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金持ちは株か不動産だよな

検討士ケント

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 俺はアイランドタートルを討伐し、その日は休んだ。
 朝起きるとリースとラビイが隣で寝息をたてる。

 俺が起きると2人も起きる。
 外を眺める。

「それにしても、4貴族の中であそこだけ領地の間隔が近いよな」
「ケント男爵の領地なのです」

「どういう人間なんだ?
「ケント男爵のジョブは剣闘士で検討士ケントと呼ばれているのです」
「闘技場で戦う剣闘士だから剣闘士なのか?」
「ジョブは合ってますが、呼ばれ方は調べて考える方の検討なのです」

「ん?意味が分からなくなってきた」
「実際に検討士ケントの所に行ってみた方が分かりやすいです」

「あいさつしに行ってみるか」
「では3人で行くです」
「その前に、ちゃんと服を着ような」





 俺達は剣闘士ケントの元を訪れる。

「ようこそお越しくださいました」
 ケントはこの世界にしては珍しい老人だが、背筋は伸び、ピンとしている。

「どうも、ロングスパン領のジュンです。挨拶に来ました」
「これはご丁寧にどうも」
「所で、2つの領で連携を取り、魔物狩りをすれば効率よく魔物を狩れると思うのですがどうでしょう?」

「検討します」
「ん?」

「何を検討するのですか?兵士の配分でしょうか?防衛する範囲についてでしょうか?」
「えー、様々な観点から多角的に検討します」

「そ、そうですか」

 そこに兵士が走って来る。

「大変です!領内に魔物の群れが侵入しました!このままでは被害が出ます!」
「迅速に対応していただきたい」
「ケント様!剣闘士であるあなたのお力をお借りしたいのです」

「可及的速やかに、適切な対応を取って頂きたい」
「そ、そうではなく!すぐに戦って欲しいのです」
「わたくしの参戦も含め、検討します」

「検討ではなく!今決断を!時は一刻を争うのです!」
「様々な要因を考え、検討します」
「ぐう!失礼します!」

 兵士は走り、戻っていった。
 兵士には怒りがにじんでいた。

「もし困っているようでしたら、協力しましょうか?」
「今後の協力も視野に入れて検討します」
「あっそ、帰るか」

 こいつと話をしているとイライラする。
 何も決まらないし時間の無駄だ。

 俺達3人は領に戻る。

「あれが検討士なのです」
「意味が分かった」

「検討士ケントは王都で有名にゃあ。何か起こると配下に対応させてうまくいかないと怒るにゃあ。でも自分では決断しないにゃあ」

「自分で決断しなければ責任は問われない。安定した王都の中なら有効かもしれないが、予期せぬトラブルが起きやすい開拓地でそれをやったらダメだろ?」

「でもケントは領民からの支持率は悪くないです。でも、事業者や商人からの支持率はわずか3%です」
「経済の事を見ている者からほぼ支持がないのか。逆に全体の支持率が悪くないってのが信じられない」

「これから検討士ケントは苦労をすると思うです」
「さっきの兵士、すぐに辞めるだろうな」




【ケントの兵士視点】

 検討士ケントの部下は兵士の詰所で兵士が不満を垂れ流す。

「ケント様はなぜ動いてくれなかったんだ!」
「奇跡的に死者は出ていない。だが俺の嫁が危ない目に会った」
「何を言っても検討するしか言わない」

「その上俺達に責任を押し付けて成功すれば当然。失敗すれば執拗に責められる」
「まったくだぜ。そこまで言うなら最初から検討せず自分で決めて欲しいもんだ」

 女性の兵士が会話に混ざって来る。

「ねえ、みんなでロングスパン領に行かない?」
「だがよお、住宅の余裕が無いって前に聞いたぜ」
「前はそうだったわ。でもね、ネコ族の移民が落ち着きそうなの」

「そうよ、それに私達は戦闘ジョブよ。役にたてるなら受け入れてくれるわ」
「そうだな。最悪テント暮らしがしばらく続いても、ロングスパン領の方が良いかもな」

「それよりも何よりも、ロングスパン領の領民の顔が笑顔なのよ」
「そう!それよ!この領とは大違いだわ。民が笑顔なのは統治が良い証拠よ」
「ここの開拓を始めてから検討士ケントは失敗続きだ。今に俺達もひどい目に会うぜ」
「移民するか」

 こうして徐々にロングスパン領に人が流れ、人の移動は加速していった。




【ジュン視点】

「そう言えば検討士はどうなったんだ?」

 俺は近くに居たラビイに聞く。

「貴族の地位を失ったです」
「やっぱりか。俺何もやってないんだけどな」
 
 最近ケントの領から人が流れてフィルが忙しそうにしていた。
 ケントは勝手に自爆して貴族の地位を失ったのだ。

「なあ、もしかして、4貴族は気にしなくてもいいんじゃないか?」

 ラビイはフルフルと首を横に振った。

「くっくっく、4貴族の中で検討士ケントは最弱、なのです」
「確かに真っ先に運営を失敗した」

 最速で貴族の地位を失ったのだ。

「残り3貴族との戦い、ここからが本番なのです」
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