深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

文字の大きさ
上 下
42 / 113
金持ちは株か不動産だよな

新しい力

しおりを挟む
「重大案件なのです!」
 ラビイが本とペンを構える。

 ストレージの強化と新スキルか。
 俺は直ぐにスキルを確認する。

「まず、ストレージは収納量が増えた」
「そ、それはもしや!ジュン様にもっと多くの献上品を渡して欲しいという女神ファジーのご意志ではありませんかな!?」
「も、もっと頑張るです」

「違います」
「違うからな」
 俺とフィルが真っ先に否定した。
 絶対に違う。
 女神がそんな緻密な考えをするわけがない。
 絶対に無いのだ!

「次は新スキルだが」
 俺は話題を変える。
 
「新しいスキルは【アイテム投資】だ。このスキルはストレージ内のアイテムをセットする事で勝手にアイテムが増えていく。実際に例を出して言うと、ポーションを100本をアイテム投資にセットすると、1日で1本ポーションが増える」
 

 みんながえ?それだけ?という顔をした。
「ジュン様のスキルとしてはその、地味というか何というか……」
 ウサットが遠慮がちに答える。

「俺のジョブは投資家だ。じわじわ効果が出るスキルが多くなると思う。経験値投資も俺のレベルが低い内は強くなかった。今のアイテム投資の最大セット数は100個をセットして増えるのは1日1個だけだ。だが、1%の増加は強力だと思うぞ」

「1%は多くないにゃあ」
「そうですね、ラビイなら1日でたくさんのポーションを作れますし」
「ポーションなら私が作るのです」

「ま、待ってくれ!1日1%は強力だぞ。例えばそう、魔石だ。魔将の魔石を100個セット出来れば毎日1個魔将の魔石が手に入るんだ!ラビイ、雑魚の魔石を大量に合成して魔将の魔石と同じくらい大きく出来ないか?そうすれば大きい魔石が毎日一個手に入る」

 俺は魔石をストレージから取り出した。
「ま、魔石なのです!こんなにいっぱい。大きいのです!はあ、はあ、これだけあればたくさんのポーションを作れるのです」
 ラビイは魔石に引き寄せられるように近づく。

「ラビイ、ジュン様の質問に答えよう。魔石を魔将の魔石と同じくらいの大きさに合成出来るかい?」
 ゆったりとした口調のウサットだが少し目が変わってきた。

「錬金術、たくさん使えるです」
「ラビイ、この魔石は俺のアイテム投資のスキルに使う。ポーションの為に使うのは今度な」

「でも、これだけあれば魔力が無くなっても何回も錬金術を使えるです!ポーションの素材はたくさんあるですよ!魔石欲しいです!」

「ラビイいいい!ジュン様への意見!1度までなら見逃すが3度となれば私の執事道が断固許さあああん!」

 急にウサットが大きい声を出した。
 ウサットの筋肉が更に隆起する。
 ウサットはラビイのうさぎ耳を掴んで奥の部屋に向かった。
 ラビイがウサットに説教を受ける声が聞こえる。

 メイドが声をかける。
「ジュン、魔石なら私が他の錬金術師の所に行って合成してもらうよ。でも、魔将と同じ大きさにするのは難しいかな。それでもアイテム投資に使える?」
「大丈夫だ。大きさが違っても同じ種類ならセット可能だ」

