深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

文字の大きさ
上 下
73 / 113
安い時に買って高くなったら売る。それが出来れば金持ちだ

怪しいインサイダー

しおりを挟む
 インサイダーが席に着くと満面の笑みを浮かべる。

「インサイダー、早かったではないか」
「なに、ポーションが枯渇したと聞いてな。国の危機に急いで駆け付けたのだ」

 嘘つくな。
 自分の事が何より大事でそれ以外どうでもいい人間だろ?

「では早速緊急の貴族会議を始める」

 王は何ごとも無かったように会議を始めた。

「さっきも話したが、ポーションが無くなり困っているのだろう?ワシが助けてやろうか?」
「条件はなんだ?」

「察しがいいな。ワシを公爵に戻してもらおう」
「その条件にお前がため込んでいるポーションを吐き出すと?」

「おっと、早とちりはいかん。ワシもそれ相応の条件を用意しておる」

 インサイダーは紙を取り出した。
 王がその紙を見ると王の表情が変わる。

「皆に見せても良いか?」
「構わんよ」

 紙を覗き込むと大量のポーションを今の仕入れ値の10%の価格で大量に納品する事が書かれていた。

 王が腕を組んで考える。

「何を迷っている?破格の条件のはずだ」
「そうだが、条件が良すぎるのだ。インサイダー、裏は無いな?」
「嘘はつかん。ワシのようにまともな人間はそうはおらん」

「ジュン殿、どう考える?意見を聞きたい」

「インサイダーが土下座なんかを強要したりせず、ちゃんと条件を守るなら受けてもいいと思う。だが、不正があれば条件を取り消したい」

「わしも鬼ではない。無理に謝らせることは無い。不正もせんよ」

 インサイダーの笑顔が気持ち悪い。
 だが、インサイダーのポーションが無ければダンジョンの攻略にはさらに多くの時間がかかる。
 条件を飲むのが正解だと思う。

 インサイダーのポーションの価格は原価割れだろう。
 身を切ってポーション大量に売ってくれるならその方が良い。

「うーむ……条件を、飲もう」
「決まりだな。では早速公爵の授与式を行う」
「言っておくが不正があればすぐ授与は取り消す」

「分かっておる」





 こうしてインサイダーは公爵に返り咲き、満面の笑みで帰って行った。

「インサイダー、何を企んでいる?条件が良すぎる」

 王が眉間に皺を寄せた。

「そうだな、前の世界に居た時の話がしたい。その時と似ている」
「話してくれ!」

「俺の前いた世界では魔石の代わりのエネルギーになっていたのが燃える油だ。その燃える油は容器や道具、部品に加工される資源としての役割もある資源なんだ」

「夢のような資源だな」

「で、その燃える油が取れる国は限られていた。燃える油を持つ国が利権を持っていたが、ある時燃える油とは違う新しいエネルギーが出て来た。その時燃える油を持つ国はどうしたと思う?」

「どうしたのだ?」
「安く売った」
「む?」

「燃える油を安く売って、新しいエネルギーを作る会社を潰した。潰れた後に燃える油の値段を高くした」

「まさか!インサイダーのやっている事は燃える油を安く売る事と同じだと言うのか!?」

 王が驚愕する。

「そうだと思う。この世界で言えば、ポーションを安く売り続ければポーション作成をする者の生活は成り立たなくなる。なんせ作っても原価割れでしか売れない。作れば作るほど損をする事になる。王都にも個人のポーション工房はあるだろ?インサイダーは自分以外のポーション作成者を廃業させるつもりだ」

「ポーション作りをする者が廃業すれば薬草を摘む者も居なくなる。その後にポーションの価格をあげる、か」

「そうだ、もちろんポーションの値段が上がれば再びポーション作りを始める者も出てくるだろう。だが」
「生活が成り立たずポーション工房を手放した者も多く出る。ポーションの生産量は減り、ポーションの値段は高止まりする、か」

「そう考えているだろうな」

 インサイダーの特徴は容赦のなさだ。
 他の者なら思いついてもやらないようなことを平気で実行してくる。

「だが分からん」
「説明が分かりにくかったか?」
「そうではない。そこまで気づき、なぜ条件を飲むことに賛成したのだ?」

「中級ダンジョン3つを消滅させたかった。それと、その後のインサイダーの件は後で2人だけで対策を話し合いたい」

「……分かった。2人だけでだな」

 俺と王は2人だけで今後の対策について話し合った。
 インサイダー。
 そっちがその手を使うなら、俺も容赦はしない!









しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...