深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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金持ちは株か不動産だよな

パワハーラ子爵

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 俺はビーチでも休息を終え、仕事に戻った。
 昨日は楽しかった。
 定期的にみんなにも遊んでもらおう。

 もちろん仕事が好きな者には無理強いしないが、休みたいものには休みだけでなく遊びも必要だ。
 ネコ族の移民を受け入れた時は財政が苦しかったが今は余裕があるのだ。

「報告します。4貴族の1人、パワハーラがこちらに向かってきます」
「ん、まだついていないのに分かるのか」
「領民から連絡がありました」
「着たらすぐ案内してくれ」

 領民も目を光らせているのか。
 
「内政の英雄・ジュンは居るかあ」
「俺だが?」
「貴様がジュンか、私はパワハーラ子爵だ。同じ子爵だが俺の方が代々続く子爵の家系で伝統の重みが違う。同じ位だと思うなよ」

 こいつも癖が強い。
 4貴族は全員癖が強いのか?
 自滅してくれないかな?
 いや、今も健在だし、残る2貴族は規模がそこそこ大きい。
 
 淡い期待は捨てよう。
 そして早く話を終わらせよう。

「で?何の用だ?」
「俺は爵位の伝統の話をしている」
「自分の方が上だと思いたいんだろ?で?何の話だ?」
「態度がなっていない。俺が上でお前が下だ!その事ははっきりさせる」

「もう帰ってくれないか?迷惑だ」

 パワハーラは口角を釣り上げた。
 こいつ、マウントを取りたいだけか。
 しかも俺が渋い顔をしたらしてやったり顔をする。

「ジュン様、王が視察にやってきました」
「分かった」

 そう言ってウサットが机にコーヒーをガチャンと置く。
 そしてパワハーラに殺意のこもった目を向ける。

「き、貴様!ジュン!執事の躾がなっていないようだな!」

 パワハーラはウサットから目を逸らして俺に抗議する。
 ウサットが怖いようだ。
 放置しよう。

「ウサット、俺にもコーヒーをくれ」
「おい!貴様!無視するなよ!」
「早く帰れ、王が来ているんだ」

「何を騒いでいる?」

 そこに王とグレスが現れる。

「エルク王にグレス、すまない。こいつが喧嘩を売ってきて手間取った。待っていて貰えればこっちから向かったぞ」

「気遣いは不要だ。所でパワハーラ子爵、何を揉めていた?」
「は、はい。ジュンと話をしていただけです」

「違うだろ?俺は子爵になったばかりだけどパワハーラは何代も続く伝統ある子爵だからパワハーラの方が上だと言っていたじゃないか」

「パワハーラ、本当か?」
「い、いえ、その」
「まあいい。ただ、王家の決めた爵位に反論があるなら私に言ってくれ。勝手に歴史の重みを加味されては困るが、そのようなことは無いように願いたいものだ」
「も、問題など、何もありません」

 王はパワハーラの両手に手を置く。

「パワハーラ、内政の英雄であるジュン殿にふざけた事をするなら、それ相応の覚悟を決めて動け。最悪処刑処分とする。分かったか?」
「は、はい」

 王の笑顔が怖い。
 パワハーラの肩に置いた手ががっちりと肩を握る。

 俺と王が話を始めようとしたタイミングでグレスがパワハーラに近づく。

「おかしな真似をしたら私の命にかけてでもお前を処分する。私が死んででもだ!お忘れない様願いたい」

 グレスは冗談を言わない。
 パワハーラは更に汗をだらだらと掻く。
 ガチの言葉だ。

「パワハーラ、皆と話がしたいか?それとも帰るか?」
「帰らせていただく」

 パワハーラは帰っていった。

「皆のおかげで助かった」
「王とグレス殿には感謝ですな」
「ウサットも助かったぞ」
「ほっほっほ。私としたことがつい、パワハーラに殺気を向けてしまいました」

「ジュン殿、4貴族の内2つの貴族を打倒した手腕見事だ」
「あいつら勝手に自爆して退場してたぞ」
「それは違う。ジュン殿の統治能力の高さが周りの領民をロングスパン領に移させたのだ」

「その通りです。すでに4貴族と対峙する前に手が打たれていたのです」
「移民が増えているな」

 最初は1000名ほどだった領民も、ネコ族の移民で1500名に増え、更に2つの貴族が自爆して2000名以上に増えた。

 更に残った貴族の領地からじわじわと領民が移民している。

「このままだと領民が3000を超えるんじゃないか?」
「うむ、その調子で頼む」
「うまくいけば貴族が減っていくぞ」

「構わん。インサイダー派の貴族の力は削れるだけ削りたい」
「インサイダーは、力を持っているからな」

 インサイダーはこの国唯一の公爵だった。
 侯爵に位を落とされたとはいえ、まだまだ強力な力を持っている。
 王が強引にインサイダーを失脚させることが出来るかどうかも分からないし、失敗した場合法を破った王が責められる事になる。
 失脚に成功したとしても王の幸運値が下がる可能性が高い。

 法を逸脱しない範囲でインサイダーがぼろを出したタイミングで地位を削り取る地道な作業になるだろう。
 もちろん向こうは地位を維持するために何かをまた仕掛けてくるかもしれない。

 現に俺はインサイダーから合法的にロングスパン領に攻勢を仕掛けられているのだ。
 貴族が未開地に新たな領地を開拓するのは自由で早い者勝ちだ。

 今行われているのは武器を使わない戦争だ。
 
「ジュン殿、無理をしていないか?」
「大丈夫だ。周りのみんなが優秀だからな」
「苦しくなったら、いや、そうなりそうになったらすぐに言ってくれ」
「分かった」

「ジュン殿、もし何か協力できることがあれば言ってください」

 俺はグレスの事が気になった。
 もし俺や王に危機が迫れば、グレスは命を投げ出して貴族を殺すだろう。
 そうはしない。
 そうはさせたくない。

「グレス、思いつめないでくれ。俺や王に何も危害が加わらないようにしたいと思っている。そうならないように動いていく」

 グレスはにこりと笑った。
 
「私の心配は不要です」

 グレスの笑顔を見て、俺は嫌な予感がした。
 このままでは駄目だ。
 もっと加速する必要がある。

「エルク王、グレス、この周辺の魔物狩りを意図的に止めてくれ。ウサット、周辺の魔物狩りを今までより更に放置する」
「それでは、他の貴族の領民に被害が出てしまう」
「そうだ。それをしたいんだ。俺は周りの領地の領民をこのロングスパン領に誘導する」

 そう、残った2つの貴族が安定する前に力を削ぐ。

「危機感を煽ってロングスパン領への移民を促すか」
「ああ、納得できないとは思うが、予感がする。今より発展を加速する方が良いと思った」
「英雄の予感、分かった。グレス、そのように動いてくれ」
「分かりました」

 こうしてロングスパン領は周辺の魔物狩りを止めた。
 今までも周辺貴族の領地近くの魔物狩りは控えていたがこれにより完全に領地周辺の魔物狩りをやめた。

 更にグレス率いる兵士隊はロングスパン周辺の魔物狩りをやめる。

 この事によりロングスパン周辺の魔物は増加した。





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