深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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投資はコツコツ続ける地味な作業だ

エルル

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 ギルドから出るとウサットが走って現れた。

「お帰りなさいませ」
「ウサット、街のみんなの目がいつもと違う。おかしいんだ」

 明らかにみんなに見られている。

「ふ、ふぉふぉふぉ、内政の英雄であるジュン様が注目されるのは当然」

 ウサットか。
 原因はウサットだ。
 その笑い方、満足げな表情。
 お巡りさん、こいつです。
 
 今までラビイに注意していたがラビイに注目すればウサット。
 まるでもぐらたたきのようにキリがない。

「所でジュン様、両国の使者の結果が出ました」
「おお、ついに来たか」

「すぐ王城まで向かいましょう」
「今から走って行こう。着替えないですぐ行きたい」

「王も早く進めたいお考えをお持ちです。すぐ向かいましょう」

 俺とウサットはロングスパン領を離れた瞬間全力で走る。



 王都に近づいてから速度を落とすと、遅れてウサットが追い付いてきた。

「さすがですなあ。これが戦闘力500の力。思い知りました」


 俺達はすぐに王城に入る。
 王がすぐに出迎え、会議室に案内される。

 いつもは多くの貴族が座る会議室も、人が少なくがらんとしている。

「聖騎士イツキの居るビッグ王国の使者からは断わられた。これは裏情報になるのだが、イツキが頑なに援軍を拒んだそうだ。そして今イツキの権限を減らすよう徐々にはしごを外しているようだ」

「徐々に、か。時間がかかりそうだ」
「うむ、だが、エルフの国、エルウィン王国からは歓迎されている」

 次はエルウィン王国か。

「エルウィン王国はやはり自力でのダンジョン消滅が難しいと言う事かな?」
「そうらしいが、徐々に衰退している。う~む」
「ん?なんだ?」

「いや、エルウィン王国の人口が少ない問題はある、だが、他の問題を見つけることが出来なかった。正確には細かい問題はある。しかし、大きな問題を見つけることが出来なかったのだ。エルフの衰退の原因が分からないのだ」

「魔将に攻められていると無いか?」
「無いらしい」

「極端に資源が少ない部分は無いか?」

「う~む、鉄や食料などが微妙に不足してはいるが致命的な物は見つけられなかった。犯罪も軽度の盗み止まり。私は何度もエルウィン王国の収支や人口推移などを見直してみたが、致命的な問題を見つけられなかったのだ。しいて言えば、微妙な問題がたくさんあると言う事か」

「そうか、やりにくいな。俺が行ってみて来て良いか?」
「ぜひ頼みたいと思っていた所だ」

 もしも、大きな問題がないとなれば、やりにくいな。
 今までは大きな問題に全員で特化して取り組むことで解決してきた。

 今までは分かりやすく魔将が出てきたり、
 分かりやすい悪者、インサイダーや本気で領の運営に取り組まない貴族の大きな問題があった。
 何をすればいいかの問題が明確だった。
 
 だが、微妙な問題がたくさんあるとなれば、簡単に解決する気がしない。
 いや、俺のスキルで出来る事があるかもしれない。
 行って実際に見てからだな。

 コンコン!

「待たせてしまったようだ。エルウィン王国の王女が訪れている。入ってくれ」

 部屋にエルフの女性が入ってきた。
 上品なしぐさと、銀色に少しだけ紫色が入ったロングヘア。
 淡い紫の瞳が俺を見つめる。

 背は低めだが、ラビイより少し大きい。
 胸が無いわけではないが、皆と比べると控えめ。
 いや、あるな。
 この世界の女性が皆巨乳過ぎるんだ。
 Cカップくらいか?

 服装はとんがり帽子と魔女の紫のローブだ。

 魔女っ子エルフ姫か。

 魔女っ子エルフ姫が一直線に俺に近づいてきた。

 俺の手を両手で握る。

「わたくしはエルルと申しますわ。内政の英雄の小説も絵本も全部持っていますわ。よろしくですわ。ジュン様」

「よ、よろしく。ど、どういう本だ?俺は本を書いた覚えがないんだけど?」
「ですが、しっかりと発売されていますわ。作者はラビイさんとウサットさんの2名ですわね」

「ウサット、どういう本だ?俺聞いてないぞ」
「これは失礼しました。ですが放置すればあらぬ捏造の本が出版されますな。それを防止するための措置、そう、重要な措置です」

「ジュン様は私にとって憧れの白馬の王子様ですわ。ずっとお会いしたかったですわ」
 
 エルルが俺の手を離さない。

「それはともかく、ウサット、本の開示を要求する」
「それはともかく、早く会議を始めるべきでしょう。今はエルウィン王国の大事ですな」

 俺の話逸らしからのさらに話を逸らされただと!
 後で本屋に行って確認しよう。

「言っておきますが本屋に行っても手に入りませんぞ。完全なる宅配100%の販売ですので」
「俺が買わせてもらおう。宅配なら買えるんだろ?」
「いえ、そのような事をする必要はありません。ジュン様には新たなストーリーを生み出してもらわねば」

「そうですわね。所で続編の発売はいつになるのでしょう?」
「もうすぐ、おとどけいたします」
「楽しみですわね」

 ……ウサットに本の開示を要求して断られた。
 絶対に話を盛っている。
 俺に見せないのはそういうパターンしか思い当たらない。

「特にドリアード族を守る為、単騎で愛馬シュトライザーを駆り、凶悪な魔物の群れに一人で飛び込むイバラの騎士編には憧れますわ。その後のマナ姫とのラブロマンスもドキドキしましたわ。ああ、わたくしも守られたいですわ~」

「おほん、本のネタバレは厳禁、そういう約束の元本を販売しておりますぞ」
「は!そうでしたわ!失礼しました」


 イバラの騎士編?
 俺いつ単騎で突撃したんだ?
 あれ?
 記憶にない。
 色々記憶にない
 明らかにやってない。
 ウサット、捏造はお前だろ!

 王はにやにやしながら笑っていた。

「あれ?笑ってる?」
「くくく、すまない。くくくく」

 俺はあそこまで笑う王を初めて見た気がする。


 エルルは、
 ロマンチストプリンセス魔女っ娘だな。


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