深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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投資はコツコツ続ける地味な作業だ

嫌われる聖騎士イツキ

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 俺は今ビッグ王国に居る。
 元々俺が召喚されたフロント王国の人口は10万程度だ。
 だがこの国の人口は100万を超える。
 この国は大国だ。

 そして、俺は力を取り戻した。
 いや、前以上の力を手に入れた。

 一時はスカルボーンとの戦いで聖騎士の力を失った。
 だが俺は諦めなかった。
 俺はビッグマウスの偽勇者や口だけの偽賢者とは違う。
 ましてや何もできない投資家のジュンとも違う。

 俺は投資を信用しない。
 人生は自分で切り開くものだ。
 人に投資をして自分は何もしないとはくだらない。
 投資をする暇があったら自分で動け!


 実際にはジュンは自分で出来る事は出来るだけ動いていた。
 そしてジュンは人を生かそうとする。
 だがイツキは人のやる気を削ぎ、殺す人間であった。
 そしてイツキは投資の事をよく分かっていなかった。


 俺はスカルボーンに加護を消された後、この国の上級ダンジョンに何度も挑戦した。
 
 何度も死にかけた。
 苦しい思いも何度もした。
 そして聖騎士の力を取り戻し、戦闘力は100を突破した。



 聖騎士イツキは知らない。
 ジュンが内政の英雄と呼ばれている事を。
 そして自分を高める事を自己投資と呼ぶがそれも知らない。
 ジュンは自己投資と教育、人の力を高める事に力を使って来た。

 人は知らないものを批判しがちだ。
 そしてイツキは思い込みが激しく、反射的に悪い事が起きれば人に責任を求める。
 イツキはよく分からない投資の事を無駄と決めつけ非難する。

「イツキ様、王がお呼びです」

 ビッグ王国の兵士がイツキに声をかけた。

「何の用だ?」
「すいません。内容までは分かりません」
「なぜ事前に聞いておかない?お前には礼儀すらないのか?最低限のことくらい守れ」
「それは、機密情報の可能性もある為です」

「聞いていないのに機密情報と決めつけたわけか」
「……そうなります。申し訳ありません。ですがどうかご同行ください」
「俺を呼ぶなら内容を聞いてこい」
「ですが、王は急ぎのようでした。どうかご同行ください」

「来て欲しければ仕事をまともにこなせ」
「次から気を付けます。ですが今はどうかご同行をお願いします」

 兵士とイツキのやり取りを周りの者が遠目で見つめる。
 決して話に割って入る事はしない。
 イツキに睨まれた者はすっと視線を外す。

 イツキは癖が強く、とにかく何かを頼むと批判が帰って来る。
 マイルールを押し付け、言う事がその時によって変わる為、兵士はよく怒られる。

 あまりにも話が進まない為、王はイツキと話をし、マイルールをまとめた。
 だが、そのマイルールを破るようにイツキの言う事が変わる。

 癖の強い職人のようで扱いに困るが、イツキの戦闘能力は高いのだ。
 こうしてイツキは30分程兵士に説教をした後に王の元に向かった。



「……遅かったな」
「兵士の教育がなっていないからだ」

「……本題に入る。フロント王国の使者より、ダンジョン消滅の協力をしたいとの事だが、内政の英雄について知っているか?その者が派遣される」
「知らない」

「お前と一緒に異世界から転移したジュン殿、と言ったな」
「あいつか、あいつは無能だ。必要ない」
「だが、受け入れれば他の兵も支援に来る。それに中級ダンジョンと初心者ダンジョンを消滅させた実績もあるようだ」

「必要ない。中級ダンジョンなど俺の部隊だけで消滅させられる」
「それは今から消滅させると取って良いか?ダンジョンの消滅は女神ファジーの力を取り戻すための重大な使命だ。多くの者で協力して行う方が良いと思ったのだが?」

「必要ない。俺が消滅させる」
「この国は国土が広い分ダンジョンも多い」
「必要ない」

「……分かった。処理はこちらで済ませよう。急に呼び出してすまなかったな」

 イツキが居なくなると王はため息をついた。

「フロント王国の使者に伝えよ。まず先にエルフの居るエルウィン王国のダンジョンを消滅させてほしいと。決して失礼の無いようにな」
「かしこまりました。王には負担をかけてしまいました。ですがイツキ殿は王の言葉以外話すら聞かないのです」

「分かっておる。強いが、癖が強すぎる。英雄とはそういうものなのかもしれんがな」

 王はまたため息をついた。



 イツキは中級ダンジョンに向かった。
 イツキは1000の兵を任されている。
 と言っても管理する者は副官だ。

 イツキの部隊の訓練は厳しい。
 厳しいのは軍ならよくある事ではある。
 問題は死者が多い事だ。

 当初は異世界から召喚された英雄イツキの部隊と言う事でイツキの部隊への入団希望者が殺到した。
 しかしすぐ無茶な突撃をするイツキの悪評が広まり、入団希望者は激減した。
 
 部隊は無事中級ダンジョンにたどり着き、魔物を狩り始めた。




 ◇



 結果、ダンジョンの消滅に失敗し、撤退に追い込まれた。 

「ぐう!皆無能だ!なぜできない!」

 イツキの部隊は撤退に追い込まれた。
 そして約100名の兵士を失った。

 イツキは副官の助言を聞かず、無理のある計画を推し進め、何かあると他の兵に責任を取らせる。
 イツキは悪い事があると人に責任を求めるのだ。
 そして発言に一貫性が無く、部隊は混乱した。

 イツキが王城に帰還すると兵の責任を追及した。
 
「なぜやらない!簡単な事をなぜしない!」
「やる気がない!たるんでいる!」
「無能は要らない!」

 これにより、副官がすべての責任を取って辞任の意思を示すが、王の計らいで副官は何とか辞める事なく、部署の移動が決まる。
 そして人望のある副官が居なくなった事で、多くの兵がイツキの部隊からの移動を申し出た。

 イツキの部隊は1000から500に減った。




【ビッグ王国国王視点】

 王はイツキ以外の重役を呼び、会議を開いた。

「今回は聖騎士イツキの件だ。単刀直入に言おう。イツキに部隊を任せていては兵が居なくなる。イツキの機嫌を損ねず部隊の隊長の任を解きたい」

「おお!ついに決断されましたか!」
「英断ですな!」
「わたくしも賛成です!」

 皆が賛同の声を上げる。
 そして宰相が声を上げた。

「そうですなあ。落としどころとしては、今まで部隊の管理でイツキ殿の動きを縛ってきた為、イツキ殿を部隊の管理から解放するという事にしてはどうでしょうか?ソロの魔将殺しの切り札として扱うのがよろしいかと」

 イツキの周りではイツキを刺激しないようにはしごを外す準備が進められる。
 イツキに何か指摘をすればへそを曲げて戦わなくなる恐れがあった。
 イツキの単体で見た戦闘能力は優秀なのだ。
 だが人の上に立たせてはいけない。

「うむ、その方向で調整を頼めるか?」
「御意のままに」
「今から始めて欲しいと思うが、他に良い案はあるか?」

 こうして最速で会議は終わった。
 イツキはビッグ王国で徐々にはしごを外されていく。
 だが本人だけは気づいていない。
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