深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

文字の大きさ
上 下
56 / 113
金持ちは株か不動産だよな

隣接する領地

しおりを挟む
「そろそろ食事の時間なのです。皆で食べてくるですよ」
「そうだな。ウサットが帰って来るまで何が起きているか分からない」



 俺達が食事を終える頃、ウサットが戻って来る。

「報告します」
「頼む、ウサットの食事を持ってきてくれ」

 メイドが動き出す。

「新しく建設中の建物は新たな領地の建設現場のようです」
「領地の近くに違う領地を作るのはありなのか?」
「問題ありません。未開地の開拓は早いもの勝ちです」

「誰が建てているんだ?」
「どうやらインサイダー侯爵派の4貴族のようです」
「だから4カ所で建設しているのか」

「ロングスパン領の邪魔をしていると考えていいか?」
「そうだと思います」

「ウサット、他に気づいた事はあるか?」
「いえ、報告は以上となります」
「助かった。食事を摂ってくれ」

 ウサットは失礼しますと言って食事を始める。

「俺の領地を囲むように領地を作るか。領地周辺の魔物狩りの費用は浮くか」

 周りの領地を建てられるのは邪魔だが、良い面もある。
 周囲の魔物狩りのコストが浮くのだ。

「他に気になるのは奴らが領地を拡大して包囲されたら通行税を取ってこないか?」
「やってくるかもしれません」

「後は、この領地の拡張を妨害するように領地を拡大されたら厄介だ」
「きっとそれが狙いなのです!頭にくるです!」

「俺達の領地に火をつけたり、物を盗んだり、人を誘拐したりしないか?」
「さすがにそこまではしないでしょう。命令した者も実行した者も幸運値は下がっていきますから」

「あくまでルールを守って嫌がらせをしてくるか」
「そうなるでしょう」

 食事を終えたウサットが口を拭ってから発言する。
 もう食べ終わったのか。

「ジュン様の危惧されている点は4貴族の領土の拡大によるロングスパン領の領土拡張の阻害と高い通行税の徴収についてですな?」

「そうだな」
「では、私が王に報告してきましょう」
「馬を使うなら出すぞ」

「馬など不要にございます。私の足は自身の肉体!馬よりも速く駆け、即報告しに戻ってまいります」

 そう言ってウサットは走り去った。

「そう言えば4貴族の元の領地ってどうなっているんだ?」
「確か、すべて王都にあったはずです」
「王都の人口問題は解決したのか?」

「4貴族が王家に土地を返上していればそうなりますが、恐らくは」
「インサイダー侯爵に譲渡した、か」
「そうだと思います」



【インサイダー視点】

「4貴族の領地建設は順調か?」
「はい、しかしこのような事をしていてはインサイダー様の幸運値に悪い影響が出てしまうのでは?」
「ふん。執事風情が気にする問題ではない。口を慎め」

「……失礼しました」
「くっくっく、このままロングスパン領を包囲し、高い通行税をむしり取る。更に領土の拡大も防止出来る。その上通行税の値段を操作する事で王都へのポーションの供給すら操作可能となる」

 ワシは投資家だ。
 一手で最大の効果が得られる策を打つ。
 
 もちろん貴族に援助した資金の分最初は資産を減らす。
 だが、ロングスパン領のポーション供給を操作出来ればすぐに元は取れる。
 ワシの領の一番の収入源はポーションの販売だ。

 この勝負は王都へのポーション販売の覇権を握っている。
 王もワシの有能さに気づけばワシに頭を下げるしかなくなる。
 ワシに誰も意見できなくなる。

 じわじわと苦しめ。
 内政の英雄。

 そしてワシに泣きついてこい。
 フィルとリースを差し出し、泣いて懇願すれば許してやろう。
 4貴族の包囲が終わったらロングスパン領からのポーション供給を止める。

 そしてポーションを高値で売りつける。
 ポーションの値段は需要と供給で決まる。

 売るポーションの数が減ればポーションの値段は高騰する。
 王都へのポーション供給量を絞り、高値で売ってやろう。
 皆はポーションのありがたさを知るだろう。

「くっくっくっく!がはははははははは」




【ジュン視点】

「なあ、思ったんだけど、港はすでにロングスパン領の領地なんだ。海路を使えば良くね?」

 もし陸路を包囲されても海は抑えている。
 陸が包囲されても海で運べばいい。

「それは難しいのです。浅瀬はまだ良いのです。でも深い海にはアイランドタートルが居るのです」
「そうか、今日はゆっくり休もう。後は明日考える」



【次の日の朝】

 ロングスパン領の精鋭が集まる。

「ジュン殿、話は聞いております」
「何がだ?」
「ネコ族の漁業発展の為、憎きアイランドタートルを討ち取りに行きますぞ!」

 ネコ族が畏怖の念で俺を讃える。
「私達を助けてくれてたのに、また助けてくれようとしているんですね」
「私の体でよければいつでも差し出します」

「船の準備は出来ているのです!出発なのです!」

 ラビイ、お前か!

 3隻の大型船でアイランドタートルの元へと迫る。

「本番はこれからなのです!アイランドタートルの背中にはヒトデの魔物がいるです」
 ヒトデの魔物は回転し、空を飛びながら手裏剣のように船に襲い掛かる。

「私の手裏剣で全部撃ち落とすにゃあ!」
「ウッドニードル!」
「ファイア!」
「マジックアロー!」

 あっという間にヒトデが全滅する。

「船が、無傷だと!」

 俺は過剰戦力という言葉が頭をよぎった。

「我々マッチョ部隊も負けてはいられませんな!」

 マッチョ達が船を蹴って海にジャンプする。
 そして海の水を蹴って海上を走る。
 海の上って走れるのか。

 そして空に飛ぶマッチョ。
 海が大きな水しぶきを上げ轟音を打ち鳴らす。

「きえええええええええいいい!」

 急下降したウサットのクワがアイランドタートルの甲羅を直撃し、甲羅にひびが入った。

「まだまだああ!」

 その後、空から落下するマッチョがモリやスコップ、更には斧をヒビに突き立てていく。

 アイランドタートルが消え、魔石が海に沈んでいく。

「まずは1体」
「残り11体!すべて沈める」

 その後、12体のアイランドタートルはすべてマッチョ部隊に沈められた。

 ウサット率いるマッチョ部隊はさわやかな笑顔で船に戻って来る。

「はっはっは、私としたことが、魔石の回収を後回しにしました。すぐに回収してきます」

 マッチョ達が魔石を回収し、すぐに帰路につく。
 俺はただマッチョの活躍を眺めていた。

「いい天気だな」

 俺は遠い目で空を眺めた。
 そして帰るといつものように俺が称賛され、すべての手柄が俺のものになっていた。
 浅瀬だけでなく船で魚を取れるようになりネコ族に喜ばれた。

 魚がたくさん取れるようになったのは良かった。
 だが、まだ4貴族の領地建設は終わっていない。

「今はまだ陸路でいいよな」









しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...