「それよりもラビイは大丈夫か?」
「大丈夫、悪い事をするとウサットに怒られるのはいつもの事だよ」
 そういえばウサットは元長老だったな。
 

「コーヒー、飲む?」
 メイドが何事も無かったように言う。
 いつもの事なのかもしれない。

「頂こう」
 俺達はウサットとラビイを放置してコーヒーを準備してもらう。

 ウサットとラビイが戻って来る。
 ラビイの元気がない。

「話を続けていいか?」
 みんなが頷く。

「1%の増加は強力だと思うぞ」

「すいません。良く分からないのです。よろしければ説明をお願い出来ないでしょうか?」
「これは元居た世界の話になる。俺は元の世界で株のインデックス投資をしていた」

「株は分かりますが、インデックスが分かりません」
「インデックスは、物によるけど例えばそれを買うだけで500社分の株をちょっとずつ買える。そういう株券だ。株って会社が潰れるとその株券が紙切れになるだろ?でも500社に分散して買えば、何社か会社が潰れても他の会社は生き残る。大きい利益は出なくても安定してそこそこの利益を出しやすいんだ。まあ、インデックス投資の話は本質じゃない。肝心なのはその投資で平均して一年に4~7%の利益が出るんだ」

「株を買って1年でたった数%ですか?少ないように思います」
「なるほど、じゃあ1000万ゴールドを全て投資に回して年利5%の利益が出たら1年の利益はいくらになると思う?ラビイ、答えてくれ」
「1年で50万ゴールドなのです?」

「そうだ、ただ1000万ゴールドを投資しているだけで50万円の利益が返って来る。何もせず1年で50万ゴールドを貰えれば大きな収入になる。そしてその50万も30年使わず投資に回し続けたら何万になると思う?フィル、答えてみてくれ」

「えっと、1000万円と、50万円が30年分で1500万なので、2500万円ですか?」
「不正解だ。1年で1050万になり、次の年は1050万の5%が増えていく」
「あ、増えた分に毎年5%増えるんですね」
「そうだ、資産は加速的に増えていく。正解は30年で4321万以上になる」

「たくさん増えたのです」
 ラビイが元気になってはしゃぐ。
 だがリースは眠り始めた。
 退屈なのだろう。

「俺のアイテム投資は今セット数の上限が100個までで1日に1%増えるだけだ。インデックス投資のように雪だるま式に増える事もない。だがスキルは使えば強化される。それにさっき説明した通り1年で5%の上昇でも30年で大きく伸びる。1日で1%の上昇は大きい」

 ラビイがつぶやく。
「ジュンのスキルは強化されるです。そして1日1%の上昇!!!待てばたくさんの魔石が手に入るのです!すぐに魔石を合成するのです!ジュンに経験値投資を使ってもらうのです」

「魔石はもう持って行ったわよ」
「わ、私が合成するのです!私が1番魔石を大きく出来るのです!」
 
 パアン!
ラビイは慌てて扉を開けて出て行った。

「ジュン様、気になった事があります」
「ウサット、何だ?」
「ジュン様の言い方ですが、向こうの世界は汗水たらし働いた者より、多くの株を持っている者の方がお金持ちになれるように感じました」

「そうだぞ。それが向こうの世界のルールだ」
「株を持っている者が豊かな生活を出来るのですね」

「ん~。よく言われているのが、金持ちは株と不動産だな」
 他には起業してその会社を売る方法もあるが、それは株を売る事に近い。
 
 俺は起業家にも不動産投資家にもなれなかった。
 どうしたらいいか分からなかったし失敗した時のリスクが怖かったのだ。
 結局実践できたのは誰でもできる株式のインデックス投資を長期運用する手法だった。
 
「名言、頂きました」
「いや、向こうでは普通だ」

 ん?普通なのか?
 元の世界でも投資している者は馬鹿にされる。
 成功すればしたで汚い事をしてお金を稼いだと思われる。

 有名な起業家が言っていた。
 お金持ちになれないものは『金持ちはずるい』しか言わず行動しないと。
 ずるいという者に節約して投資をする方法を教えても何も行動は変わらなかったらしい。
 そしてずるいずるいと金持ちを批判し続け、お金持ちの足を引っ張りずっと貧乏なままで居る。

 俺は苦笑した。
 俺はたまに変わっていると言われる。
 他の者と認識の差は出てくるだろう。
 だが、長い視点で未来を前提に考え続ける。
 その点だけは変えずに説得を続けよう。
 そう思った。
 
 突然俺の目の前の空間が歪む。
「女神か」











しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...