深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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安い時に買って高くなったら売る。それが出来れば金持ちだ

怪しいインサイダー

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 インサイダーが席に着くと満面の笑みを浮かべる。

「インサイダー、早かったではないか」
「なに、ポーションが枯渇したと聞いてな。国の危機に急いで駆け付けたのだ」

 嘘つくな。
 自分の事が何より大事でそれ以外どうでもいい人間だろ?

「では早速緊急の貴族会議を始める」

 王は何ごとも無かったように会議を始めた。

「さっきも話したが、ポーションが無くなり困っているのだろう?ワシが助けてやろうか?」
「条件はなんだ?」

「察しがいいな。ワシを公爵に戻してもらおう」
「その条件にお前がため込んでいるポーションを吐き出すと?」

「おっと、早とちりはいかん。ワシもそれ相応の条件を用意しておる」

 インサイダーは紙を取り出した。
 王がその紙を見ると王の表情が変わる。

「皆に見せても良いか?」
「構わんよ」

 紙を覗き込むと大量のポーションを今の仕入れ値の10%の価格で大量に納品する事が書かれていた。

 王が腕を組んで考える。

「何を迷っている?破格の条件のはずだ」
「そうだが、条件が良すぎるのだ。インサイダー、裏は無いな?」
「嘘はつかん。ワシのようにまともな人間はそうはおらん」

「ジュン殿、どう考える?意見を聞きたい」

「インサイダーが土下座なんかを強要したりせず、ちゃんと条件を守るなら受けてもいいと思う。だが、不正があれば条件を取り消したい」

「わしも鬼ではない。無理に謝らせることは無い。不正もせんよ」

 インサイダーの笑顔が気持ち悪い。
 だが、インサイダーのポーションが無ければダンジョンの攻略にはさらに多くの時間がかかる。
 条件を飲むのが正解だと思う。

 インサイダーのポーションの価格は原価割れだろう。
 身を切ってポーション大量に売ってくれるならその方が良い。

「うーむ……条件を、飲もう」
「決まりだな。では早速公爵の授与式を行う」
「言っておくが不正があればすぐ授与は取り消す」

「分かっておる」





 こうしてインサイダーは公爵に返り咲き、満面の笑みで帰って行った。

「インサイダー、何を企んでいる?条件が良すぎる」

 王が眉間に皺を寄せた。

「そうだな、前の世界に居た時の話がしたい。その時と似ている」
「話してくれ!」

「俺の前いた世界では魔石の代わりのエネルギーになっていたのが燃える油だ。その燃える油は容器や道具、部品に加工される資源としての役割もある資源なんだ」

「夢のような資源だな」

「で、その燃える油が取れる国は限られていた。燃える油を持つ国が利権を持っていたが、ある時燃える油とは違う新しいエネルギーが出て来た。その時燃える油を持つ国はどうしたと思う?」

「どうしたのだ?」
「安く売った」
「む?」

「燃える油を安く売って、新しいエネルギーを作る会社を潰した。潰れた後に燃える油の値段を高くした」

「まさか!インサイダーのやっている事は燃える油を安く売る事と同じだと言うのか!?」

 王が驚愕する。

「そうだと思う。この世界で言えば、ポーションを安く売り続ければポーション作成をする者の生活は成り立たなくなる。なんせ作っても原価割れでしか売れない。作れば作るほど損をする事になる。王都にも個人のポーション工房はあるだろ?インサイダーは自分以外のポーション作成者を廃業させるつもりだ」

「ポーション作りをする者が廃業すれば薬草を摘む者も居なくなる。その後にポーションの価格をあげる、か」

「そうだ、もちろんポーションの値段が上がれば再びポーション作りを始める者も出てくるだろう。だが」
「生活が成り立たずポーション工房を手放した者も多く出る。ポーションの生産量は減り、ポーションの値段は高止まりする、か」

「そう考えているだろうな」

 インサイダーの特徴は容赦のなさだ。
 他の者なら思いついてもやらないようなことを平気で実行してくる。

「だが分からん」
「説明が分かりにくかったか?」
「そうではない。そこまで気づき、なぜ条件を飲むことに賛成したのだ?」

「中級ダンジョン3つを消滅させたかった。それと、その後のインサイダーの件は後で2人だけで対策を話し合いたい」

「……分かった。2人だけでだな」

 俺と王は2人だけで今後の対策について話し合った。
 インサイダー。
 そっちがその手を使うなら、俺も容赦はしない!









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