深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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金持ちは株か不動産だよな

怒るパワハーラ 【パワハーラ視点】

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 まったく、まさか王とグレスが来るとは!
 運のいい奴め。
 グレスの奴、あいつの目は本気だった。
 悪事を働き、バレれば俺を殺しに来るだろう。

 ダラダラと汗をかく。
 だが問題はない。
 
「王とグレスは帰ったか?」

 執事を呼び報告させる。

「はい、斥候より帰還の報告を受けています」
「屋敷周辺の町作りは終わった。更に領地を拡大する!」

 ロングスパン領の周りを囲うように領地を作る。
 ロングスパン周辺の立地は魅力的だ。
 この程度の事なら後から何とでも言い訳が出来る。

 俺は何もルールを破っていない。
 ただ、農耕と街作りに適した領地を細長く拡大するだけだ。

 未開地の開拓は早いものがちだ。
 動きの遅いロングスパン領が悪いのだ。
 領地を拡大したら通行税を取る。
 最も王とグレスの目もある。

 高すぎる料金設定は出来ないが、高くもなく、安くもない微妙な料金に設定し、じわじわとロングスパン領から金を巻き上げてやる。

 奴らが頑張って働き、稼いだ金を少しずつ吸い取る。
 この行いは投資、そう、投資なのだよ。
 こうしてロングスパン領を囲うように領地の開拓が行われた。



「なぜだあああああああああ!」

 俺は叫ぶ。
 これで51回目だ!
 何度魔物に襲撃されれば気が済む!

「執事!来い!」

「はい」
「言われたら5秒以内にこい!」
「申し訳ありません」
「これで51回目の魔物の襲撃だ!どうなっている!」

「それが、細長く領地を拡大した為、兵が領地の防衛に苦戦しているのです」
「多すぎる!51回の領内への魔物の侵入は異常だ!」
「ロングスパン領の兵や冒険者が最近領地周辺の魔物狩りをしていないようなのです。更にグレス率いる兵士隊の討伐も見なくなりました」

「俺を潰す気か!」
「我々がロングスパン領を囲うように領地を広げた結果、ロングスパン領は魔物の侵入が減り、多くの者が中級ダンジョンで稼いでいると聞きます。ロングスパン領は今、領地の防衛費を削減しているはずです」

「くう!こうなったら通行税の徴収を行う!ロングスパン領を覆うように柵を設置しろ!確実に通行税をもぎ取る!」
「お、お待ちください!他の者が通れぬような規模の大きな柵を設置すれば、資金が枯渇します!」

「構わん!通行税で補填する」
「通行税ではそこまで多くの収益を得ることが出来ないでしょう。柵の費用を取り戻すまで数年を要するかと」
「実行しろ!」
「……かしこまりました」

 こうしてロングスパン領を囲うように柵が作られた。




「来ない来ない来ない来ない!なぜ来ない!」
 
 俺は怒りで執務室の机を外に投げ飛ばす。
 まったく人が来ないのはおかしい!
 これでは通行税が取れない!
 更に怒りが収まらず執務室の物に当たって暴れる。

「はあ、っはあ!おかしい。ロングスパン領は王都の衛星都市だ!王都との交易が惜しくはないのか!」
「交易はしているようです」

「来ないではないか!通行税が取れん!」
「それが海路を使っているようなのです」
「は?まてまて!おかしいおかしい!海路はアイランドタートルの縄張りだ!」

「内政の英雄率いる軍がアイランドタートルを討ち取った話は有名でしょう。しかもその事で漁業の収量が大幅に改善されました」
「なん、だと!」

「……今ロングスパン領では船と馬を使い、王都と交易路を構築済みのようです。しかも安い値段の運賃に抑えられています」

「どうすればいいというのだ!このままではまずい!」
「領地を縮小するのです。無理に領地を拡大した結果、領地の防衛が出来なくなっています。無理があったのです」

「せっかく建てた柵はどうする!」
「諦めましょう」

「ぐぬぬ……ロングスパン領から防衛費を徴収する」
「そのような事をしてはグレス兵士長に殺されてしまいます」
「お前が言ってこい」

「私がパワハーラ様のお考えを伝えても結果は変わりません」
「そうではない。お前が独断で防衛費を徴収してくるのだ」
「私が行っても結果は変わらないでしょう」

「やる前から諦めるな!」
「執事を辞めさせていただきます」
「ははははは、不愛想で融通の利かない貴様に他の働き口などあるわけがないだろう」

「私は無能という事でしょうか?」
「そうだ。だから俺がお情けで雇ってやっている」

「心置きなく辞めることが出来ます。失礼しました」
「ふん、すぐに泣きついてくるに決まっている」

 執事はその場を後にした。

 そして30分後。

「誰かいるか?」
「はい、どうしましたか?」
「執事はどうした?」
「もうとっくに出て行きました」

「あいつも怒る事があるのだな。どうせすぐに戻って来る」

 そして執事は戻らなかった。




「執事の奴、本当に辞めたのか!まったく、根性の無い奴だ」

 執事が辞めてからやけに病気で暇を出す者が多くなった。
 流行り病か?
 だが領から居なくなるのは不自然だ。



 執事が居なくなったことで他の者がパワハーラの矢面に立つ回数が多くなった。
 執事が居なくなったことでパワハーラの無茶な指示も増えた。
 パワハーラは言う事が二転三転する。
 仮病を使って領から逃げ出す者が増えたのだ。



 ぐぬぬ!
 こうなったら俺が自ら内政の英雄に分からせてやる。
 俺のおかげでどれだけ領地が安全になったか分からせ、防衛費を徴収する。

「兵を集めろ!2人だけか!他はどこに行った?」
「今防衛に手いっぱいで兵が足りないのです」

「大変です!街が魔物に襲われています!」
「数は?」
「15体です」

「たったそれだけか!各自で対処しろ!」
「それが、防衛が分散しており、兵が足りません!」
「おいお前、行ってこい」

「ロングスパン領に行く件は中止でいいのですね?」
「魔物の討伐後に向かう」

 兵士は開いた口が塞がらないという顔をした。

 その後討伐に向かった兵士は戻ってこなかった。
 同僚の兵士と家族を連れて領から逃げ出したのだ。
 パワハーラは同じことを繰り返し、兵の数が減っていった。

 兵の家族も一緒に逃げ出し、危険となった領から人が減っていった。


 くそ、何度ロングスパン領に行こうとしても魔物の被害に追われて中々行く事が出来ん。
 夜も魔物の襲撃で起こされる。
 ロングスパン領は目と鼻の先だ。

 もういい。
 俺一人で向かってやる。
 すぐ隣の領だ。
 魔物に襲われる事もないだろう。
 こうしてパワハーラは1人でロングスパン領に向かう。




「きええええええええええええい!!!!

 うさぎの魔物に囲まれ噛みつかれる。
 パワハーラは自分の領地に逃げ帰る。

「誰かおらんのか!この魔物を倒せ!きええええいい!」

 うさぎに噛みつかれながら奇声を上げる。

 パワハーラは色々なものを失った。
 金を失った。
 領民を失った。
 そして今いる領民の信頼を失う。

 得た物は領民の怒りだけ。
 












 
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