出来るだろう」
「明日の日の出に王都の北門出発でいいか?」
「うむ、問題無い。会議は以上だ」
俺達は明日の簡単な準備を済ませて次の日に備えた。
◇
王都の北門前にはグレスの部隊1000人が整列する。
その前にはグレスが立つ。
ロングスパン領からはフィルを除くロングスパン領の幹部、そして俺が並ぶ。
フィルは未だに魔力チャージ中だ。
俺の横にはエルルが居た。
何故かロングスパン側に並んでいるし馴染んでいた。
そして、うさぎ族メイド9人は同行予定ではなかったがついて来た。
進軍が始まるが、うさぎ族メイドとエルルが居る事でひたすら話し声と笑い声が絶えない。
「しかし、道が悪いな」
「ええ、しばらく国交を行っていませんでしたから」
完全に国交を絶っていたわけではないが、定期的に小規模の物資運搬や情報交換をするだけの細々としたつながりだったようで、道の整備が行われなくなっていた。
グレスが苦笑いを浮かべる。
道には倒木や落石により道が悪くなっていた。
「ラビイ、ウサット、即席で道の木や石をどかしてくれ。他の者は先行して魔物を狩ってくれ」
「わ、わたくしも魔物を狩りますわ」
「エルルか。どういうスキルがあるんだ?」
「わたくしは魔法攻撃と弓スキルを合わせたマジックアローのスキルが使えますわ」
「前に出た魔物に使ってみてくれ」
進行方向の前にクマの魔物が出てくる。
グルウウウウウウウウウウウウウウ!
「マジックアロー!」
エルルの前に魔法の矢が現れて熊に飛んでいき突き刺さって消えた。
「おお!かっこいいな!」
「ふふふ、他にもファイアアローやアイスアローなんかも使えますわ」
「魔法攻撃や弓も使えるんだよな?」
「ええ、ですが、弓はかさばって動きにくくなりますし、普通の魔法攻撃よりマジックアローの方が強いのですわ」
魔女っ娘かと思ってたけど、ちゃんとエルフっぽい。
「所で、マナ様と、その、握手させていただいてもよろしいですか?」
「いいぞ。嫌がったりはしないはずだ」
ウッドゴーレムに抱かれるマナはエルルと握手していた。
やっぱりエルフってドリアード族が好きなんだな。
こうして俺達は露払いをしつつエルウィン王国に向かった。
「そろそろ会議を始めよう」
「は!そうでしたわ」
「王女様はエルウィン王国の問題が何か分かりますか?」
「名前で、呼んで欲しいのですわ。それと呼び捨てで敬語無しでお願いしたいですわ。わたくしは王女ではありますが、人口1万程度の小国ですわ。ロングスパン領の大領主たるジュン様の下です」
エルルが上目遣いで俺を見た。
「いや、王、このフロント王国とエルウィン王国の立場は対等だ。それを崩すような真似は良くないだろ?」
「いや、エルルとジュン殿が親密な友人関係なら、問題はないだろう。それに貴族と王女が結ばれるのはたまにある事だ」
「まあ、ジュン様とわたくしが結ばれるだなんて」
エルルは両手を頬に当てて顔を赤くした。
王はエルルに問いかける。
「エルル、エルウィン王国の問題が何か分かるだろうか?」
「まあ、申し訳ありません。問題は人口の少なさですわね。そのせいでじわじわとエルフの数が減っていますわ」
「うむ、人口はすぐに解決できない問題だ。その他に何かあるだろうか?」
「小さな問題が積み重なっていて、大きな問題は見当たりませんわね」
「エルルでも問題が分からないか。これは、面倒な展開になるかもしれない。俺が見に行っても解決法が出ない可能性もある。下手をすれば長期戦になる」
「ジュン殿、私はそうなっても仕方がないと思っている。ジュン殿が解決出来ねば他の者にも無理だろう。それに、投資とはそういうものだろう?」
「……そうだな」
俺はこの世界に来るまで株式への長期投資をしてきた。
全世界とアメリカの投資信託を買い、コツコツ積み上げる。
と言ってもネットで1度毎月積み立ての設定をしてしまえば後は自動で口座から毎月定額を投資に回すことが出来た。
