深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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金持ちは株か不動産だよな

石の城と木の城

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 結局インサイダー公爵への敵意は消えていなかった。
 ウサットも潰す気満々で考えているようだ。
 まずはこの領地を安定させるよう説得し、納得してもらった。

 まずは石の城を見学する。

 新しく出来た城は石の城と木の城の2つが融合している。
 石の城はうさぎ族が中心となって作り、木の城はドリアード族が作った。
 ラビイ、フィルの案内で石の城を回る。

「石の城は料理が充実しているのです。24時間体制で料理人が配置されているのですよ」
「いつ行っても料理を作ってくれるのか」
「そうなのです」

「更に大きな会議室もあるです」

 案内されて入ると、そこには王城を超える大きさの会議室があった。
 中心部に円卓が置かれ、その周りを中央部より高い位置にリング状のテーブルと椅子があり、さらにその上には観覧席もあった。
 王都の会議室のパワーアップバージョンだ。

「更にカフェスペースも設置してあるです。ここで打ち合わせも出来るです」

 次々と案内されるが、この城で働く者用の部屋に浴室、更に受付カウンターもあった。
 宿屋っぽさもある。
 俺が宿屋っぽいのがいいと言ったからか。

 更に離れの鍛冶工房やポーション工房などの生産用施設も充実していた。
 農業や酪農施設も完備され、自給自足も可能となっている。

 防壁には櫓も建てられ、魔物の侵入を防ぐ。

「城の1部は冒険者や商人用の宿屋として開放しているですよ。たくさん泊ってもらえばたくさん利益が出るです。たくさん魔石が集まるです」

 そして最後に俺が住む場所が用意されていた。
「最上階の寝室なのです。大きなベッドは何人も寝ることが出来るです。更にお風呂とサウナもあるです。甘い夜を過ごすことが出来るです。フィルもそろそろジュンと一つになるです?」

「だ、大丈夫です!」

「立派な施設だ。これなら中級ダンジョンに来た冒険者が泊って、武具やポーションを買ってくれるだろう」

 大きすぎるベッドやサウナの事は指摘しないでおこう。



【冒険者ギルド】

 ギルドで酒を飲みながら4人組パーティー【コンシューマーフォー】が噂する。

「うさぎ族が王都からほとんど居なくなっちまったな」
「今は中級ダンジョンの近くに城を建ててるんだろ?」
「お前知らねーのか?もう建て終わってるぜ。宿屋をやってるらしい。武具やポーションも売っているようだぜ」

「そうか。評判は分かるか?」
「それが分からねーんだ。みんな行ったきり戻ってこねーんだ」
「どういうこった?」
「これは俺の予想だがよ、居心地が良すぎるんじゃねーか?」

「誰一人として戻ってこないっておかしいだろ?」
「いや、宿屋の宿泊数に制限があると考えたらどうだ?」
「皆には言わず、ずっと宿屋をキープし続ける、か?だがそこまでするか?」

「なあ、うさぎ族の麦酒とワイン、飲みたくねーか?」

 ゴクリと男は喉を鳴らす。
「おま、やめろよ!今普通の酒を飲んでるんだ。飲みたくなるじゃねーか」
「ははははは、悪いな」
「うさぎ族が作ったベーコン・チーズ・フライドチキン・パンサンド」
「お前!やめろって!食いたくなるじゃねーか」

「もお、2人ともお酒と食べ物の話ばっかり」
「そうは言うがよお。うさぎ族が居なくなってうまい酒とうまい食い物が品薄になっちまったんだ。お前うさぎ族の作ったケーキは食いたくねえのかよ?」

「う、そうね。確かに食べたいわ。皆で中級ダンジョンに行きましょうよ」

 3人は乗り気になる。
 だが1人だけ浮かない顔をする。

「私、食べ物に興味、無い」
「新しいロングスパン領は、サウナもあるみたいね。それと、マッサージもあるみたいだわ」

「……行く」

 こうして冒険者の多くがロングスパン領の石の城の宿屋をキープするようになり宿屋は満室状態となる。

 ロングスパン領の移転。
 更に冒険者の新ロングスパン領への移住。
 この2つにより王都の人口増加問題は緩和し始めた。

 更に冒険者が魔物を狩り、中級ダンジョンから魔石を持ってくるようになったことで、スタンピードの発生が抑えられ、魔物の危険が減った。

 そしてうさぎ族の商品は売れに売れた。

 ジュンはロングスパン領の人口は増加しないと悲観的な予想を立てていた。
 投資家は常に失敗したケースをいつも考え、対策を取る。
 その姿勢がジュンの予想を外れさせる。

 ロングスパンの人口は伸び始める。
 だが、その事により、石の城の宿屋不足という嬉しい誤算ももたらした。




【ジュン視点】

「次は木の城か」
 マナが俺におんぶされつつ、フィルと一緒に見学を始める。

 外から木の城を見ると、大樹に窓と、階段がついている。
 扉を開けると木の家が広がり、感動する。
 童話の世界のようだ。
 大樹の中が居住スペースになっている。

 椅子もテーブルも窓も全部曲線的なデザインだ。
 
「なんか、がらんとしている。人が居ないのか?」
「今ドリアード族100名とそのお世話をする女性エルフ10人しか住んでいないようです」
「みんなどこに行ってるんだ?」
「みんな、農地」

「ドリアード族の農地を見学しますか?」
「そうだな、案内してくれ」

 農地に案内されるとドリアード族がまとまってカートに乗って移動している。
「はーい、もうすぐ農地に着きますからね」

 エルフの女性がカートを押してドリアード族に声をかけている。
 この光景、どこかで見た事がある。

 幼稚園児だ!
 あんなカートに何人も乗っていた。
 ドリアード族は全員にこにこと笑いながらカートに乗っている。

 体は大人、心は子供。
 思ったことは言わないでおこう。
 だがドリアード族が農地に入った瞬間一族は真価を発揮する。

グロウアップ成長促進
サンライト太陽光
クラウドレイン雨雲

「凄い!あれだけやったらすぐに野菜を収穫できる」
「ドリアード族は植物魔導士の力を持っているんです」
「あれだけ出来るならファーマーの上位互換なんじゃないか?」

「いえ、苦手な部分もあります」

 ドリアード族は近くにあるイチゴを取ろうとして手を伸ばすがうまくいかない。

「はいはい、今取りますよ」

 カートを押していたエルフがイチゴを取って渡す。

「私も食べる~」
「私も~」

「ドリアード族は収穫が苦手なんです。それにファーマーは家畜の世話も出来ますから、応用が効くんです」
「良く分かった」

 ドリアード族の能力は偏っている。
 魔力が高く、植物を育てる能力は高いが育てる能力に特化しており、身体能力も低い。
 そしてさっきからドリアード族は一歩も歩いていない。

「ドリアード族って歩かないのか?」
「いえ、走りますよ。見てください。うさぎ族がお菓子を持ってきました」

「今日のお菓子はカスタードタルトですよ!」

「「わーい!」」
「走った!ドリアード族が走ったぞ!」

「私も、食べる」
「そうだな、マナもお菓子にしよう」
 こうしてみんなでお菓子を食べた。
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