深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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安い時に買って高くなったら売る。それが出来れば金持ちだ

筋肉会合

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「終わった!ロングスパン領に帰還しよう。グレスの隊も来てくれ」
「分かりました。インサイダーを油断させる為、貴族会議まではロングスパン領に留まりましょう」

「話が早くて助かる。それともう1つ」
「何でしょう?」
「皆にはゆっくり休んで欲しい」

 近くにいたグレスの軍全員が俺に敬礼をした。
 俺達はゆっくりとロングスパン領に帰還する。




 ロングスパン領に帰ると必要分の酒場と宿屋を貸し切りにするようあらかじめ準備していた。

「さあ、貴族会議が始まるまで数日ある。それまではゆっくり休んでくれ」

「「ありがとうございます!!」」

「私はもう少し1人で魔物と闘いたいのです。まだ限界まで剣聖の力を極めたとは言えませんから」

 目標のダンジョンは消滅させたが、ロングスパン領の近くにある中級ダンジョンだけは残してある。
 このダンジョンだけは今後の為必要と判断したのだ。
 グレスは今まで兵の管理も務めていた。
 一人集中して戦いたいという思いもあるのだろう。

「ラビイ、来てくれ」
「何です?」
「グレスの武具を作ってくれ」

「どういうのが良いのです?」
「一番いいやつを頼む」

 ラビイの目が光る。

「魔石をたくさん使ってもいいですか?」
「大丈夫だ。問題無い」

「いいのですか?」
「いいんだ」

 俺が立ち去るとグレスは俺に頭を下げ続けていた。




 グレスとの話が終わるタイミングを見計らうようにウサットが話しかけてくる。

「ジュン様、食料問題について相談があります。そしてその問題はこれから行う筋肉会合の内容と直結しております。ぜひご参加を」

 ウサットが頭を下げる。

「分かった」


 俺は薄暗い飲食店に案内される。
 意外とおしゃれだ。

 いや、何かがおかしい。
 明らかにマッチョ率が高い。
 更に女性の客はマッチョに目を輝かせている。
 そしてマスターもマッチョだ。

 バアン!
 扉が勢いよく開けられる。
 そこにはマッチョの男が立っていた。

「ウサット!見つけたぞ!なんで俺がトップ125なんだ!俺はマッチョトップ100入り確実な人間だ!俺はマッチョ100人隊に入れる力を持っている!ウサット!勝負しろ!」

 店に居たマッチョが語り出す。

「たまにいるんだ。勘違い野郎がな。あいつはマッチョ100に入れる器じゃない。その事を思い知るだろうぜ」

 マッチョなマスターが声をかける。

「ウサット、地下室を使うかい?」
「ええ、どうやら口で言っても分からないようです」

 俺達は地下室に向かう。
 無骨な大部屋に鉄アレイやバーベルが並ぶ。
 椅子やテーブルもあるが目を引くのは不自然にスペースを空けた中央スペースに鉄の塊が鎮座していた。
 さらにその地面も鉄で出来ている。

「へへへ、俺が一番だ!俺はウサットより強い!」
「では私と筋肉腕相撲を行いましょう」
「へへへ、いいぜえ」

 2人は中央の鉄の塊に向かう。
 あれは筋肉腕相撲用のやつか。

 不自然に空いたスペースが特別感を演出している。

「ウサットさん、良ければ代わりに俺が行きましょうか?」
「必要ありません。私が行います」
「分かりました」

 2人が腕を組む。
 マッチョがレフリーを務める。

「筋肉ファイト!レディー!ゴー!」

 ドゴーーーーーーーーン!
 轟音と共に一瞬でウサットが勝利した。

「これで分かったでしょう。あなたはトップ100の力を持っていません」
「ま、まだだ、確かにトップ0のあんたには負けた!だが他のトップ100には負けてない!」

 トップ0ってなんだよ。
 皆カリカリしすぎだろ。

「俺が行きます。俺はトップ100だ」
「へ、へへへへ、確かにトップ0には負けた。だがトップ100には負けない」
「そうか、言っておくが俺はトップ100だ。マッチョ部隊の中で一番格下だ。俺に負ける事はトップ100の最弱に負ける事を意味する」

「それがどうした!俺が勝ってやるよ!」
「少し休むか?」
「必要ない!」

 2人がまた鉄のリングで腕を組む。
「筋肉ファイト!レディー!ゴー!」

 先ほどとは違って腕が動かない。
 まったく動かないのだ。

「それが本気か?」
「う、うるせえ!うおおおおおおおおおおおお!」

 トップ100は涼しい顔をしている。
 だがトップ125は苦痛の表情を浮かべる。

「もうわかっただろう?出直してこい」
「くそがあああ!うおおおおおおおおおおおお!」

 トップ125は声だけを張り上げるが腕は動かない。

「そろそろ終わらせよう」
「うおおおおお!」

 ゆっくりとトップ125の手の甲が鉄のリングに倒れていく。

「勝者!トップ100!」
「分かっただろう?お前はトップ100より弱い」

「ま、まだだ!もう一回だ!」

 その後トップ125は5回負け続けた。
 トップ125は地面に這いつくばり汗をかきながら呻く。

「なんでだ!なんで勝てない!」

 黙っていたウサットが口を開く。

「確かにあなたには才能が有ります。ですがその才能を磨かねば開花する事はありません。あなたの才能はまだ開かれていない。まだ筋肉の扉は開かれていないのです」

 開花するって言ってたから才能が花開くって言うかと思っていたのに、いつの間にか筋肉の扉になってる!

 トップ125は右腕を抑えながら立ち去った。
 周りを見るとマッチョが集まっていた。
 全員が席につく。

「時間を取らせ失礼しました。これより、筋肉会合を開催いたします!ゲストはロングスパン領領主にして内政の英雄、ジュン・ロングスパンです!」

 うわー!
 居ずらい!

「それでは前回の論争の続きから始めます。
 貴重なタンパク源問題ですな。
 まず前回の振り返りから。

 大豆や木の実、そして魚介類のたんぱく源の生産や漁は順調です。

 ですが問題は家畜の肉ですな。
 このロングスパン領の慢性的な問題です。
 領の人口の急拡大に家畜の規模拡大が追い付かないのです」

「この問題は他の領地から家畜を買うしかないと思うが、どこか当てはあるのか?」

「現在有力なのはマッスル子爵の領地です。多くの家畜を過剰に育てているのです。本人も購入しすぎたとおっしゃっていました。野菜や大豆、魚介類と交換する事で物々交換が可能でしょう」

 やりそうだ。
 マッスル子爵はどんぶり勘定で後から「購入しすぎたのであーる」とか言いそうだ!

「今領の野菜や海産物はある。今余裕があるわけではないが、冬までには十分なストックを作れるだろう。問題は生きた家畜をストレージに入れられない事だ」

「ジュン様、我らマッチョ部隊が無償で出動すればどうでしょう?」
「分かった。行こう。俺のストレージでこちらの物資は運ぶが、次の貴族会議までには王都に行く必要がある!それまでに済ませたい!」




 こうして会議は終わり家畜と食料を交換した。
 ロングスパン領に帰ると、貴族会議の日になっていた。
 まだ十分な家畜は用意できていないが、ウサットとマッチョ部隊は嬉しそうだった。
 喜んでもらえて何よりだ。
 
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