深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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安い時に買って高くなったら売る。それが出来れば金持ちだ

マッスル・アイアン

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 インサイダーは安くポーションを供給し、グレスの軍は無事動き出した。
 残る中級ダンジョンは2つとなった。
 だが今度は鉄が不足した。
 この国に鉱山はあるが、多くの軍を魔物狩りに投入した事で需要と供給のバランスが崩れ鉄の価格が高騰したのだ。

 鉄価格の高騰が始まり、俺はすぐに王の元を訪れた。

「……このままでは鉄が足りなくなるか」
「確実に不足するであろう」

「鉱山に人材を送り込む。俺も直接向かおう」
「マッスル・アイアン子爵当てに手紙を送ろう」

「……マッスル・アイアン。あのマッチョか!?」
「うむ、詳しいな」
「あの筋肉腕相撲でウサットと旦那を倒したマッスル・アイアンか?」
「そうだ」

 俺は汗をかく。
 嫌な予感しかしない。
 
「マッチョ部隊をすべて投入する」
「うむ、対策は万全というわけか。マッチョ部隊なら問題無いだろう」

「ん?良く分からない」
「マッスル・アイアン子爵は変わり者でな。仕事はこなすのだが、あまり話を聞かないのだ。だがマッチョ部隊の言う事ならまだ聞くようになる」

 やっぱり変わり者か!
 嫌な予感が的中した。
 マッスル・アイアン子爵に手紙を出してからマッチョ部隊を招集するつもりだったが、マッチョ部隊を引き連れて向かった上で手紙を渡そう。



 俺はすぐに王都を出ると、人が居なくなった瞬間に全力で走った。
 最近全幹部が大忙しで余裕のある者は俺しかいない。
 単独行動をしている。



「……というわけだ。すぐにウサットのマッチョ部隊を招集して欲しい」

 ウサットの目が光る。

「やはり、再び巡り合う運命でしたか。いや失礼。すぐに招集いたしましょう」

 こうして迅速にマッチョ部隊が招集された。
 俺の前に100名のマッチョ部隊が集まる。
 何故か全員銅像のように力こぶを作りポーズを決めている。

「すぐにマッスル・アイアン子爵の元に向かう」

 マッチョがざわつく。

「へっへっへ。ついに来た。因縁の対決が始まるぜ」
「筋肉のぶつかり合いが見られるだろう」
「筋肉の火蓋は切って落とされようとしている」
「時間の問題で筋肉バトルが始まる運命だった」

 うん、こいつらも良く分からないわ。
 こっちのペースで進めよう。
 俺は大声を出す。

「領を出てすぐに走って向かう!!」
「やはりジュン様は分かってらっしゃる。筋肉道を歩む者の、いえ、今駆け抜けようとしていらっしゃる」
「……すぐに動く」

 領を出て森に隠れた瞬間叫ぶ。

「すぐにダッシュだ!」

「「うおおおおおおおおおお!!」」

 マッチョ部隊は全員レベル30越えの精鋭でもある。
 俺達は素早く行動し、鉱山に向かった。
 俺の戦闘力は35に偽装してある。
 丁度いい。




【鉱山の見張り視点】

 俺達3人の兵士が見回りを続ける。
 俺を含めて2人は男性、1人は女性だ。

「ねえ、地面が揺れてない?」
「何も感じない。小さな地震か?」

「いや待て、音が聞こえる」
「俺も気づいた。それに地面も少し揺れている」

「覚えがある。昔ビックベアーの群れが鉱山を襲ったことがあった」
「まさか!多くの犠牲を出したあの!」
「この揺れ、この地鳴り、前と似ている」

「す、すぐにマッスル様に伝えるわ!」

「その必要は無いのであーる!!」

 腹に響く大声で3人が振り返る。
 そこにはクマのように発達した筋肉を持つ大男。
 マッスル・アイアン子爵が腕を組んではるか先を見る。

「「マッスル様!」」

 マッスル様の視線の先を見ると100のマッチョが疾走する。
 だがその先頭を走る普通の男が異彩を放っていた。

 黒目黒髪の中肉中背。
 その男はマッチョの中にあって普通。
 特徴は黒目黒髪のみ。

 だが、違和感を拭えない。
 まるで強靭な熊の部隊の中に1体だけうさぎが先頭を走るような違和感と恐怖を感じる。
 あの屈強そうなマッチョ集団の戦闘を走る者。
 ただ者ではないだろう。

 マッチョが素早くサイドに並ぶと黒目黒髪の男がその道を歩いてこちらに向かって来る。

 そしてその斜め後ろには執事の燕尾服をまとった男がひときわ隆起した筋肉を持っている事は一目瞭然だった。

 最弱のうさぎ族。
 全員が生産系ジョブでありながら幹部に上り詰めた男の名はあまりにも有名。
 となると、それを指揮する黒目黒髪の男の正体も察しが付く。

「内政の英雄!ジュン・ロングスパン!なぜここに!」

 俺の言葉を聞かずマッスル様が前に出る。
 
「ウサットとマッスル子爵は久しぶりの再会だったな」

 マッスル様ととウサットは黙ってヒシと抱き合う。
 それだけで言葉は不要なのだろう。



 内政の英雄が期を見て言葉を発する。

「鉄採掘の援軍として参上した!ジュン・ロングスパンだ!詳しくはこの手紙を見て欲しい!」

 マッスル様は手紙の封を開けずに俺に手紙を渡した。

「ついてこい」
「我らマッチョ部隊はアイアン様と鉱山に行ってまいります」

 ウサットは礼をしてマッチョ全員が立ち去る。

「手紙の内容を共有したい。文官か執事は居るか?」

「す、すぐに案内します!」

 3人で内政の英雄を案内する。

「マッスル様がすいません。本来ならその場で手紙を読むべきなのですが、その、悪気はないのです」
「分かっている。現場重視なのだろう。気にしていないよ」

 畏怖の念を感じさせる内政の英雄がニコッと笑った。
 俺達3人の緊張が和らぐ。

 執務室には4人のメンバーが書類をまとめている。
 指示の内容は大雑把で細かい指示はしない方針なのだ。

 内政の英雄がぺらぺらと書類をめくる。
 まずい!あまりに大雑把な計画だ。
 何を指摘されても文句は言えないだろう!

 俺は汗をかく。

 
「これだけみんなに伝えて欲しい。【今鉄が足りない。100のマッチョが採掘支援に来た】とな」

 何も指摘しないのか。
 内政の英雄の言葉を聞く限り、この鉱山の管理が大雑把なのは把握しているはずだ。
 見なかった事にしてくれたのか。

 俺は胸を撫でおろした 

「連絡や引継ぎはこちらで行う。安心してくれ。あら捜しをしに来たわけじゃない」

 俺は内政の英雄に感じていた畏怖の感情はさらに強まった。
 大雑把な計画を即座に読み取り、最低限の必要な情報に絞った。
 内政の英雄。
 ただ者ではない。








 あとがき
 最近たまたまなのかコメントを頂く頻度が増えました。
 読んでもらっている実感がもてて非常に嬉しいのですが、返信で時間を使い執筆が全く進まない日が出てきました。

 深刻な執筆力不足解消の為、返信は気が向いた時にしようと思います。
 もちろんすべて目は通しております。
 ではまた!





 
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