深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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安い時に買って高くなったら売る。それが出来れば金持ちだ

4貴族最強のマネック

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 俺がベッドから出ると、ウサットが話しかけてきた。

「ジュン様、4貴族最後の1人、マネック殿が訪ねて来ました。もう3時間ほど待っておられます」
「そんなに待っていたのか。すぐに会おう」

 俺とみんなであれな事をしている間ずっと待たせていたか。
 マナ・リース・ラビイはしばらく起きないだろう。

「待たせて悪かった」
「いえ、それより最後の4貴族の件を報告します。名前はマネックで、ジョブはものまね士です。本人は器用貧乏と言っているようですが、今の経営状態を見るに領地運営で見れば間違いなく4貴族最強でしょう。他の3貴族と比べ、別格と言っていいですな」

「ウサットにそこまで言わせるか」
「しかも色々調べてみましたが、悪い噂を聞かないのです。情報操作に優れる可能性もあり、心して挑むべきでしょう」

「分かった」




 俺がマネックに近づくと、マネックは満面の笑顔で頭を下げた。

「初めまして、僕の名はマネックです。ものまね士の器用貧乏ですが、よろしくお願いします」
「ジュンだ。それで?用件を聞きたい」

「お隣の領主へのご挨拶と、領地の見学をさせて欲しいのです」
「分かった」

 俺とウサットはマネックに領地の案内をした。



「なるほど。住宅・食事・服・入浴、そしてポーションの値段は安くしているのですね。領民に負担をかけない為の方針でしょうか?」
「そうだな。最低限の生活だけは安く済むようにしている。その分高級品や嗜好品は自由に競争させている」

 こいつ、質問が的確で頭が良い。
 本質だけをついてくる!
 どこが器用貧乏なんだ?
 優秀じゃないか。

「そうだ、もしよろしければ僕の領地も視察に来ませんか?僕だけが視察をするのは不平等でしょう」
「今から行ってもいいか?」
「もちろん」

 俺とマネックの話を聞いてウサットが素早く動く。

「すぐに護衛の手配をいたします」

 ウサットはかなり警戒しているようだ。
 最悪敵の領地で包囲される可能性もある。
 悪い事をすれば幸運値は下がるが油断はしない。



 俺達がマネックの領地に入ってすぐに確信した。
 良い統治をしている。
 民の顔を見れば分かる。
 笑顔の者が多いのだ。

「案内するほど大きな領地ではありませんが、僕の屋敷に案内します。と、言ってもギルドを兼ねていまして、豪華ではありません」

 ギルド兼屋敷に着くと冒険者や手続きをする者が並ぶ。
 屋敷に豪華さは無く、機能性を重視した作りになっていた。

 マネックは確かに4貴族最強だ。
 領民が逃げ出すほどの圧政はしていないようだ。
 マネックが贅沢をしている様子もない。
 目立ったところは無いが、スキも無い。

 きっちり民を守る為の兵を配備し、物の値段も良心的だ。
 無理に領地を拡大する事もせず、じっくりと堅実に領地を安定させている。
 お互いの領地視察は何事もなく終わった。




 俺は5幹部と食事を摂りつつマネックの事を話した。

「……って感じだった。とにかくスキがない」

「やはりマネックは4貴族最強、なのです」
「リース、マネックの領地を監視してくれないか?」
「分かったにゃあ。シャドウ!」

 黒いリースがマネックの領地に向かって行った。
 そこに帰ってきたウッドゴーレムがラビイに魔石を渡す。

「助かるのです……」
「どうした?」
「うらやましいのです」

「ゴーレム、欲しいのです」
「ゴーレムカーを作っていたじゃないか」
「シャドウやウッドゴーレムのような完全自立型ゴーレムを作りたいのです」

 そういえば前言っていたな。
 二足歩行のゴーレムを作りたいと。
 二足歩行は難易度が高いんだった。

 最近ラビイには建築とポーション作りを続けさせている。
 ラビイの自由を制限しすぎた。
 正直に言えば今はポーションを作って欲しい。
 ポーションの値段が高騰しているのとポーションが不足しているからだ。
 だが、ラビイのしたいようにさせたい。

「ラビイ、やってみるか?」
「いいですか?」
「ああ、ゴーレムを作ってみてくれ」

 ラビイが俺に抱きついてきた。

「皆も何かやりたいことは無いか?」
「私は、今が十分に幸せですが、もう少し筋肉をつけたいですな」
「魔物狩りで体を動かせばいいか?」

「はい、ですがそれをするにはマネックの件の決着がついてからですな」
「そうか、ほかのみんなは何かないか?」

「エチエチ、する」
「私も一緒に寝るにゃあ」

 9人のメイドも声を上げる。
「最近私達してないよ」
「次は私じゃない?」

「わ、私もするのです!」
「わ、私は何もありません。ごちそうさまでした」

 フィルは逃げ出すように部屋を出て行った。
 12人を相手にするのはきつ……いけるな。
 俺達はベッドに向かった。




 ベッドでリースが言った。

「気づかれたにゃあ」
「何がなのです?」
「シャドウがマネックに気づかれたにゃあ」

「マネックか。強いな」
「これからは近くで監視することは出来ないにゃあ。マネックは斥候の能力を覚えているにゃあ」

 ものまね士は様々なジョブの能力をある程度再現することが出来る。
 各ジョブよりスキルの精度は落ちる。
 マネックは自分の事を器用貧乏だと言っていた。
 器用貧乏?万能型じゃないか。

 斥候の能力を使う事で気配を感知されたんだろう。
 監視がバレたら明日にでも難癖をつけられるかもしれない。




 そして次の日、マネックがやってきた。
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