後はたまに株価を見て、価格が下がったタイミングで投資に追加投入していた。
そして暴落が起きてもずっと売らないで持っている。
難しいのは心を保つ事だ。
株の価値が半分になって売りたくなってもずっと持ち続ける。
俺はインデックス投資の本と、お金持ちになる本を合わせて10冊ほど読んだ。
それで良かったと思えた事は金持ちになる特別な方法を学べたとかそういう事じゃなかった。
『暴落が起きたら買え!決して売るな』
これが最大の学びだ。
そのおかげで俺はずっと投資信託を持ち続けることが出来た。
転移して使えなくなったけどな。
「そうだな、まずエルウィン王国に行ってみる。地道な作業になりそうなら、それをやろう」
「すまない。苦労をかける」
「苦労をしているのは王だ」
「ジュン様、私も連れて行ってもらえませんかな?」
「そうだな、幹部は全員連れて行こう。後は、グレスの部隊だけど、正直物資はどれだけ持ちそうだ?」
「エルウィン王国は冬になると雪が積もる。そうなれば進軍に支障をきたす。グレスの部隊がいられるのは雪が積もる前までで、兵数は1000だ。これ以上は厳しい」
この世界は日本と同じで春夏秋冬の順に季節が巡る。
今は夏の後半でもうすぐ秋だ。
冬まで100日程度か。
「グレスの部隊が1000か。かなり好条件だ。ちなみにいきなりグレスの部隊が中級ダンジョンに向かったらエルフのみんな怖がらないか?」
「大丈夫ですわ。エルウィン王国とフロント王国は昔国交がありましたし」
魔物が多くなって交易とかが苦しくなったんだったな。
「分かった。すぐに向かおう。物資の用意は出来ているな?」
「はい、準備は出来ております」
「グレスもこちらに向かっている。明日の朝には出発出来るだろう」
「明日の日の出に王都の北門出発でいいか?」
「うむ、問題無い。会議は以上だ」
俺達は明日の簡単な準備を済ませて次の日に備えた。
◇
王都の北門前にはグレスの部隊1000人が整列する。
その前にはグレスが立つ。
ロングスパン領からはフィルを除くロングスパン領の幹部、そして俺が並ぶ。
フィルは未だに魔力チャージ中だ。
俺の横にはエルルが居た。
何故かロングスパン側に並んでいるし馴染んでいた。
そして、うさぎ族メイド9人は同行予定ではなかったがついて来た。
進軍が始まるが、うさぎ族メイドとエルルが居る事でひたすら話し声と笑い声が絶えない。
「しかし、道が悪いな」
「ええ、しばらく国交を行っていませんでしたから」
完全に国交を絶っていたわけではないが、定期的に小規模の物資運搬や情報交換をするだけの細々としたつながりだったようで、道の整備が行われなくなっていた。
グレスが苦笑いを浮かべる。
道には倒木や落石により道が悪くなっていた。
「ラビイ、ウサット、即席で道の木や石をどかしてくれ。他の者は先行して魔物を狩ってくれ」
「わ、わたくしも魔物を狩りますわ」
「エルルか。どういうスキルがあるんだ?」
「わたくしは魔法攻撃と弓スキルを合わせたマジックアローのスキルが使えますわ」
「前に出た魔物に使ってみてくれ」
進行方向の前にクマの魔物が出てくる。
グルウウウウウウウウウウウウウウ!
「マジックアロー!」
エルルの前に魔法の矢が現れて熊に飛んでいき突き刺さって消えた。
「おお!かっこいいな!」
「ふふふ、他にもファイアアローやアイスアローなんかも使えますわ」
「魔法攻撃や弓も使えるんだよな?」
「ええ、ですが、弓はかさばって動きにくくなりますし、普通の魔法攻撃よりマジックアローの方が強いのですわ」
魔女っ娘かと思ってたけど、ちゃんとエルフっぽい。
「所で、マナ様と、その、握手させていただいてもよろしいですか?」
「いいぞ。嫌がったりはしないはずだ」
ウッドゴーレムに抱かれるマナはエルルと握手していた。
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