深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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安い時に買って高くなったら売る。それが出来れば金持ちだ

急がせる女神と真っ赤なフィル

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 俺は会議が終わると走ってロングスパン領に戻った。




「お待ちしておりました。早速幹部会議を執り行います」

 城の会議室には5人がスタンバイしていた。
 俺はすぐに座ってインサイダーの事を話す。


「……で、インサイダーの笑顔が気持ち悪かった」

「むかつくです!早く潰すしてやりたいです」
「では、もうすぐインサイダーのポーション価格の引き上げが起こりますかな?」

「起こる。確実にやって来るだろう」

 会議室の空間が歪み、女神の映像が現れる。
 いつも通り俺だけが椅子に座ったままだ。
 マナでさえ跪いている。

「……」
「ジュン」
「なんだ?」

「早くこの国を発展させてほしいのです」
「ダンジョンの攻略で手間取っていた。インサイダーはじわじわと潰す予定だ」
「早く進めて欲しいのです」

「それは早くインサイダーを失脚させてほしいって事か?」
「そうです」

「今までも発展を加速させてきたつもりだ。これ以上やるなら、フィルと一夜を共にして俺に憑依してもらい、貴族会議の場でフィルの正体と俺の強さを晒す事になる」
「出来る事すべてをやって欲しいのです」

「憑依?なに?」
「フィルに秘密があるのですか!」
「気になるにゃあ」

「フィル、天使の正体を晒してくれ」

 フィルの頭から輪が出現し、背中から翼が出現する。

「「おおおおおおおお!!」」

「確かにこれならインパクトは絶大ですな」
「俺と一夜を共にする事でフィルの相手を見抜く能力は高まる。その上で女神が出てくれば潰せる可能性はさらに高まる。出来る事全部をやって一気に終わらせたい」

「分かりました。フィル、覚悟を決めてください」
「そのお、う、ええっと」

 フィルがもじもじする。
 ラビイとリースがフィルをベッドに運んでいく。

「緊急事態だにゃあ、すぐやるにゃあ」
「するしかないのです!」




 俺とフィルだけがベッドに座る。

「女神、出てこい」

空間が歪み女神が出てくるがさっきの威厳は無い。

「なになに~?」
「本当に困っているんだな?」
「困ってるよ~。早く発展させないと世界が滅びるよ」

「フィルは大丈夫なのか?」
「この子は大丈夫。恥ずかしいだけだから。抱いてもらうのが嫌なわけじゃないよ」

「頑張ってね~」

 どの意味で言っているのか分からないが女神が消えた。
 フィルを見ると真っ赤だ。

「恥ずかしいか?」
「は、恥ずかしいです!それに女神さまは絶対にベッドを覗いてます!絶対に見てるんです!」

「そうかもな」




 ◇




 チュンチュンチュンチュンチュン!

 俺は目覚め、自分でコーヒーを淹れる。
 フィルは目覚めると布団で体を隠しながら服を着た。

「フィル、頑張ったな」
「な!やめてください!昨日の事はもう言わないでください!」

「フィル、コーヒーを飲むか?」
「……いただきます」

 フィルにコーヒーを渡すと俺は叫ぶ。

「そろそろ出てこい!」

「バレバレだったにゃあ」
「バレては仕方がないのです」
「おんぶ」

 後ろには9人のメイドも居た。

「ご飯にするよ」

 メイドはなにも無かったように接してくる。

 その前に、フィルの憑依を確認したい。
 俺に憑依できるんだよな?

「分かりました」

 フィルが俺に抱きつくと俺に吸い込まれるように消えた。

『憑依しました』
『念話が出来るのか』
『はい、それとしばらく私は憑依して、ジュンの魔力を受け取り続けます』
『充電みたいなやつか?』
『そうです。しばらく眠ります』
『分かった』

