深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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安い時に買って高くなったら売る。それが出来れば金持ちだ

マネックの訪問

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 俺の両サイドにウサットとラビイが並び、部屋にマネックが入って来る。

「今日は何の用だ?」
「僕に監視を付けるほど疑っていますか?」

 マネックは悲しそうな顔をした。

「確かに僕はインサイダー派の貴族で、インサイダーやその派閥貴族の事を考えれば、僕が信用できないのは分かります。なので本心を言いに来ました。僕を内政の英雄の派閥に入れて欲しいです」

「待ってくれ。なぜ今までインサイダー派に居たんだ?なぜロングスパン領の近くに領地を作ったんだ?」

 今までの行動は明らかにインサイダーの思惑通りの行動だ。

「インサイダー派なのは僕の前の代からの事でした。インサイダーの思惑に乗ったのは、僕の領に借金があり、ロングスパン領の近くに領地を建てれば借金を帳消しにする約束でした」

 借金があったからインサイダーの派閥を抜けられなかったのか?

「分からない。フィルにマネックの事を見てもらいたい。マネック、良いか?」
「分かりました」


 フィルが呼ばれるとマネックは緊張した顔でその場に立つ。

「マネック子爵、インサイダーと手を切ってジュンの派閥に入りたいと言う事でいいですね?」
「はい!」

「嘘は言っていないようです」
「マネック、インサイダーの事をどう思っている?」
「傲慢な人間だと思っています」

「俺達を利用しようとしていないか?」
「領地経営を学んで僕の領地の運営の役に立てようと思っています」
「他には?」
「ありません」

「何か隠していることは無いか?」
「インサイダーに帳消しにしてもらった借金の事で迷惑をかけるかもしれません」
「他には無いか?」
「ありません」

「嘘は言っていないのと、マネック子爵はまともな人間です」
「そ、そうなのか!」
「これは、私の早とちりでしたな。ジュン様を混乱させ、申し訳ございません」

 まずい、早速ウサットが俺の罪を被ろうとしている。
 俺の判断ミスだ。
 4貴族は皆癖が強く厄介だった。

 だがマネックだけはまともだったんだ!
 こういう時は。

「すいませんでした。今まできつい態度を取り、監視を付けてすいませんでした」
「僕も疑われる事をしてきました。話を進めましょう」

「……そうだな。マネックも普通に話をしよう」
「これが僕の素です。僕を派閥に入れてくれますか?」
「それについては俺の爵位の授与の時に王と話をしようか。インサイダーの事も話し合いたい」

「では、僕が直接王と事前に話をしてきます」
「私もお供しますぞ」

 ウサットとマネックは王都に向かって行った。

「フィル、時間を取らせてすまなかった」
「いえ、それでは失礼します」

 これで4貴族との争いは終わった。
 インサイダーが難癖をつけてくるだろうが、敵が絞られたことでやりやすくなった。
 爵位の授与が終わればしばらく落ち着くか。
 いや、インサイダーは何をしてくるか分からない。
 俺は考えを巡らせながら領内を歩いた。




 領地の隅でラビイとマナが倒れている。
 原因はすぐに分かった。
 木を材料にしてゴーレムを作ろうとしていたか。

 ラビイの作った木のゴーレムが何体も横たわっていた。
 マナも植物魔法でたくさん木を作ったせいか魔力切れですやすやと眠っている。
 2人の寝顔に癒される。
  
 ラビイが目を覚ます。
「ジュン?」
「起きたか」

「ゴーレムは難しいのです。やはり何体も作って試していくしかないのです」
「何か足りないものはあるか?」
「魔石が欲しいです」

 俺はストレージからすべての魔石を取り出した。

「ま!魔石なのです!こ、これだけあればいいのが出来るです。何度も試せるです!」
「なあ、最初は小さいゴーレムを作ったらどうだ?いきなり完成型を目指す必要は無いだろ?小さいゴーレムを思うように動かせるようになってから大きいのを作ったらどうだ?」


「確かに、思ったより難しいのですよ。小さいゴーレムならマナに何度もボディパーツを作って貰わなくても作れるです」
「城に戻るぞ」

 俺はマナとラビイを両腕で抱えて街に戻った。
 城に着く前に街で木材を買い、店の外に座って小さいゴーレムを作っていく。
 子供たちが面白がって集まってきた。
 マナは眠っている。

 2本足で立つのに苦戦し、何度も何度も作り直して歩けるようになるがまた転ぶ。
 4本足じゃなく2本足のゴーレムを作りたいようだ。
 そのペースならすぐに走って動けるようになるだろう。



「ラビイ、暗くなってきた。そろそろ帰ろう」
「く、時間切れなのです」

 ラビイは魔石の入った袋を抱きしめるように持ちながらにやにやと笑う。

「これだけあれば何度もゴーレムを作れるのです」
「無理せず行こう。魔石が無くなれば魔力を使い切って倒れるまでゴーレムを作るだろ?」
「確かに魔力は無いのです。今日はジュンと一緒に眠るです」

「ん?」
「魔力は枯渇気味なのです。でも体は動くのです。バランスを取るのです」

 マナが目覚める。

「エチエチ、する」

 しばらくマナとラビイはゴーレムを作り続けるだろう。
 爵位の授与が無事に終われば魔石を取って来るのもいいかもしれない。
 俺は王都に向かうまでラビイとマナと一緒に過ごした。

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