 憑依すれば俺が強くなるかと思っていたが、俺は魔力電源か。

「フィルは力を取りも戻すためにしばらく憑依状態で眠る」
「食事にするね」



 食事が終わると斥候が走って来る。

「王都のポーション価格が上がり始めました」
「ついに来たか」

「ウサット、準備は出来ているか?」
「はい、万全です!」

 ダンジョンの攻略で苦戦している情報はダンジョン攻略軍から縮小された兵や冒険者が国中に戻り皆が話した。
 噂はすぐに広まった。
 
 王都のポーションは枯渇し、王都のポーション工房主は工房を手放し、ロングスパン領の多くの錬金術師もポーション作りをやめて建築や鉱山の作業に移った。

 インサイダーはこれから確実にポーションの値段を釣り上げてくる。
 
「500の軍でグレスの居るダンジョンへと向かう!」
「すぐに準備をいたします」




 城の外には500の軍が並ぶ。

「今から出陣する!!」

「「おーーーーーーー!!」」

 今まで味方を欺きダンジョン攻略の軍を縮小してきた。
 今まで水面下で準備を整えてきた。
 速攻でダンジョンを消滅させる。




 ◇



 500の軍がグレスと合流すると、グレスは何かを察したようだ。
 1000の軍が俺とグレスの前に並ぶ。


「思い出します。初めてダンジョンを消滅させた時の事を」
「あの時も1000の軍で挑んだんだったな」
「懐かしく思います」

「ああ、だがあの時とは違う。グレスもそうだが、皆強くなっている」
「ええ、そうですね。我々は大幅に力をつけました。皆に言葉をかけてください」
「それはグレスの役目だろ」

「私は500の兵をすでに激励しています。それに、皆もジュン殿の言葉を待ち望んでいます」
「分かった。皆は強い!いつも通りにやれば結果はついてくる!以上だ!」

「もう少し違う言葉をお願いします」
「ええ!十分だと思ったけど?」
「いえ、威厳に満ちた言葉をお願いします」

「そうか、おほん。グレス率いる500の諸君!みんなの努力のおかげでダンジョンにいる魔物は少なくなった!特に妻と幼い子を残してダンジョン消滅に参加したコープ!」

「お、おらの事覚えてくれてるだか?」

「覚えている!その他にも体の弱い母を故郷に残してきたメリー!弟を残して来たアンリ!他にもいるが全部グレスから聞いている。すまない!そしてありがとう!」

 俺に名前を呼ばれた者が涙ぐんだ。
 グレスが俺に礼をした。
 

「ここに居る500の兵はグレスに選ばれた精鋭だ!皆誇ってくれ!!逃げず、危険を冒して魔物と闘うみんなを俺は誇りに思う!そして、ロングスパンの500の兵士達!」

 俺はロングスパンの500の兵に目線を移した。

「皆は俺と幹部が選んだ精鋭だ!戦う者だけではない!武具を直す者!料理を作る者!メイドをこなす者!すべてが精鋭だ!戦う者はもちろんの事、そうで無い者も居て初めて軍は機能する!」

「「うおおおおおおおおおおお!!」」

「ここに居る1000の精鋭の多くが最初にダンジョンを消滅させた歴戦の強者だ!そしてみんなはあの時より強くなっている!グレスは剣聖になった。グレスだけではない!皆力をつけた!魔物が多く出ようが、皆それを超えるだけ強くなった!何も心配していない!みんなが居る!絶対に成功する!」




 俺は力を隠さずにダンジョンの魔物を狩る。

 他に新たな力をつけた者も居た。

「ゴーレム!行くですよ!」

 ハンマーを持ったゴーレムが魔物ハンマーで瞬殺した。

 ラビイの新たな力、ゴーレムだ。
 
「私も負けられないにゃあ!シャドウ!」

 黒いリースが魔物を斬り倒す。

「ウッドゴーレム」

 木のゴーレムが魔物をなぎ倒す。

 3体が連携しつつ魔物を狩っていく。

「私も負けていられませんなあ!」

 ウサットの筋肉が隆起する。

「ふぉおおおおおおお!!」

 クワを1回振るだけで3体の魔物を倒した。

「「俺達マッチョ部隊も続け!!」」

 マッチョ部隊という謎の力も増している。
 ウサット指揮の元100のマッチョが魔物を狩っていく。
 しかも上位トップ100の選抜試験が定期的にあるようでお互い切磋琢磨しているらしい。

 しかも奴ら、魔物が減って来ると10人単位で小隊を組みだして分散して効率よく魔物を狩りだした。
 進化している。
 ただ食料の減りだけは異様に早い。

 フィル以外の4幹部全員が活躍している。

 グレスは剣聖として力を振るう。
 魔物の群れに飛び込むように斬りこんで剣で倒していく。
 グレスの剣の間合いに入ったら魔物は瞬殺される。
 勇者時代のタケルより明らかに強い。

 みんな強くなっている。
 
 始めてダンジョンを消滅させた時よりもハイペースで魔物が狩られる。


 俺達はダンジョンの外に出た。

『女神、やってくれ』
『行くよ~』

 ダンジョンが消えて魔物が発生する。
 俺は本気を出して戦う。
 俺の戦闘力は100から変わっていない。

 だが明らかに周りの者の戦闘力が増している。

 前回より楽に感じる。
 あっけなく最後の目標の中級ダンジョン消滅は終わった。
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